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雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第2章 雷華の騎士と地獄迷宮
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6話 フレデリクの地獄迷宮探査⑩ 九~十二階層

 迷宮内にあるトレントが住まう森を抜けると平原が広がり、中央に堂々と佇む一際高い巨大な樹、それが樹巨人(グリーンジャイアント)だった。

「ヴォオオオオオオオッ」

 こちらを見るなり咆哮を上げる。同時に衝撃波のような波動が飛んできて、全員は即座に走って戦闘に入る。

 人型をした巨大なトレントは両足で迷宮の下の階層へ向かう入口を塞ぎ、近くいいたアルバンへ拳を落とす。

 だが、アルバンは走って攻撃を避ける。樹巨人(グリーンジャイアント)の攻撃と同時にエルッキがジャンプして樹巨人(グリーンジャイアント)の腕を切りつける。そしてエリアスが樹巨人(グリーンジャイアント)の懐に潜り込んで階段を塞ぐ足を切りつける。


「トレントと違って攻撃が通っている感が全くない」

「魔力で剣を強化し、叩けば剣術LV5に達していなくても攻撃は通る。樹の幅が十倍以上あるから、と追って無いように感じるだけだ。1回でダメなら十回、十回でダメなら百回、それでダメなら撤退だ!」

 フレデリクの言葉に全員が苦笑する。


 全員が走りながら樹巨人と戦う。

 エリアスやアルバン、エルッキの攻撃が樹巨人の足を着実に削っていく。

 フレデリクはマインラートとマルコの護衛を務めながら走る。経験ある冒険者なら避けられても彼らでは避けられない可能性があったからだ。

 <咆哮(ハウリングロア)>を剣で切り飛ばせるような戦士は早々いないが、経験ある冒険者ならまず当たらないので、疲れて足が止まりがちなマインラートにフレデリクが護衛につくのは自然な成り行きだった。冒険者としての脚力で言えばマインラートは規格外の魔法を持っていても下から二番目の黒曜級未満な虚弱児だったからだ。

 だが、戦いの中で最初にへばって来たのはエリアスだった。

 最前線でプレッシャーにさらされながらの攻撃役だったので、20分以上も走って攻撃して逃げるを繰り返している為、足が鈍り<咆哮(ハウリングロア)>を避けきれず大きく吹っ飛んで地面を転がる羽目になる。

「マルコ!救助!エル、注意を引き付けろ!」

「分かってるよ!」

 フレデリクが指示を出す前にエルッキはあえて足を止めてラッシュをかける。

「いや、俺が魔法で抑える!間に炎を上げて攻撃させなければ良いんだろ!?<火柱(ヘルファイア)>!」

 倒れたエリアスと樹巨人の間に巨大な炎の柱が立ち上がり樹巨人は追い打ちを出来ずにいた。その間にマルコが走り寄り、エリアスを引きずって敵との距離を取りつつ<治癒(ヒール)>を掛ける。

「このまま火柱で樹巨人を焼く!一時退避!」

 マインラートはそのまま火の柱を樹巨人へぶつけに行く。これはボーンドラゴン戦で見せたフレデリクの魔法の応用だった。


『ブォオオオオオオオオオオオオッ』

 全身を炎で纏わされ悲鳴を上げる樹巨人。更に追い打ちをかけるエルッキとアルバンで、苦悶して頭の下がった樹巨人の首辺りに戦線に復帰したエリアスが切りに行く。体を覆う樹の表皮が壊れ、核が一瞬だけ見える。

 核がゆっくりとだが胸元の方へ逃げるが目でその動きを目視で確認できた。

「核がそっちに行った!俺がどうにか足を叩いて止める!」

 エルッキがさらにラッシュをかけ足の表皮が砕けていき、樹巨人はダメージを負って上体が倒れ手が地面についてしまう。

「ハアアアアアアアアアアアアッ!」

 アルバンの攻撃が樹巨人の胸元にダメージを与えて表皮の外殻大きくはがれ、核が露出する。

「貰った!<炸裂(バースト)>!」

 マインラートは火魔法LV4の<炸裂(バースト)>を放ち、樹巨人の胸元に炎を炸裂させて一気に火が回る。

『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ』

 ついに断末魔の悲鳴を上げて灰となって樹巨人が朽ちて行く。


 30分以上もの長い戦いの末ついに樹巨人を討伐する一同だった。

 全員で大喜びする姿をフレデリクは眺めて、ほっとしたように溜息を吐く。




***




 樹巨人を倒したフレデリクパーティは開いた階段を先に進む。

「やばくね?俺ら、1年にして10階層到着だぜ」

「確かに凄い事だね」

「まあ、カスパル先輩は2年生の時にサポーターで10階層に来てるけども」


 10階層の回廊を歩いて先に進むとそこは岩壁となっている階層、大空洞とも言わんばかりの迷宮だった。

 この階層は見渡しがよく仕切りの代わりに崖で遮られて迷路になっている。

 その為、目的地に行こうとすればどの道順を歩けばいいかは分かる。魔物がいる場所も分かる。だが11階層は逆に行き先が分からない一般的な洞窟の迷宮だった。穴の迷路を進み12階層への道を探す。

