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雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第2章 雷華の騎士と地獄迷宮
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5話 迷宮探査準備②

 フレデリクは6年A組の教室にやって来ていた。

 エリアスが世話になってる先輩がいるかららしく、その先輩に会いに来たのだった。

 エリアスが説明をするとその先輩は難しそうに腕を組んで頷く。

「なるほど、迷宮探査か」

「はい。先輩は確か2年生の時にサポーターとして学校のトップパーティと一緒に十階層まで行ったと聞いてましたので」

 エリアスの紹介で会った先輩、最上級生で学年次席の肩書を持ち、実力試験で総合4位になっていたカスパル・フォン・リンデンだった。

 リンデン姓の名を騙る前に必要な説明となるのがリヒトホーフェンという帝国序列第7位の北方伯爵家を説明する必要がある。リヒトホーフェンは帝国に吸収される前、共和制の国で、5人の議員によって政治が為される。4年に1度総会議があり、一定の功績をあげた貴族の中から議員が選ばれ議員の代表を議長と呼ぶシステムを持っていた。

 リンデンとはリヒトホーフェン北方伯領に所属する貴族の名で、現リヒトホーフェン北方伯がリンデンなのである。

「確かに行ったけど、本当について行っただけだよ。一応情報は持っているけど、ヴォルフ先輩のパーティが残した資料と変わった内容じゃないよ」

「そうですか」

「欲しいなら資料を持ってるからあげるよ。僕はもう迷宮に潜る予定は無いからね」

 そう言って、カスパルは後ろのロッカーへと歩いていく。

「迷宮の深い場所はどうでした?」

「どうかな。そもそも地獄迷宮にとって十階層が深い場所だったのかさえ分からなかった。トビアス先輩もロイエンタール先輩も、過去に15層まで行ったヴォルフ先輩も、迷宮探査は物量に押し切られて、敵の本性を見極める場所に到達さえできなかった印象があると記していた。もしかしたら30層くらいあるのかもしれない」

 あの大きさでその深さだと、砂漠迷宮や西部迷宮の10倍以上のリソースがあると考えられる。果たしてあり得るのか?

 フレデリクは地獄迷宮の存在そのものが他と違うように感じる。

 他の迷宮は人類への攻撃拠点にしていたが、ここはそうじゃないのかもしれない。



「まあ、僕も……ここの迷宮の話を聞いた時に、まるで攻略できるものじゃないみたいな話し口だったから、厄介そうだという印象はあったね。だから、今回はちょっと様子見しようと思っているんですけど」

 フレデリクは頷く。

「ええと、彼女?は?」

「実力試験で2位に入っていたフレデリクです。今回迷宮探査をしたいと言い出し、僕も乗っからせてもらおうかなと思ったので」

 エリアスはフレデリクを紹介しながら説明をする。

「帝都の英雄の息子で、紅玉級冒険者。えー………男…なんだ」

「何で皆、そこに引っ掛かるんだろ」

「鏡を見ろ、鏡を」

 マインラートが呆れるように突っ込む。

 アルバンはフレデリクの肩を叩く。

「もう、あきらめよう」


「そんな深刻そうな顔で言わないで!?不治の病ですみたいな診断を受けた気分だよ!お腹に悪性のポリープが見つかりました、みたいに言われたくないよ!」

「顔に女顔の不治の病が見つかったみたいだね」

「遺伝的な病だね」

「ただの遺伝を病にしないで。あと同類(マルコ)に言われたくない」

 クラスメイトに弄られる涙目のフレデリクだった。


 すると、クラウディアがこっちの方に歩いて来る。

「あら、フレデリク君はカスパル君に聞いてるんですか?私の所に来てくれてよかったのに」

 と声をかけて来る。

「クラウディアさん、先に声掛けしてたの?」

「何せ15階層に行く準備をしてたので、そのおすそ分けくらい後輩にしますよ?」

 クラウディアはパチリとウインクをして貴族令嬢らしからぬそぶりを見せる。

「いや、誘いに断っておいてこっちの望みだけ貰おうというのは何かなぁってのもあるし、エリアスが知り合いの先輩に情報を貰えるって聞いたから」

「気にしなくてもいいのに。そもそも私の持っている情報はマルヤーナ先輩やトビアス先輩から貰った情報です。その大元はフレデリク君の親御さんからなんですから」

「そうなんですか?」

「陛下は自分達のチームのメリットを公開する事を拒んでいましたが、ザシャ様の言葉で『ヘレントル攻略は帝国の命題であり、全ての情報は全ての冒険者で共有すべし』と言って、陛下の卒業と同時に情報をここの図書館に寄贈したそうです」

