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雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第2章 雷華の騎士と地獄迷宮
36/50

2話 学園生活の始まり①

~帝歴250年3月 ローゼンブルク帝国フェルトブルク皇領ヘレントル市~


 レーベンベルク伯爵が治める大都市ヘレントルでは祭りがおこなわれていた。

 昼間から多くの冒険者たちが集まり、中には酒を飲んで騒いでいる。

 同時に新人冒険者が登録の為に行列を作っていた。帝国は11歳から14歳まで社会に出る前に3年間だけ最低限の教育を受けさせる義務がある。文字の読み書きや四則演算を覚えるのは当然でその点は他国の追随を許さない。

 義務教育が終わると1年の見習い期間がある。だが、冒険者にはそういったものがない。未成年でも14歳になったらいきなり本番だ。

 1年頑張った翌4月に成人式が行われるのだが、これがこの日。

 新冒険者歓迎と1年目の冒険者の成人式があり、そこに冒険者学校の編入式と入学式が重なりにぎやかになるという寸法だ。


 ヘレントル高等学園では教師が声掛けをしている。

「はーい、こっちがヘレントル高等学園の新1年生と新4年生の入学式です。新冒険者の方々はあちらのギルドで登録をお願いします」

 ぞろぞろと15歳になる青年たちは新冒険者として登録をしに、11歳と14歳の入学生たちは学園の方へと向かう。

 たくさんの子供がぞろぞろと歩いていた。


 ミュラー商会の持つ邸宅から二人の女子が学園生である証拠を示すローブを纏って歩いて外に出る。

 茶色い髪をショートにした小柄な少女は、ぼんやりと表情は乏しいものの、小動物のような愛嬌を持っていた。

 その少女と並んで歩くのはセミロングの髪をサイドテールにした今時の流行に敏感な若い女の子のような印象を持つ少女だ。

 小柄な少女がレーア・ミュラー、ヴェルザー西方伯の孫にして帝国西部で最大規模のミュラー商会の嫡女である。その彼女の親友で同じ年であるリリー・ビルングはボーデンフェルト伯の右腕とも言うべき存在で、代々秘書官を輩出するビルング子爵家の令嬢である。

 平民レーアに仕えるリリー子爵令嬢という図式がここに発生しているのだが、周りはただ仲が良いだけだと認識している。幼馴染だからでもある。


「いやー、今年こそは行ける筈!編入試験頑張ったからね!」

「そうだね。リリーはよく頑張った」

「そうでしょ、そうでしょ!今年こそA組だよ!」

「大丈夫。落ちても友達である事には変わらないから。惜しかったよね」

「ってまだ結果見てないから!慰めないでよ!」

 二人はどこにでもいるような友達同士の登校姿を見せる。


「そうだ。言い忘れてたけど」

「何?レーア」

「私、婚約して第二夫人の座が確定したから」

「へー、そうなんだー……って、はいいいいいいいいいいいっ!?」

「うるさいよ?」

 いきなりの言葉に思いっきりうろたえるリリーにレーアは軽く注意する。

「うるさくもなるよ!散々、婚約話を蹴って来たレーアが、いきなり婚約して第二夫人とかどういう話なの!?小父さんが妙な婚約者候補を推したのなら、私が説得するよ!何があったの?」

「お祖父ちゃんの命令?」

「うぐっ」

 小父さん相手なら説得は出来てもお祖父ちゃんでは、いくら子爵令嬢でも説得どころか話しする事すら困難だった。

「それに一目惚れした相手?」

 コテンとなぜか質問系で口にするレーアだった。

「本当に何があったの?らしくないよ、レーア。そもそも一目ぼれした乙女がそんなクールな顔をしないよ!」

 リリーはレーアの肩をゆするがレーアは揺すられるだけで顔色一つ変えなかった。

 案の定、リリーは混乱して友人を心配しているのかよく分からない状態になっていた。

「リリーどいた方が良い」

「え?あ」

 レーアがリリーを引っ張り、リリーはハッと気付いて慌てて道の端に向かう。


 5人組の男達だった。

 欠伸をしながらやってくるのはライトブラウンの髪色をした少年。美しい顔立ちをしており、当たり前のように道の真ん中を歩いて進む。このローゼンブルク帝国の第二皇子エトヴィン・フォン・ローゼンブルクであった。

 それに続くのが黒ぶち眼鏡をかけており利発そうな顔立ちをしつつも、どこかエトヴィンに似た雰囲気のある少年。現帝国宰相の息子であり帝国八大貴族ザルム公爵家の長子ミヒャエル・フォン・ザルムである。

