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雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第2章 雷華の騎士と地獄迷宮
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3話 とある転生者の呟き

 俺は陰キャだった。

 アニメや漫画が好きで、ゲームなんかもやるどこにでもいる男だ。

 偏差値がちょっと高めの公立高校を出て、中堅私大の工学部を卒業して、自動車会社の部品を作るような中堅企業に入社して、設計開発部門に所属する事になった。

 設計者と言えば聞こえはいいが、やってみれば面白みのない仕事だ。アニメとか漫画とか小説とかでなら凄い事をしてそうだが、実際そんな事は全くしていない。

 会社の新技術を自動車メーカーに営業が売り込み、受注したら自動車メーカーのデザインデータを貰い、そのデザインデータに合うように自社技術が上手く取り付けられるように調整をする。

 ただそれだけだ。

 急に納期が変わった、急にイベントに向けてここまで仕上げて欲しい、デザインデータは出せないけど納期は変わらないからよろしく(何を!?)、そんな大企業の大きい流れに振り回されて無駄に忙しくさせられるだけの仕事だ。

 こんなノウハウと作業技術があれば誰でもできる仕事にガッカリする事もあり、他の仕事をしたいが、自分の能力では新しい事に手を広げる事も出来ず、ただ何の未来も見ることが出来ず淡々と仕事をこなす毎日になっていた。


 それに、俺の趣味、アニメやゲーム、ラノベなんかは結構金が掛かるから仕事を簡単にやめる事も出来ないし、忙しいから転職活動をするのも大変だった。

 一番、入り浸ったのがネットカフェだ。食事をとれるし昔の漫画やアニメも見ることが出来る。大金を払わずに見れるのがありがたい。お陰で飽きることが無かった。


 ゲームではまっているのは薔薇帝国戦記というRPGだ。

 薔薇帝国戦記は数十人もいる主人公を選んでハッピーエンドを目指すゲームだ。最初に選べるのは4人のうちの1人で、そこでフラグを立ててエンディングを迎えると新たに選べる主人公が増える。

 違う視点で異なるストーリーを見ることが出来、しかも選択肢によっては最初とは違う展開を見る事も出来る。帝国と王国の戦争で帝国側のキャラを主人公にして帝国側を勝たせたり、王国側のキャラを主人公にして王国側を勝たせたり、またその逆をしたりして新たに主人公を増やし新しい展開を見ることが出来るようになる寸法だ。

 時代軸はまちまちで帝暦190年代から250年代まで、選択肢によっては敵が味方になったり味方が敵になったりするマルチシナリオ、マルチエンディングというシステムを採用されている。

 ゲームの進め方やエンディングの違いによって新しく選べる主人公が変わって来るのだ。


『一番出すのが難しい平民(男)のストーリーがこのゲームの正史になってんだよ。まあ、ゲームを進めると、平民じゃねーじゃんって話になるんだけど(笑)。他のキャラの全イベントは架空の内容で、平民(男)のトゥルーエンド以外はあくまでもIFストーリーって訳。最短で100時間くらいかけないと辿り着かないだろうから、まだそこに辿り着いてる人っていないんじゃないかな』


 そんなゲーム雑誌のインタビューで語るのはゲームデザイナーであり実業家でもある沖田駿介氏だった。

 学生時代に株で稼いで億万長者になっていて、何を思ったかゲーム会社を購入してゲームデザイナーになったと言う人物だ。


『平民(男)のストーリーを教えて欲しいって?いや、それは教えちゃダメでしょ。まあ、ヒントとしては、何でこの年代を機にハッピーエンドを迎えた筈の主人公が急に出てこないのかが明らかになる訳だ。あのキャラが250年代に出てこなかったのはこういう事だったのか?ってな。ま、それはゲームをやって確かめて欲しいね』

 そんな事を語るゲームデザイナーであるが、彼は異世界の勇者の名前を自分の名前にしていたりする。お前異世界にいたのかよって突込みどころだった。

 このゲームの厭らしい所は一人の主人公をハッピーエンドまで持っていくと新たな主人公が選べるようになる事と、使った主人公がハッピーエンドと言いながら喉に魚の骨が詰まったような不納得感があり、あのキャラを主人公で進めたらあの場面がもっと上手く行くのでは?という打開策を目指せるような物語構成になっている点だ。