 そして12階層はある意味10階層の真逆で10階層の溝がそのまま12階層の通路になっている。

 10階層時点で12階層の道も分かってしまうのだ。

 問題は10階層のどの穴から11階層に向かい、11階層の迷宮を踏破して12階層に向かわなければならない。


「岩肌の感じは1~2階層と同じ感じだね」

「恐らくこの迷宮の基本はこの形で、上の階層がイレギュラーと言う感じがしなくもない。一応、10階層より下はこの系統の迷宮みたいだし」

 フレデリクは10階層から15階層の地図が全部似たような岩壁の迷宮であることを挙げる。13階層はマグマもあるらしいが、同じような岩壁で出来ているらしい。

「崖が深いなぁ。落ちたら上がれないだろ?」

「風魔法で上がれないか?」

「今までと違って、通路がちょっと細いからね。風魔法の後遺症で何が起こるか分からんからあまり使いたくはないな。土魔法で階段を作るって方法もありだと思うけど」

「その手があったか」

 マインラートはフレデリクの発想に感心する。

「ただ、この人数だと保てるかなぁ。迷宮って魔神の眷属の影響が大きくてさ。土魔法は効果的ではあるけど、地面そのものを切り離すならともかく、地面を変形させると元に戻そうとする力が大きいんだよな。ほら、アルバンやマインラートは覚えてると思うけど、モンスターパレードの時、僕は土魔法で中央に敵を寄せたでしょ?反発力が大きく予想以上に魔力消耗が大きかったんだ。出来れば歩いて元の場所に戻りたいなぁ」

「歩いて戻る魔力消耗と、そこで使う魔力消耗のどっちが大きいかの差だよなぁ」

 フレデリクはこの壁の幅と高さなら、三角跳びを続ければ12階層から10階層まで登れなくもなさそうだと高さを確認しながら考える。

 だが、一般的な人間がそれを実行して登ってこれそうな雰囲気はなかった。


「向こう側の崖の奥にある通路に魔石っぽいのが見えるんだけど」

 マルコが指を差して奥の方に見える岩壁を指差す。

「あれなぁ。11階層を経由しないと行けないっぽいんだよ」

「は?」

「12階層ってこの10階層の溝がそのまま迷宮になっているんだ。11階層は迷路になっていて、10階層の違う道に出たり、12階層に降りたりと複雑な構造らしいの。すぐそこに見える魔石を取るのに1日がかりの迷路を突破しないといけないらしい」

「マジかよ」

 マインラートは呆気にとられた顔をする。

「学校に残ってる10階層から15階層までの迷宮地図は父さん達のパーティが全部作ったと聞いている。これ、10階層と12階層はここから見れば分かるけど、どこから11階層のどこに向かうかまできっちり書かれている辺り、スゲー頑張って11階層の迷宮を移動したっぽいんだよ。11階層の魔物分布とか魔物の弱点とかさ。ここのマップが出来ている。15階層に行くには十分なほどの履歴なんだけど、誰もそこまで行ってないのが不本意すぎる」