「母さんらしいというか……」

「ですから遠慮する必要はないんです。ご両親が生きていればフレデリク君に口頭で全て教えた事でしょう」

 クラウディアの言葉に頷くカスパルだった。


「何か、冒険者になっても、何もかもが亡くなった父さん母さん領主様やトビアス様の遺産でやりくりしていてね、紅玉級冒険者になろうが、何をしようが全て遺産で成り立っていて、自力で何かした事なんて何一つないからさ。ちょっと思う所はある」

 フレデリクは頭を掻きながらぼやき、クラウディアやカスパルは苦笑する。

「貴族なんて皆そんなもんだよ。帝国貴族の多くは、それを自覚しないで権力を振り回すからこそ、腐っていく。そう思う内は大丈夫だと思うよ」

 カスパルの言葉にフレデリクは苦笑してしまうのだった。


 貴族でありながら、政治的に勝たねば北方伯になれないリンデン家の人間としては当然だった。

 カスパル・フォン・リンデン。現リヒトホーフェン家の当主の息子であり、リヒトホーフェン北方伯は血で跡を継がないという。元々、貴族議会で優秀な人間を投票によって議長の地位に立つ共和制国家で、帝国の北方伯という肩書は議会長がそうなるように出来ている。

 カスパルの祖父は今だけリヒトホーフェン姓を名乗っているが、カスパル自身は現リヒトホーフェンの孫でしかなく、リンデン姓を名乗っていた。

 6年でクラウディアと二分するほど優秀な男子のリーダー。カスパルが実力主義の領地で生きて来た男なのだと感じさせる。


「サーシャは同行しないんですか?」

 クラウディアは良く知る後輩の名を上げる。

「安全に行くつもりでも迷宮はいつ自分の身が守れなくなるか分からない場所です。魔獣から皆を守ろうとする婚約者なんて連れて行けるはずがないでしょ」

 フレデリクの言葉にカスパルとクラウディアは顔を見合わせて大笑いするのだった。


「何で笑うんですか?」

 フレデリクは不満そうにぼやく。

「違う違う。いやはや、思い出してしまったんだ。僕が2年の時にトビアス先輩に『僕をサポーターに使う位なら、マルヤーナ先輩を連れて行った方が良いんじゃないか』と。愚痴られているらしいと聞いていたので。そしたら、君と全く同じことを言われたんだ」

「3年前、卒業するとき、僕の可愛い弟みたいな子がこの学校に来て、きっと騒動を巻き起こすからフォローしてあげてねって言われてたんですよ。フレデリク君だったんですね」

「おおう、いや、そんな騒動を巻き起こすようなことはしてないですよ」

「殿下達を口先で叩きのめした子が言いますか?」

 クラウディアが苦笑気味に突込み、フレデリクは言葉を継げなくなる。

 ちょっとあの男達を黙らせただけで、そんなに噂が広がるとはフレデリクも思ってもいなかった。


「僕は子供の頃から同年代で何をやらせても負けなかったんですよ。上を見て初めて総合的に全部任されたのはトビアス様だけです。あと魔法でアレクサンドラ様に勝てなかった位かな?その僕が、近しい年代で僅差の二位という状況は割とうれしかったんです。競え合える環境は僕にとって無かったものですから」

「まあ、トビアス先輩が飛び切り優秀と触れこんでいただけあったのは確かだね。まさか4年生に実力試験で負けると思わなかったし」

「全くです。4年に上がってからライバル不在だった我らが2つ下の4年生コンビに抜かれるとは」

「上位20位以内って試験の中でどの採点でミスがあったか、偶々分からないのと出会ってしまったか、位のちょっとした差しかないと思いますけど」

 エリアスの言葉にフレデリクも順位表を思い出す。確かに6年生の3人が2位フレデリクと6位アレクサンドラの間にいた。だが、その間は実に僅差だった。運や偶然で簡単にひっくり返るレベルだ。