 やってもやっても飽きないし、次の主人公を確かめたくなるという思いが増えるからこそのゲームだった。


 社会人生活を送っていた俺は、会社を終えて家に帰っている途中の事だった。昨晩、やっと蛮族(男)をクリアして遂に主人公の選択欄に平民(男)を出すことが出来たのだ。このキャラを出すために140時間かけて頑張って来たのだ。


 俺はゲームをやる為に、足早に家へ帰る途中だった。

 信号待ちをしていて、信号が青になると交差点を歩きだす。スマホを見ながら、そんなインタビュー記事を確認しつつ歩いていると、突然トラックが交差点に突っ込んでくる。

 スマホを見ていたから全く気付いていなかった。居眠りしてるおっさんがトラックの運転席に見えた所で俺の意識は途切れるのだった。




***




 目を覚ました時、俺は思い切り驚いた。生まれたばかりの赤ん坊だったのだ。

 若い姉ちゃんの乳を吸っていたのだが、それが自分の母親だと知った時は驚きだった。

 よく分からなったが、もしかして俺は転生したのか?俺はトラックに轢かれて転生するとか言うテンプレな事をマジでやったのか?

 ちょっと理解しがたい状況だった。


 やがて、俺は徐々に成長していく。短い期間ながらこの世界の言葉を覚えて、どうにか情報を集めようとしたのだが何とこの世界は、俺がゲームをしていた『薔薇帝国戦記』の世界だと気付いた。

 何で気づいたかって?

 この世界なら誰でも知ってる昔話、異世界の勇者・沖田駿介が魔神を倒したっていうのが常識だったからだ。


 マジかよ。


 異世界転生先がゲームの世界かぁ。しかもゲームデザイナーが勇者だった世界ってギャグじゃねーんだから勘弁してくれ。

 そして、薔薇帝国戦記ならば、せめて俺にも主人公を選ばせてくれ!

 マインラート・バウアーって誰だよ!?主人公の一人でさえないモブじゃねえか!

 ゲーム風に言えば『農家(男)』じゃねーか。何の発展性もねえよ。

 俺は絶望した。マルチシナリオならば、俺でももしかして成り上がれるのでは?ゲームシステムはよく知ってるのでその可能性に気付いた。


 いや、もしかして噂のキャラ、ゲームの真の主人公『平民(男)』が俺だったって事か!?

 平民も農家も同じだ。ならば俺が主人公でも良い筈だ。俺は野望に燃えるのだった。




***




 それはそれとしてローゼンブルク帝国の地方都市アムスベルク伯爵領の農家に生まれた訳だ。ゲーム知識や現代知識を使ってチートで成り上がろうと画策するのだった。


 しかし、………世の中そんなに甘くはなかった。


 農家の子倅で生まれた俺は輪作を提案してより豊かになろうと画策したのだが・・・


「当たり前の事言ってんじゃないよ!」

「250年前に食うものもない我々に知識を授けてくれた勇者様に感謝しなければならんな」 

「そんな事も知らないのかよ」

 両親が呆れたように俺を見て笑うのだった。兄までも俺を馬鹿にするのだ。

 そう、この世界は既に現代知識チート後の世界だった。

 沖田駿介許すまじ。いや、いくらゲーム世界だからって、お前、自分で異世界チートした後の世界とかにするなよ!俺にもう少しチャンスをくれよ!

 頭を抱えるしかなかった。

 だが、考えようによっては悪くない。何故なら農家の生活がそこまで苦しく無いからだ。が死する心配のない世界だって分かった。


「くっ…おのれ勇者め。そうだ、それならエアコンを作って科学技術チートだ!」

 マインラートは次なる現代知識チートを考えて情報を集める事にする。剣と魔法の世界で科学を使ったらどうかと考えた訳だ。

 エアコンの仕組みは知らないがどうにかなるだろうと考えた。


 エアコンや扇風機を作るには魔力が必要だが、魔力を溜める仕組みが無かった。むしろ世界中の科学者が研究して尚見つからない話だと知ったのは神父の爺さんに話を聞いてからだった。魔道具が高価な理由を知る事となる。