 エトヴィンの斜め後ろを歩くのは短い金髪碧眼の少年で一際大柄な少年アントン・フォン・リューネブルク。代々、騎士団長を経由して軍務卿の役職に就くリューネブルク公爵家の三男である。

 皇子の斜め後ろを歩く小柄で無邪気そうな少年だ。既に剣を抜いて肩に剣を置きながらいつでも戦闘モードに入りそうな危険さを漂わせている。彼こそが帝国の上位十人の剣士が任命される帝国十剣の一人ヘルムート・フォン・ヒンデンブルク伯爵令息である。皇領の直臣貴族の伯爵家の上には大貴族しかいない為、実質的に中位貴族の最上位に位置する存在であった。

 そしてエトヴィンの横で話し相手をしているの紫色の髪をしており人懐こそうな柔和な顔立ちをした少年がペーター・フォン・グロスクロイツ。帝国八大貴族グロスクロイツ侯爵家嫡男の息子でもある。


「凄いよね~。殿下を筆頭に大貴族や帝国の要職に就く偉い貴族の令息で、イケメン。女生徒達も目を輝かせているしさ」

「死んでもごめんだけど」

「ま、確かにね。それに第8夫人とかになりたくないし。」

 皇族や大貴族であるならば政治や経済活動におけるコネクションの為に娘を差しだすなどもよくある話だった。

 気に入られてしまえば良いが、そうでないなら最低限の暮らしを保証されるだけで老いていくだけの生活を強いられることになる。貴族の力は圧倒的に強いからこそ、貴族との付き合いに関しては一定の距離を取らねばならない。特に皇族相手であるならば、無礼を働けば簡単に殺されてしまう。

 リリーはヴェルザー辺境伯領にとっては大物貴族の一人娘であるが、帝国に入ると単なる陪臣貴族の子爵令嬢になる。同じ直臣男爵にも侮られる立場なのだ。


「今年から波乱の幕開けだし」

 レーアは自身の婚約者が編入する事で今までの貴族主義的な風潮をぶっ壊す予感があった。

 帝都の英雄のような問題児が、雷華の賢者に授けられた理知をもってこの学園にやって来るようなものなのだから。




***




 編入生は少し早めに学校で説明会が行われていた。

 元々、貴族学校ではなく、冒険者学校だったので、貴族が多くいようが入学式の様なものは行われない。

 多くの学生が並んでいる中で、フレデリクが列に並んで待っていると、前にいるし生徒が何やら怪しげな言葉を口にする。

「やっべー。ついに俺の伝説が始まっちまう」

 伝説でも作りに来たのかな?父の同類だろうか?等とフレデリクは他人事のように聞いていた。


「君も高等部の入学生なの?」

「それ以外ないだろー」

「いや、間違えて初等部の可能性もあるけど」

「それ恥ずいな!」

 ケラケラと笑い合う男子学生がAクラスの列に並んでいた。

 一人は眼鏡をかけたローブ姿の少年で、もう一人は軽装の剣士風の少年だった。メガネは非常に珍しい。どこで手に入れたのだろうか?

 僕は彼らに声をかける。

「すいません。ここ、高等部の列で問題ないですよね?」

「え。あ、ああ、そ、そうだけど」

「君、モテるでしょ。オレ、マインラート・バウアー。将来は大魔導士になる予定だ。ちなみに彼女募集中。ちなみにどう?」

 伝説を始めようとしていた少年はお調子者な風体でいきなりナンパをしてくる。

 僕は目を細めて眉根をもみほぐしながら

「僕はフレデリク・ズワールト。男子です」

 と答える。

「「え」」

 二人の男子生徒は時計を止めたかのように固まる。

「何故かよく間違われるけど」

 まあ、女と思われて口説かれるのは悲しくも慣れていた。

 男に第一声でナンパされるの。本当に何故だろう?