「問題範囲が義務教育までだったし、引っかけ問題とかちょろちょろあったから、上位20位なんてあってない差でしょ」

「そうだねぇ」

 エリアスも苦笑して頷く。

 あの試験はそう言う程度の低い試験だった。義務教育範囲でしっかりやっていれば難しくない。80点取れてれば十分、それ以上に細かく頭に詰めている必要なんてない。調べればどこにでもある情報だ。実際、優秀な4年生が多く入っていたが、6年A組の平均点は600点以上と言う。ほとんどの優等生は85点以上取れているのだ。


「そう考えられるから強いのでしょうね。逆に、冒険者としての実技判定を際限なく高くされていれば、紅玉級冒険者が100点で他が誰も付いて行けず50点以下になる可能性もあるんですから」

「この学校の方針は英雄を作るのではなく、信頼おける優秀な冒険者、つまり翡翠や黄玉級冒険者の育成がベースなので、なり方の存在しない紅玉や金剛級なんて枠外でしょう。学校のカリキュラムを見ましたけど、紅玉級を作るカリキュラムには見えませんでしたし」

「作り方があるんですか?」

「あるんなら学園中が英雄だらけでしょ。とっくにヘレントルは攻略されてますよ」

「違いないね」

 フレデリクの言葉にカスパルは大笑いする。

「フレデリク君達、今日の放課後に私のチームルームにきませんか?」

「チームルームですか?」

「本格的にパーティを組んで攻略するための作戦会議が出来る部屋を学校から貸し与えられてます。私とカスパル君、それにレオナの3人は、一応学園の三大パーティとして有名ですから」

 レオナという名を聞いてフレデリクは5位にいた3年生だと思い出す。上位3人がそれぞれパーティのリーダーをしてそれなりの冒険をしているというのは聞いていた。

「ジルフィとサーシャ、サラの3人はウチの派閥ですしね」

 クラウディアは苦笑気味に説明をする。

「派閥?」

「冒険者風に言うならクランですか?元々は学園が出来たばかりの黄金期にクランを作ったのが陛下で、それに対抗するように多くの貴族の子弟がクランを作りました。金剛級冒険者アルノルト様はエーベルヴァイン先生や私の父を誘い10階層に行ったそうです。陛下達のクランに唯一張り合っていたとか」

 その頃からの付き合いなのかとフレデリクは理解する。父とアルノルトは若い頃のライバルであり、長々と親交が続く悪友、そんな印象だったが予想通りだったらしい。

「それで私の方もお願いがあるんですけど」

「お願い?」

「ええ。フレデリク君も私に申し訳ないと思っているようですし、情報を開示しますから一人連れて来てくれませんか?」

「一人?」

「ヴェルメイレン・ズワールトさん。戦力として欲しいですね」

「なるほど」

 フレデリクは納得し、アルバンは苦笑する。

「彼女、小柄だし運動能力は高いけどどうなの?」

 エリアスが訊ねるとフレデリクは頷く。

「編入生組は知ってると思うけど、かなり強いよ。アルバンと一緒にモンスターパレードに突っ込んで戦う事ができてた。魔物の群れの中を平然と走り回って殺しまくってたね。僕の父さんの居たアマゾネスの部族出身で彼女の言葉が正しいなら、従妹になる。父さんは女たちに迫られて里から逃げたといていた辺り、父さんの言葉と合致してる。嘘じゃないと思う」

「力量的にはどうでしょう?」

「強いです。傭兵上がりの僕より場慣れしていると思います」

 アルバンが即座に答える。

「魔物対峙専門だろうね。リヒトホーフェン同様、メルシュタインも海底迷宮からのスタンピード『陸上侵攻』被害がでる事で有名だ。あそこらの地は魔物が跋扈してるんだよ。メルシュタインの密林制覇は本にもなっていて屈強な女達が魔物達を蹴散らしたとあるからね。傭兵出身のアルバンは対人戦争の方が多いんじゃないの?」

「まあ、確かにそうだね」

「僕も対人専門だったけど、冒険者になってから魔物を多くするようになったから分かる。彼女やラウテンさんみたいに大きい剣を振り回すのは魔物退治専門の戦士だって事だよ。アマゾネスの部族は強き者、長になる者ほど前に出て戦うと聞く。彼女は多分最前線で魔物の群れと戦ってきた本物の戦士だ。学生のレベルじゃないのは当たり前かもね」