「自動車なら……」

 この世界には化石燃料が無かった。あっさり頓挫した。

 燃える石や燃える水とかないかと教会の神父さんに訊ねるとこんな話が返って来た。

「この世界はかつて、石炭や石油を使い潰した後に魔法文明で発展したが、突然の氷河期がやって来て絶滅し掛けた世界だと言うのだ。文明は一度失われたが、そういう逸話は残っているらしい。


 馬車にはダンパーがついていて揺れは少ない。馬車を引くスレイプニルは足が8本あって強靭且つ速かった。さらにスピードを重視すればユニコーン便なるものまである始末。

 自動車が無くても馬車業界は盛況で、日本のタクシーやバス、或いは電車くらいの勢いで存在している。


「おのれ……初代勇者め!」

 と恨んでみるが、そもそも初代勇者の発明でも何でもなかったりする。

 スレイプニルやユニコーンの繁殖を一役勝ったのはアインホルン男爵家という帝国貴族だという。


「そうだ!学者になって偉くなってやる!そう、世界は丸かったんだよ!」

「何当たり前の事言ってんだい。あんな丸い地平線してんだから当然だろ。昔の人達はドラゴンに乗って空より高い場所に登ってるんだからね。世界は丸いに決まってんじゃないの」

 母親に呆れられるように突っ込まれる始末だった。


 所詮、一介のエンジニア風情が世界を相手取って知識チートなんて無謀に過ぎるのだ。




***




 俺は11歳になった。とは言っても早いうちに勉強をして成績を上げておきたいから、教会の神父さんに頼んで勉強を見て貰っていた。結構そういう子供は多く、一つ下のイケメンクソ野郎もその口で一緒に勉強をしていた。

「なーなー、マイン。ベンキョー分かんねーんだけど教えろよ」

 俺に算数の教科書を持って問い詰めて来るのがルカ・フーバー。同じ農民の子供で、年齢が一つ違うからよく勉強を教わりに来る。

「んなの、普通に計算しろよ」

「分かんねーからきーてんじゃん」

 ぶっちゃけ勉強は日本の大学を出てるので、この世界の算数程度余裕だ。こっちの世界の義務教育の算数は割り算、少数や分数を習ったら終わりだ。後は社会に出るだけって感じだ。まあ、言語学や歴史とかこの世界の事は知らなすぎるからかなり困難だが。

 冒険者になったら意味が無いからと適当に義務教育を終えて出て行くやつが多い。

 一緒に早いうちに勉強をして、分からないから聞くあたりルカはまだ真面目な方だろう。


 俺はうんざりしながら分数の割り算を教える羽目になる。

「ルカ君、一緒に帰ろー?」

「ちょっと待てよ」

 女子の集団がルカに声をかけてルカは俺に勉強を教わりながら女たちに待てと言う。

 ぶっちゃけ目の前の男友達は髪の毛ボサボサで真っ黒に日焼けしている活発な奴で、ユニセックスな名前をしているが、顔立ちが整っていて、ガサツな性格でも女子にすごくモテるのだ。

 結局この世の中は顔だと言うのがよく分かる。前世も今世もだ。


 そんなある日、神父の爺さんが俺を見た訊ねて来る。

「マインラート君は勉強もできるし魔法が得意だったよね」

「は、はい」

「義務教育が終わったら冒険者になると言っていたけど、ヘレントルの高等学園に入学してみたら如何かな?」

 神父の爺さんの提案に一瞬間を開けてしまう。

「なんすか、それ」

「冒険者学校で、学費は通いながら稼ぐ仕組みになっていてね。3年ほど稼ぐのが遅れるけど、学園での活躍によっては騎士爵を得られるかもしれない」

 教会の神父の爺さんに言われて俺は思い出した。

 そう言えばこの世界は薔薇帝国戦記の世界であり、ただの異世界では無いと思い出す。そしてこのゲームは貴族なら東の帝都の学校に通うのだが、選んだキャラによっては西にある平民でも騎士になり上がれる学校に通えるのだ。


「え、それって貴族になれるかもしれないって事っすか?そんな簡単に?」

 どうやらこの世界でもゲーム設定はそのままらしい。

「簡単ではないけどね。君は早いうちに文字も覚えたし数学は高等教育レベルも身に着けている。高レベルな魔法を使えるし、平民でも宮廷魔導士団に入れば一代限りの貴族にだってなれてしまうんだ。ヘレントル高等学園っていう平民でも通える高等学校があるんだけど、そこを目指してみないか?」