 加えてフレデリクはすぐ目の前に見える崖の奥にある魔石を手に入れる方法を説明する。

 地図を広げて10階層から11階層に向かう穴まで数時間歩き、さらに11階層で魔物部屋を経由して10階層の異なる穴に戻り、半日かけて辿り着く場所だった。

「マジかよ」

「マジかよって言いたいけど、これを書いた人がいるからね。書いた人たち、っていうか父さん達は何日もこの迷宮で迷いながら先の道を探したんだと思うよ」

地図役(マッパー)って陛下だったんだよね?」

「かなり真面目な人なんだろうね。細かくいろんな場所に目が行くような。何でこんな細かい性格の人が、帝国で大雑把な政治をしているのか突っ込み所満載なんですけど」

 フレデリクから爆弾発言が落とされる。

「おおい」

「不敬罪!」

 クラスメイト達が慌てて止めに入る。


「でも、なるほどなぁ。すぐ近くに見えても歩いて向かおうとすると1日掛かるってきついな」

 エルッキは推しそうに魔石を眺める。

「そこの崖を超えれば簡単に手に入るのに!?」

「惜しすぎる」

 アルバンは勿体なさそうにぼやき、マルコはうんうんと頷く。

 崖の奥にある通路の先に質の良さそうな巨大な魔石が岩壁から大きく露出しているのが見えるのだ。


「ふっ!ならば今度こそ、俺の出番のようだな!」

 マインラートが胸を張って口にする。何だ何だと他の面々はマインラートの方を見る。

「8階層まで暇だった事が嘘だったかのように活躍の場を求めてるな」

 呆れるように突っ込んでくるのはエルッキだった。

「見ろ!<土制御(アースコントロール)>!」

 マインラートは魔法によって20メートルほどある崖と崖の間に吊り橋を作り出すのだった。

「なるほど。剣でやれることは剣で、魔法でしかできない事は魔法でという事だな」

「じゃあ、せっかくだし行ってみるか」

 フレデリクは魔力を意味なく使わせるのも勿体ないと判断してマインラートの作った橋の方へと足早に歩き出す。

「なるほど、こうやってショートカットできるのは魔法使いならではって事かぁ」

「学校でも土魔法LV4を使える人は何人かいるのは知ってるけど、火魔法が得意なのにここまで使いこなすのは学園でも屈指なんじゃないか?」

「ふははは、敬え敬え」

 満足そうに胸を張り威張るマインラートだった。

 全員で橋の上を歩く。少し不安定な感じではあるが問題なく進めそうだった。

「マインラート、魔力は大丈夫?」

 フレデリクは心配した様子で訊ねるが、マインラートはフッと鼻で笑う。

「確かにちょっと抵抗を感じたけど問題ねーよ」

「そうなら良いけど。ほら、迷宮につながっているから、魔力で強度を固めても、魔力を吸って強度があっという間に落ちてくだろ?」

「は?」

 フレデリクの問いにマインラートは首を傾げる。マインラートの反応にフレデリクは足元が少し弱いと感じて足を止める。

「強度を保つために魔力って……?」

「え~と、作ったらそのままだけど」

 マルコが首を傾げ、マインラートからは『何言ってんだ?』と言わんばかりの返しが戻ってくる。

「全員走れ!強度を保つために魔力を流し続けないと壊れるだろうが!」

 フレデリクは慌てて走り出そうとするが、それより早く橋が一気に崩壊が始まる。

「うわっ」

 足を踏み込むや岩でできた足元が砂のように崩れて行く。

「ちょ、マインラートの馬鹿ああああああああああああああっ!」

「そんなん知らねーよ!」

「魔力を流した感じで察してくれ!」

「ちょ、まじかあああああああっ!?」

 全員が崖下へと悲鳴を上げて落ちて行く羽目になるのだった。




***




「まいったなぁ」

 12階層に落ちたフレデリク達はどうにか誰もケガをせずに立っていた。

 フレデリクは神聖魔法<聖光防御壁(セイクリッドシールド)>で全員にクッションを作ってどうにかダメージを抑え込んだ結果だった。かなり深いので、身体能力で言えばフレデリク以外全滅でおかしくない状況だった。


「死ぬかと思った」

「活躍した矢先に失態とは上げて落とすなぁ」

 エリアスとアルバンがぐったりした様子でぼやく。

「そういうの、早く言えよ!」

「いや、魔法を使った感じで気づかなかった?」

「そんな敏感じゃねーから」

 マインラートの言い分に誰もが溜息を吐くのだった。


「この通路、一方通行で、見た感じこっちは下り階段で、こっちは巨大な玄室って感じだけど、どっちに行けば良い?」

 エリアスは不安そうに尋ねる。


「お前ら、10階層まで行く予定だったんだっけ?とは言っても、俺も地図が頭に入っているのは9階層までなんだよな」

 エルッキは5年生のグループの助っ人としてあちこちを渡り歩いている為、最大10階層を目標にしている周りに合わせて9階層までの攻略法やマップ自体は頭に入れていた。


「僕らのもらった地図も10階層より先は無かったよね?」

 アルバンはそう聞くが、そもそもアルバンは2~3階層からして記憶が怪しいので、当てにはならない。だが、エリアスが苦笑する辺り、エリアスも同意見なのだろう。


「そりゃ、10階層に行って、10階層にしか出てこない魔物を討伐して素材を持ち帰るだけのつもりだったからね。僕はちゃんと15階層までの地図も攻略法も頭に入ってるし、地図は持って来てもいるけど」