「なので、スカウトしたいので連れて来てくれませんか?無理なら構いません」

「誘ってみまず」

 フレデリクが頷くと

「というか、フレデリクこそ彼女を今回の遠征で誘うと思ってたよ」

 とアルバンが首を捻る。

「あとファビアンも」

 エリアスが比較的仲の良い留学生を誘わなかったことに疑問を口にする。

「ファビアンはギレネの大物貴族の御曹司だ。それで怪我とかされても困るしさ。まあ、後で誘わなかった事を攻められそうだけど、僕は今回は第一弾だと思ってる。見て確認して余裕があれば一緒に行くこともあるだろう。ヴェルに関しては、男ばかりのパーティに彼女を誘うと本人は気にしなくても僕らに悪評がつくし」

「冒険者パーティなら普通でも、貴族になる連中はな」

 ゲラゲラ笑うマインラートだった。

 女性複数の中で男がいたり、或いは兄弟姉妹や婚約者、或いは侍女なのかと関係が明確であれば良いが、そうでないと男女ともに悪評につながる。迷宮内では何があっても保証されないからだ。


「カスパル先輩ってあのリンデンなんですよね?」

「あのと言うか、現リヒトホーフェン北方伯の孫にあたるね」

「というと僕のハトコですか?」

「ん、………あ、あー。言われてみるとそうだね」

「あれ、そうなんですか?」

 カスパルは気付いたように頷き、クラウディアはカスパルを見る。

「何だろう。両親が亡くなってから、伯父やら従妹やら親戚に会う事になるとは」



 フレデリク達は彼女達と一言二言会話をしてから、戻る事になる。




***




 4年A組に戻ると、マルコが大きく溜息を吐く。

「うわー、緊張した」

「何でマルコが緊張するんだよ」

「クラウディア様は領主様の孫だよ。普通はお姫様相手にまともに話す事なんて無いんだから」

「そういうものか?取り巻き見たいのがいるんじゃないのか?」

「うちは武官系じゃないからね。アルバンの方が近しいと思ってたけど、初めましてだったんだね」

「???」

 マインラートが首を傾げ、フレデリクが説明しようとするも、エリアスも同時に口に出そうとしたらしく、互いに見合って苦笑する。

 フレデリクがエリアスにどうぞと手を差し伸ばすのでエリアスが頷き

「大貴族領は領地の中に一国の国があるような状態なんだ。マルコの場合、王はもちろんグロスクロイツ候だ。グロスクロイツ領の嫡男は長男のクルト様で次男のエッカート様は武官系を纏め、伯爵領を代官として詰めている方でもある。エッカート様の長女クラウディア様は有力武官の婚約をするだろうと言われていたからさ。アルバンは顔くらい知ってると思われてたんじゃないかな?」

「めんどくさ。貴族の派閥の話かよ。っていうか、なんだかんだでエリアスもフレデリクも貴族に興味なくても詳しいのな」

「違うよ。貴族になる気が無いから詳しいんだよ。貴族として生きる興味が無いのと、無関心は別物だ。知らずに睨まれるかもしれないし関わりたくなくても知らずに尾を踏むこともある。そういう失態をしない為に徹底的に知る必要があるんだよ」

 エリアスの言葉にフレデリクは頷く。

「ま、異世界の勇者様曰く『敵を知り己を知れば百戦あやうからず』とも言うからね」

「孫子か」

「ソンシ?」

「いや、何でもね」

 マインラートは溜息を吐く。それは異世界の勇者が考えた言葉じゃねーよと思ったが、自分が異世界転生したから知ってるのだとも言えず、溜息を吐き、心の中で製作者に文句を呟くのだった。

 ピヨッ

 とばねぇヒヨコはただのヒヨコだ!

 クレナイのヒヨコとはヒヨコの事だ!……ってまんまやないかい!お馴染みピヨちゃんだぞ!あとがき開始だ!

 出てきてしまった異世界の勇者問題。奴が広めた音楽、慣用句、名言、全てが勇者語録として残しており、孫子で有名な百戦あやうからず、的な名言は全て駿介発とされて残っているのだ。ショパンもベートーベンもモーツァルトもバッハも、J-POPやアニソン、ゲームのBGMさえもマルッと駿介作だ。本当にひどい男だ。奴は異世界にて地球の著作物を悉く利用しておる。

 何せ楽譜を考案してそれを書き残しているからな。奴は本作の主人公以上にチート野郎だ。

 なので、本作ではちらほらと近代音楽がひょいっと流れるかもしれんが気にしないで遅れ。それは駿介の汚れだ。


 次回『Hiyoko&Magic』、邪悪な影がピヨを呼ぶ!


※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。

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