「行く行く行く!行きます!」

 何かフラグがあったのかは分からないが、俺は神父の爺さんに勉強や魔法を習いながら、学園を目指すのだった。

 そうか、平民(男)はさっさと貴族になるからああいうコメントが出たのか!やはり俺が平民(男)の正体か!いや、でもゲームでそこまで行ってねえから攻略方法分かんねー。記憶もうろ覚えだし。


 俺はそこで気づくのだった。誕生年が235年だったから、250年に学校に入る予定になる事実を。その年代は鬱展開まっしぐらの世代だった。


 教師には婚約者を失った復讐姫ヒルデガルトがいて途中で復讐に狂っていなくなる。

 同学年は5年生の最後に必ず断罪されて収監される悪役令嬢ジルフィアがいて、東部連邦国との戦争の引き金になる領地と共に亡くなる破滅令嬢クラウディアがいる。

 学外演習で惨殺される逃亡王女フローラ、母親が途中で亡くなって学校から消える脇役令嬢サラ、戦火で死ぬ歌姫リュディアーヌと公女ティファニーの百合コンビという留学生もこの年代で出会う筈だ。

 領地が滅んでいなければ没落令嬢アレクサンドラ、ロイエンタールに買われて無ければ薄幸令嬢レーアの二人もいる。ここら辺はどういう歴史を進んでいるか俺にも現時点ではわからなかった。

 実は後者の二人、いるといないでは帝国の国力が段違いなのだ。兵力が高いルミヤルヴィと財力の高いミュラー商会が味方かどうかで帝国が滅ぶかどうかが激変する。


 とにかくこの世代の女子は大体皆死んでいくんだ。

 しかも自分の主人公(プレイキャラ)じゃない場合の次期皇帝エトヴィンは『触れるな危険』の代名詞。基本クズだから気に入らない行動をすると、直に部下に命令して誰彼構わず殺す。ゲーム中でもモブが何人も殺されている。前を遮ったとか、凄いくだらない理由で側近に殺させるやべー奴だ。


 鬱展開が多すぎる上に、自分の身の上が最も危険な250年代に高等学園に編入とか勘弁してほしいわ。まあ触れるな危険と言われる皇子と同学年の249年代だったら学校自体に行かなかっただろう。

変な展開に関わらないように生きよう。俺は自分が成りあがる為にそう考えるのだった。




***




 暫くして火竜王の変というニュースが入りルミヤルヴィ辺境伯領の主都が崩壊した。没落令嬢アレクサンドラが没落原因が明らかになり、ゲームで東部戦争時に帝都の英雄や雷華の賢者が使えなくなった理由が分かる。ゲームでは何故か説明が無かったから、俺は一度世界中を探した程だ。

 特に帝都の英雄こと蛮族(男)の戦闘力は圧倒的で、一人だけ無双ゲームになる。

 苦しい戦闘パートが一人いるだけで楽勝になる。250年代の時、いつの間にかいなくなっているから戦争の前に仲間にすべく探した事もあった。見つからなかったけども。使っていて最も楽しいキャラだっただけに惜しすぎる。


 そして義務教育範囲が終わり、故郷を離れてヘレントルへ向かう途中で情報が入る。

 ロイエンタールの革命が成ったと言う話だった。薄幸令嬢レーアがその時ロイエンタールに買われているかによって生死が決まるが、大体死んでいる。

 何せ薄幸令嬢こと商人の娘は攻略が困難だからだ。鬼畜貴族の食指が伸びるのが学園に入学する直前で買われてしまう。同時にミュラー家は没落する。学園入学前の金稼ぎパートでいくら稼いでも無理だった。

 攻略サイトで調べると、金稼ぎパート前に資金を親に預ける事で買われずに済むという、何度もやり直したけどやり直す場所を間違えていたというオチを知った時の気分が最悪だったのを覚えている。





***




 入学試験は余裕だった。大卒の俺からすれば問題はこの世界に来て0から学ぶ歴史や語学であるから少しは警戒していたが。ちなみにこの世界、体が軽いなぁと思っていたら、重力加速度が地球より低かった。


 学校の試験では『傭兵見習い』アルバンと出会った。というか普通に話す友人になったのは何かの強制力か?