「何だよ、男かよ。……冗談じゃなくて?実はおっぱいがついていたりチ●コがついてなかったりするとか?」

「普通に男子にあるべきものはついているし、無いものはついてないけど。冒険者時代にズボンを下ろされて確認されたから、そう言うのは辞めてね?」

「こんなかわいこちゃんが男とか……神は死んだ」

 眼鏡の少年は両手を地面につけて項垂れるのだった。

「勝手に殺したら女神様も怒ると思うよ」

 魔神だって死んでも眷属の体を使って蘇るというのに。

 もう一人の真面目そうな背の高い男子は胸に手を当てて礼をする。


「俺はアルバン・フォン・シューベルト。一応、貴族なんだけど平民暮らしが長いから普通にためで良いよ」

「へー、お前、貴族なんだ。見えねーけど」

 マインラートと名乗ったお調子者の少年は笑いながらアルバンを見る。

 背は平均よりも高めで、戦士希望なのが分かる程体格はしっかりしていた。短い髪から覗く顔立ちは、整っておりどこか生真面目な良い子ちゃんといった所か。

 フレデリクはその顔がどこかで見た事があるような気がするが特に思い出せなかった。


「だよね。幼い頃に傭兵団で下働きしていて、グロスクロイツ地方の戦争で負けてさ。路頭に迷ってた所をシューベルト男爵様の使用人に拾われたんだ。使用人見習いとして一昨年まで働いていたんだけど、運よく男爵様に気に入られてね。養子として迎え入れられて貴族になったんだよ。だから人生の大半が平民だから」

「めっちゃラッキーじゃん。俺も貴族に拾われてぇ」

 マインラートは羨まし気にぼやく。


 フレデリクは大貴族に直接貴族の仕組みやシステムを詳しく教わっているので、そんな簡単な話ではない事に気付く。

 特に皇領と三大侯爵家直下は直臣貴族だ。血族が重要視される。だからこそ、貴族は子供がいなければ親戚がいる。それを押しのけて血のつながってない平民が貴族にある事は非常に稀だ。血筋が無い以上、血筋以上の実力が求められるからだ。貴族主義になっている帝国で血族じゃない人間が貴族になる。

 相当な事だ。


「僕も一応平民かな?」

「一応って……」

「親が一代限りの爵位持ちで、母親は結構高貴な身分だったらしい。僕自身が大貴族の親戚にあたるから」

「駆け落ちした令嬢の子供か?」

「そんな感じかなぁ」

「えと、なんつったっけ。男子って言われて驚いたせいで名前忘れたけど」

「フレデレクだよ。フレデリク・ズワールトだよ」

「珍しい名前だよな」

「苗字はメルシュタイン地方で、名前はルミヤルヴィの発音だからかな。こっちの発音だとフリードリヒで、割とありふれた名前だと思うよ」

「あ、そういう事」

 名前の説明で彼らも納得する。

「マインラートって農家の出?」

「文字通りな」

 農家を意味するバウアー姓を名乗っている辺り、やっぱりと言った感じだ。

 苗字の事を言い出せばシューベルトなら靴屋なのだが、貴族だというから稼いで爵位を買った人間の子供かと思ったが、だとするとこの学園に来るのは少し変だ。


「僕は養子入りで貴族教育が中途だったから、騎士学校じゃなくてこっちにしてもらったんだ。軍閥貴族だから騎士志望で家柄が劣るとこっちに来る例が多いらしいし」

「フレデリクは俺同様に魔導士志望か?」

「うーん、どうなんだろ。ルミヤルヴィのお姫様の幼馴染でさ。小さい頃は騎士志望だったけど、あそこはもう騎士団の駐留が廃止されているから。ルミヤルヴィを護れるなら何の仕事でも構わないんだけど。何でもやれるようになっておきたいなとは思ってる」

「大貴族令嬢の幼馴染!?マジかよ」

「いや、騎士の子供ならありえるんじゃないの?たしかルミヤルヴィのお姫様が同年代にいるらしいことは聞いてたけど。俺も寄り親にグロスクロイツ傘下の伯爵令息と面識あるし」