 フレデリクの言葉に全員がホッと安堵の溜息を吐く。


「帰りたい所なんだけど、問題は場所が悪いんだ。ここがどこか分かる?」

「12階層、だよな?」

「そう。12階層だ。上から落ちるのは10階層から12階層への最速ショートカットでもあり、僕も地図とここを照合して12階層のボス部屋の先の通路だとは知っていた」

「そうなんだ」

「ただ、確証は無いから次回に一人で行って調べようかなって思ってたんだけど」

「え、そうなの?」

 エリアスはギョッとした顔でフレデリクを見上げる。

「ほら、僕って剣も魔法も使えて神聖魔法も使えるから、恐らく単独行動向きなんだよ。一人で行けるかを確認しながら皆のフォローをする形で仕事してたのもそれ。地図役(マッパー)を買って出たのも元々、より攻略の簡略化を考える為でね」

 フレデリクはこれまでの経緯を説明する。


「どうりで周りに任せすぎてると思ったが。クリディカルな部分の守りに専念してると思っていたぜ」

 エルッキは呆れた様子でフレデリクを見る。

「さらに言えば、僕だけ落ちて風魔法の応用で迷宮の階層を調べる魔法を使い、戻るつもりだった」

「迷宮の階層を調べる魔法?そんなのがあるのか?」

「うーん、説明が難しいけど、風魔法に自分の魔力を乗せて拡散させるんだよ。薄く自分が感じ取れるギリギリの少ない魔力でね?迷宮の全容は分からないけど、魔力感知で深さや階層の数は分かるようになる。僕もこの魔法の説明を領主様に教わった時は魔力操作が下手だったから出来なかったけど、今の魔力操作技術があれば、可能だからね。魔力感知自体は僕は元々高いし」

「そんな遠くまで魔力を飛ばせんのか?」

「元々、砂漠迷宮の謎を解いたのが僕の風魔法なんだ」

「あ」

 雷華の騎士の魔法で砂漠迷宮の真相が暴かれたと言う話はそれだったのだと理解する一同だった。

「まあ、僕の偉業は大体誰かに教わったもので、編み出したモノなんて何一つないんだけどね」

「なるほど」

「ただなぁ。どうしようかな?皆で降りちゃったから余裕がなくなったんだよね。魔力の余裕はあるんだけど、守れるかなぁ。守りに入る前に全滅させれば良いんだけど」


 フレデリクは溜息を吐きながら13階層に続く階段とは逆方向を見る。

「12階層のボスって何が出るんだ?」

「陛下の手記にはラスボス前の領域って書いてあったけど、地図を見て予測してたけど、こうして簡単に行ける以上、ラスボス前とは全く思えないだよね。ただ、その位やばいね」

 マインラートはゲームで行った時はそこで全滅しているのを思い出す。確か………

「何が出るって書いてあるの?」

「アークデーモン入る人数だけだって」

 ブッと全員が噴き出す。

 マインラートはアークデーモンなのはゲームで知っていた。前世知識である。だが、ぶっちゃけ全然勝てない魔物だった。無論、マインラートがゲームの際に使ったのはヴォルフ単独で迷宮に乗り込み体力が果てるまで戦って勝てなかったと言うものだ。無双ゲームみたいな遊びで挑んだのだが、アークデーモンはちょっとやばい位に勝てなかった。


「他の迷宮でよく迷宮(ダンジョン)(マスター)として君臨する紅玉級冒険者にとっては必ず一度は倒しているとも言われる魔物か」

 エリアスは引き攣り気味に口にする。マルコは顔を真っ青にしていた。

「フレデリク、倒した事があるだろ?お前が先に入って、一体ずつ倒していけば…」

 エルッキは提案をするがフレデリクは首を横に振る。

「それもありだけどあまり変わらないよ。何せ陛下達のパーティは最初に人数分出たから、帰りは父さんを戦闘にして一人ずつ入ろうとしたらしいんだ。ほら、2階層で順番待ちさせてた連中居たでしょ。エルの言いたいのはそれだよね?」

 フレデリクの言葉に、2階層で足止めを行なっていた連中がやっていたことを全員が理解する。

「そう。強い奴が倒して、他の連中は入ったら守りに専念でどうだ?」

「この12階層の玄室は出入口が閉まるらしい。でその時にいた人員の数だけアークデーモンが出る。僕が入り続ければ常に僕の分だけアークデーモンが出る。戦闘回数が少ない方が魔力消費が抑えられるんだ。ちなみに14階層に出る階層主も同じ仕組みらしく、15階層がラスボスだと思って乗り込んだのに圧倒的な広大な迷宮で心が折れて引き返したらしいよ。14階層と12階層で泣きが入ってるような愚痴に近い文句が延々書かれていたから」