 コイツ、女子にモテるけどヘタレなんだよな。よくいるハーレム主人公系キャラだ。

 コイツは東部戦争のキーキャラクターで、帝都の英雄がいないのはこいつを新しい英雄にする為かと思っていた。こいつ抜きで東部戦争は勝てない。帝国に生まれた以上、こいつを仲間にする必要がある。仲良くなるのは悪くない筈だ。


 ただ、リアルに考えると微妙だ。仲間にしておけば後で役に立つけど、学園生活でコイツに女子を持っていかれるのは納得いかねえ。ゲームだと必ず仲間にしたが、リアルだと女を持ってかれるから勘弁してほしかった。貴族は正室、側室、妾と侍らせるのが当然のこの世界においてある意味で敵だ。

 俺にネトリ系チャラ男スキルでもあればよかったのだが、何分ただの陰キャだ。期待は出来なかった。




***




 入学式でアルバンと顔を合わせて一緒に話していると銀髪の美少女が近づいて来る。

 顔立ちが帝都の聖女ザシャに似てる!?まだ見ぬ隠しキャラか!?そう言えば帝都の英雄と聖女が死んだが、その子供がどうなったかは知らない。

「すいません。ここ、高等部の列で問題ないですよね?」

「え。あ、ああ、そ、そうだけど」

 アルバンも彼女の美貌に一瞬呆けていた。分かるぞ。

「君、モテるでしょ。オレ、マインラート・バウアー。将来は大魔導士になる予定だ。ちなみに彼女募集中。ちなみにどう?」

 俺は下手なナンパな言葉を使って相手の出方を確かめる。

「僕はフレデリク・ズワールト。男子です」

「「え」」

 俺とアルバンは凍り付く。


 男子?男子だと?嘘だろ?声も女子だったし、見た目も女子だし、背も高くないし、普通に女子だろ?男子?もしかして男子と偽っているのか?


「何故かよく間違われるけど」

「何だよ、男かよ。……冗談じゃなくて?実はおっぱいがついていたりチ●コがついてなかったりするとか?」

「普通に男子にあるべきものはついているし、無いものはついてないけど。冒険者時代にズボンを下ろされて確認されたから、そう言うのは辞めてね?」

 うんざりするような顔をするフレデリクは溜息を吐く。

「こんなかわいこちゃんが男とか……神は死んだ」

 俺はorzって感じで項垂れるのだった。

「勝手に殺したら女神様も怒ると思うよ」

 そう言えばこの世界は女神一柱だけの一神教、それ以外は魔神の類だった。敢えて言うなら勇者シュンスケは豊穣の神扱いだが。っていうかある意味でこの世界のクリエイター()だがな。




 入学式が終わり迷宮見学に行くので、一時、俺達はトイレへと向かう。


「え、君も付いて来るの?」

「男子トイレに行くんでしょ?」

「えー」

 アルバンはフレデリクが男だという事に不安を感じているようだ。俺もだ。トイレと言っても個室に入るんじゃねーかと思っていたが、まさか小の方に向かった。それじゃ無理じゃね?やる振りをするだけか?お前、どう見ても男じゃねーだろ。

 俺はそう思いながらフレデリクの横に立って小便をしようとしつつ、フレデリクの方をちらりとのぞき込む。


 そこには凶悪なモンスターがいた。

 あまりにも凶悪な様に俺もアルバンも凍り付く。奴はバジリスクか!?


 俺とアルバンはトイレから出ると、どこか肩を落として敗北者のような足取りで迷宮見学の列へと戻るのだった。っていうか、アルバンものぞき込んでたんだな。だよな。女なのに大丈夫か、みたいに思った俺達が馬鹿だった。