「マジかよ。くっ、このリア充どもが!顔がモノを言うと思うなよ!」

「顔って言われても……何故か会う人会う人ほぼ全員に女子に間違われるから困ってるんだけど」

 僕は肩を竦めるとアルバンとマインラートは顔を見合わせてから僕を見る。

「「仕方ないんじゃない?」」

「何故だ!? 」

 フレデリクは絶望したような美少女顔で空を仰ぐ。どう見ても男装の美少女にしか見えなかったという。



「これだけの人数が学園に来てるんだ」

「高等部になれば各地から義務教育を終えた奴がたくさん集まるって男爵様…いや、お義父様がいっていたけど」

「いい事じゃねえか。フレデリクにはがっかりさせられたけど可愛い女子がたくさんいるし。俺も偉い冒険者になって奥さん沢山持つんだ」

 マインラートは女子ばかり見ていた。

「勝手にがっかりされても困るけど。まあ、とりあえず僕はウチの姫様を守るのがお仕事でもあるんで」

「貴族のお姫様とお近づきになる方法ってあるのか?」

「さあ。父が領主様に気に入られて実の父親の様に慕っていたから、領主様の娘の遊び相手として育ってんだよ」

「平民だった俺に聞かれてもなぁ」

「運が全てとでもいうのか………」

 マインラートは愕然としていると、こっちに髪の長い女性が近寄ってくる。

 この辺では見ない顔立ちだった。恐らく神聖女神教国辺りの民族にいる南部民族の顔立ちをしていた。

「あの、シュ、シューベルト様……ですよね?」

「え、あっ」

 アルバンは近寄って来た女の子を見て何かを思い出すように彼女を見る。

「昨晩はありがとうございました。あ、あの時はお礼も言えず申し訳なく……。その、お、同じAクラスですよね。今後もその、仲良くしてくださるとうれしいです」

 と頬を染めてアルバンを見上げる女の子は、照れた様子でその場を去る。

 ショックを受けた様子でマインラートは親の仇のようにアルバンを睨む。


「昨日の夜、変な冒険者に絡まれてたから助けてあげただけだよ。同じクラスなんて偶然あるんだなぁ」

 アルバンはさっきいた彼女の事を説明する。

「僕、思うに、運と言うより行動力なんじゃないかな?」

「困ってる可愛い女の子が俺の前に落ちていれば……」

「落ちてるものなのかな?」

 フレデリクは苦笑する。

 だが、フレデリクはさっきのイリーナと名乗った少女が神聖女神教国の助祭の持つ杖を持っている事に驚いていた。

 他国からの留学生という事だろう、あの年で助祭であり、留学に出るとなると相当な立場であることが分かる。

「フレデリク、お前、姉とか妹とかいないのかよ」

「残念ながら一人っ子だね。うちの両親、イチャイチャしてたけど、弟も妹もいなかった」


 フレデリクは近くの男子と話しながら、列が進むのを待っていた。

 そんな中、先ほどやって来たイリーナさんと話をしている女子がいた。国外者の列のようだが、先ほどからちらちらとこっちを見ていた。ワインレッドの髪色は珍しい女性だった。


(前に会ったヴィフレアの王子殿下の髪色に似ているな……)

 冒険している間に行った帝国の西部にある中南地方最東にある国を思い出す。あそこの王族はきれいな赤い髪が特徴的だった。帝国では珍しい髪の色でもある。

 思えば他国の訛りをチラホラと耳にするし、肌の色の異なる少年少女が見受けられる。

 帝国民だけしか入学できない帝都の学校と異なり、この学校は間違いなく国際色豊かな学校なのだとフレデリクは肌に感じる。


 そういう所を学ばせたかったのかな?

 フレデリクはそんな事を想うと同時に、その学びは必要なく実地で学んできた3年だった事を思い出すのだった。

 復讐に明け暮れた3年は決して無駄ではなかったのかもしれない。

 ピヨッ!

 あとがき担当のヒヨコだぞ。ピヨちゃんと呼んでくれ。

 遂に始まるフレデリクの学園生活。ヒヨコの学園生活も刺激的だったものだ。鳥籠で高校に飼われていた日々を思い出す。まあ、ヒヨコの場合は学園に運ばれた話であって、学生をした訳ではないのだがな!

 籠の中の鳥は鑑賞される道具でしかないと覚えておいてくれ。

 ヒヨコ業界の赤い彗星とはヒヨコの事だ!


 さて、ついにゾロッと男キャラが登場。貴族主義の困った時代に高位貴族令息が集まるという事はだ。本編のざまあ要員が5人も補充される事になった訳だな?彼らは果たしてこの作品で無事生きて行けるのか!?え、そういう話ではない?

 婚約破棄とか無いのか?ある?あるのか。

 ではやはりざまあ要員ではないか。


 ちなみにマインラート君よ。残念ながら君の伝説は作られない。何故ならそんな暇があるなら作者はヒヨコ伝説の第3部を書くからだ。信じてるぞ、作者よ。第3部よりも未来から魂だけやって来た異世界人がいるのに、第三部がそこまで進んでないとネタバレが起こるだろ?作者よ、はよ書くのだ!


 さあ、次回のピヨちゃんは『冒険科高校の劣等生(ヒヨコ)』でお送りするぞ。

 皆見てくれ………って、こらぁぁぁぁあああっ!作者!劣等生と書いてヒヨコと読ませるな!許さん。許さんぞ!今度こそはピヨピヨしてやる。泣いても許さんぞ!絶対だ!


※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。

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