「マジか……」

「邪眼王、皇帝の心を圧し折ったか」

 フレデリクの言葉にエルッキとマインラートが空を見上げてぼやき

「言葉に気を付けようね」

 エリアスが不敬だと言わんばかりにマインラートへ突っ込む。

「じゃあ、13階層に向けて風魔法を使って、アークデーモンを皆で倒して帰ろうか」

「フレデリク一人ならどうした?三角跳びを続けてそのまま上に上がるけど。というかマインラートに橋を作らせるまでもなくジャンプで跳び越えられるし」

「化物が一名いらっしゃった」

 アルバンが呆れたようにぼやくのだった。

「アルバン。僕らの様な身軽な戦士はその位出来ないとダメなんだよ。この迷宮を攻略する人は、全員がその位出来るメンバーが必要だと思うな。少なくとも僕と組んだ火竜王討伐パーティーなら、多分、アークデーモン出ても苦にしないけど、それ以前に戦わないで往復できるから」


「そう言えばヴァンさんが言ってたなぁ。魔導師だけだと9階層で多少魔力を使って先に行っても、10階層から12階層は休めないから、10階層から12階層辺りで仕事はしてもその先に入った事無いって」

 マルコが思い出すように口にする。

「じゃあ、折角12階層に来たんだし、12階層と13階層の間の通路で休もうか。風魔法で迷宮調査して、休んだら12階層のボスを倒してから帰ろう」

「いや、まあ、それは構わねーけど……このメンバーで6体のアークデーモン倒せるのかよ」

 エルッキは少し引きつり気味にフレデリクを見る。

「皆は戦えそう?」

「全員で1体なら………。戦った事無いからはっきりとは言えないけど」

「大丈夫大丈夫。アークデーモンもピンキリだから。ここに出る奴は多分生まれたてだろ?そこそこ強いだけだから大したことないよ」

「そこそこ強いのか大したことないのかどっちなんだよ」

 エルッキは呆れたようにぼやくのだった。

 ピヨッ!

 あとがき担当のヒヨコだぞ!ピヨちゃんと呼んでくれ。

 老いる事も死ぬ事もヒヨコと言う儚い生物の美しさだ。老いるからこそ死ぬからこそたまらなくピヨピヨ可愛いのだ!

 ヒヨコ界の炎柱ことヒヨコの事だ!まあ、ヒヨコは不死鳥の子なので儚くも無ければ死ぬ事も無いのだが………。

 これこれ、そこな人よ。ヒヨコ太々しくて可愛くないとか言うでない。見た目で判断してくれよ。


 今回の話をしよう。

 実はアークデーモン君はヒヨコ伝説に未出場だ。

 アークデーモンの親玉がな?ヒヨコ伝説開幕の時、既に勇者に殺されている所から始まっているのだ。

 魔神の眷属7柱で最後の一柱、魔神に体を受け渡して人類を抑え込もうと出て来て、勇者に討たれてしまった彼、悪魔王ベルファゴス君だ。

 彼は頑張った。

 幼竜を人質に取り竜王を寝返らせ、勇者の国の敵対国家獣王国を寝返らせ、挙句の果ては鬼人領を制圧して鬼人王を手先に使い、不死王と同盟を組み、勇者を倒しに出たのだ。彼は悪魔たちの総領でもある。

 まさに進撃の悪魔王。

 だがヒヨコ伝説が始まる時、彼は討ち取られた後だった。彼が討ち取られ悪魔たちはこの世界にいられなくなってしまい撤退する事となった。

 多分だが、ヘレントル迷宮を攻略した銀の剣の皆々様はきっと何度も戦っただろう。だが、ヒヨコ本編では全く出てきてないのだ。設定はあるのだぞ?設定はな?

 よかったな、アークデーモン君。次回は設定で終わる羽目になっていたアークデーモン君が初公開だ。

 フレデリク無双を刮目してピヨ!………って、折角のアークデーモン君の見せ場を取るのか、主人公!?


 では次回、「『ヒヨコごときが魔王に勝てると思うな』とガチ勢に勇者パーティを追い出されたので、帝都でピヨピヨ暮らしたい」でお送りするぞ。




 ……嘘だ!(ひぐらし風)


 ヒヨコはそんな羨ましい待遇を受けた事は無いぞ!?

 帝都に買ったヒヨコハウスで暮らしたかったのに、女神の阿呆がヒヨコに戦うよう皇帝の前で神託しやがって、ヒヨコは貨物に乗せられて悪神との戦いに駆り出されたのだ。むしろ帝都から追い出されたのだ!

 ヒヨコはその辺が全くもって納得が…(※愚痴が続くので割愛いたします。)


※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。

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