 残念ながら凄く男だった。




***



 迷宮見学が終わり、それなりに打ち解けて来た俺達は教室へと向かう。

 フレデリク・ズワールトが指揮を執り教師をノロマと嘲りアルバンらを率いて戦う姿は帝都の英雄の再来とも言うべきキャラだった。

 俺は、この女みたいな顔をしてる男が何者か予想がついてきた。

 帝都の英雄と同じ苗字“ズワールト”を持った皇族の印である銀髪。

 まだゲームで主人公として見た事無いが間違いなく主要キャラだ。火竜王の変で生き残っていたのか。


 平民(男)ってお前か!?平民じゃねーけどな。皇族じゃねーか。

 だが、本人は平民として育てられたって言ってたから、平民(男)として主人公を誤った認識をさせる為のブラフだったって事か。

 既に紅玉級冒険者って事は既にイベント進めてんじゃん。

 って事はこれから俺が歩く道は沖田駿介が語っていた正史って事か?マジか………。俺の主人公説が消えた瞬間だった。




***




 迷宮見学が終わり、教室で自己紹介をすると席につく事になる。


「それじゃあ、空いてる席についてください」

 ゲームとは異なり妙にかわいらしい丸眼鏡の女教師が俺達に声をかける。

 まさか好きな席に座れとか勘弁してくれよ。俺はどうすると言う感じでアルバンを見る。アルバンも苦笑していた。


「リッちゃん、リッちゃん」

 無表情ながらも明らかに浮かれてる緑髪の女生徒、没落令嬢アレクサンドラがまさか手を振ってフレデリクを呼んでいた。その近くには小動物のような小柄な少女がいてちょこんと手を挙げている。


 フレデリクは苦笑して、そっちの方へと歩き出す。

「じゃ、僕は向こうらしいので」


「くっ、お前のような奴は爆ぜてしまえ」

 内戦で死ぬかリューネブルクの側室にされている筈の没落令嬢が普通にいて、近くにいる薄幸令嬢らしき少女もいる。

 俺の知らない所で何かイベントがあったようだ。マジですか!?


 ………もしかして、薔薇帝国戦記って、鬱展開ばかりだった250年代の令嬢群を救って行くのが平民(男)の話なのか?

ピヨッ!

あとがき担当のヒヨコだぞ。ピヨちゃんと呼んでくれ。

ピーヨピヨピヨ ヒヨコの子 異世界からやって来た。

ピーヨピヨピヨ ヒヨコの子 まん丸毛皮のヒヨコの子

崖の上のピヨとはヒヨコの事だ!


………駿介のせいで崖から落ちて異世界(地球)に行く羽目になった事を思い出してしまうから辞めてもらいたい今日この頃のヒヨコです。


さて、遂にこの話を表に出る羽目になったか。

そう、まだヒヨコ伝説3部で描かれて無いが、駿介はゲーム会社を買収した。

駿介は花国騎士物語というゲームを元に、この世界のスキルや魔法形態を作り出すように女神と設定したのだが、それから500年後、ゲームと同じキャラがヒヨコ達と出会う事になった。悪役令嬢になる前の幼女リディア(花国公爵家)ちゃんだ。

つまり、タイムパラドックスが知らぬうちに発生した疑惑が浮かぶ上がった。

どっちが先でどっちが後か。鳥が先か卵が先か、そんな疑問だ。ヒヨコからすれば鳥でも卵でもなくヒヨコが先だと言っておこうか。

その疑問を解くべくゲーム会社を買収し何故このゲームが作られたのかを調べたというのが社会人になった駿介の予定だ。


つまりマインラート君はその未来から過去の異世界にやって来たのだろう。異世界となろう民の住む宇宙は時間がねじれて繋がってるから未来が過去につながる事もあるらしいのだ。

この雷華の騎士がかなり正確にゲームとして描かれている理由は簡単だ。


ヒヨコ二部で支配帝時代を調べてた子供達が当時を知るエルフのお兄さんから話を聞いて、帰ったら論文にすべくメモを取っていたのだ。そして大量の文書となった紙をヒヨコに預けていた。ヒヨコには<異空間収納(アイテムボックス)>の魔法があったからな。

だが、惜しむらくはヒヨコは子供達とローゼンブルクに帰る事適わず、駿介のせいで地球に落とされたのだ。

そしてヒヨコの持っていた資料を基に描かれる事になったのがこの雷華の騎士をベースにしたゲーム『薔薇帝国戦記』だ。


ちなみに異世界転生者は彼だけではないらしい。きっと様々な異世界転生者たちが陰でコツコツやらかす事だろう。


それでは次回予告だぞ。

次回は『ヒヨコ、大きさは平均値でって言ったよね!』でお送りするぞ。


※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。

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