1話 フレデリクの新生活②
ヘレントル高等学園の編入試験の筆記試験が終わると、外に出て実技試験が行われる事となる。
「これより実技試験を担当するのは私、ヒルデガルト・フォン・バイマールが担当いたします」
腰まで伸びる銀髪の美しい女性が校庭に立って説明を始める。
「んんん?」
フレデリクは目の前の女性に既視感があった。
幼い頃、ルミヤルヴィに来てお母さんに神聖魔法を習っていた大好きだった親戚のお姉さんがそこにいた。ルトガーの姪っ子だとかなんとか聞いていたが……。
「魔法の試験をいたしますが、実技の一環として加点されるだけであり、あくまでも実技試験が全くできなくても魔法の能力が高いと認められれば高得点になると考えてください」
つまり、戦闘力が無くても回復魔法や後方支援に向いた魔法が使えるならOKという事らしい。とはいえ、神聖魔法は神授の聖剣を持ってるフレデリクが使ってはちょっと狡い事になる。
雷魔法が分かりやすいかな。ダンジョン探索を考えると<天雷>ではよろしくないから、<地雷>の方が良いだろうか?だが、そうなると逆にわかりにくくなる。風も火もダンジョンでは使いにくい。氷か地か補助魔法という所だろうか?まあ、そっちの方が地味だけど得意だしどうにかなるだろ。
別にダンジョン内で雷魔法LV10<雷龍牙>が使えない訳じゃないけど、ここで使うと被害が出る。
フレデリクがぐるぐると頭の中で悩んでいると、多くの女子が前に出る。冒険者学校で女子が入ると大抵は魔法色が多いというのは本当のようだ。
勿論、男子もぞろぞろと前に出ていくのでフレデリクもそれに付いていく。
「あれ」
ヒルデガルド先生は僕を見て首を傾げる。
「リッ……、ズワールト君。これは魔法の試験なのだけど」
フレデリクは目の前の女性が親戚のお姉ちゃんだとはっきり理解する。リッ君と呼ぼうとした辺りがその通りだ。
当時から神聖魔法だけは得意だったのだが、魔法は苦手で剣術をやっていると思われがちだったことを思い出す。
「今は魔法も得意ですよ」
というよりフレデリクは、今となっては剣より魔法の方が得意だった。対人なら魔法より剣の方が手っ取り早いし疲れないけども。
「困ったわね。校長が今年はヴォルフの息子が来るって聞いて、実技試験官するってウキウキしてたのに」
ヒルデガルトが困り顔でぼやく。
良いのだろうか?帝国でも名高い剣聖フェルディナントがそんなんで。父さん、よほど可愛がられていたのだろうか?父さんの所為で妙な人物に狙われてしまった。
フレデリクは溜息を吐きながらげんなりする。大陸三大英雄の一人フェルディナントはそう言えば父に剣を教えた人だと思い出す。
「あくまで魔法試験は実技試験の補助なので、疲れて実技試験が出来なくなるようならやめておくように。この後、剣聖フェルディナントが実技能力を見て試験結果が出ます。評価は100段階評価になります。魔法使いはこちらに来てください。実技試験も同時に始めるので、ここで始めますので待っていてください。もう少ししたら校長が来ますので」
ヒルデガルトの説明が終わる。
校長が来ると聞いて若干学生たちが盛り上がる。
***
フレデリクら受験生はそのままヒルデガルトについていき魔法の試験を行なう。
女子が多いのでちょっと居づらい。
「ふっ、目立つのは恥ずかしいが俺が最初にやろう」
と一人の男が前に出る。
「では試験番号と名前を言ったらあっちの的に魔法をどうぞ」
「試験番号25番ミカエル・ホフナーだ!出でよ、我が必殺の大魔法!ファイアーボール!」
ひょろりと火の玉が飛んでボフッと岩山に置いてある的に当たる。
「おおーっ」
「火魔法LV2を使えるのは凄いですね」
試験を見ていた生徒たちが歓声を上げて、ヒルデガルトも評価する。
え、あれで凄いの?
フレデリクは思い切り顔を引きつらせる。
あれが加点されるならフレデリクは3年前時点から魔法が得意な人になってしまう。そんな事を想いながら他人の試験を眺めていた。
「実技が0点だったとしても、その魔法だけでD~Eクラスはいけそうな実力ですね」
「ふふん、どうよ」
とにやりと笑い、男は僕の方をちらちらとみる。なんだろう、ライバル視しているのだろうか?
だが、D~Eクラスという事は中級という事。上には上がいるという事だ。
フレデリクはようやくレベルを認識し、他の生徒がやる魔法を見ていくと
「出でよ、風!<ブリーズ>!」 ※風魔法LV1
ひゅ~と風が駆け抜ける。的が全く動かない。
「食らえ!<ドーサ>!」 ※土魔法LV2
土つぶてがベチャリと地面に落ちる。
「いけっ!<アイスボール>!」 ※氷魔法LV2
氷のつぶてが飛んで途中で溶けて消える。
「我が奥義を見よ!<ファイアボール>!」
火の玉が飛んで岩に当たると火が消える。
使えるが効果が出ているというレベルにも達していなかった。そうか、まともに知識のない平民だと使えるのは稀なんだ。だから使えるだけでも大したものだし、そのために学校に通うって事か。
フレデリクはやっと真理に辿り着いた、と確信する。
「ふっ、所詮は平民集団か。僕の魔法を見て驚愕するがいい。試験番号18番、カルロス・フォン・ボスフェルト!そう、ボスフェルト男爵家の神童と呼ばれたのは僕の事だ。僕の魔法を見て惚れるなよ。<アイスアロー>!」
何故か僕の方にバチコーンとウインクをしてから岩山に向けて手を掲げる。氷の矢が岩山にぶつかって砕けるのだった。
氷魔法レベル3でまともに効果が出たのは初めてかもしれない。使った本人が肩で息をしているけど。
困ったぞ、どうしよう。苦手な魔法でもぶっちぎりの高評価になってしまう。属性を悩んでいたのがあほらしくなってきたとフレデリクは溜息を吐く。
「最後、リッ…フレデリク・ズワールト君」
こっちに来て最後の試験に登録したから受験番号がかなり後ろの方になっていた。
「試験番号40番、フレデリク・ズワールトです。えーと、じゃあ、<エクスプロージョン>!」
魔法の構成を組み岩山に向けて魔力を解き放つ。
岩山が砕けて吹き飛んだ。
「な、何者だ」
「宮廷魔導士でも使い手は5本の指に入るエクスプロージョンを使いこなしているだと!?」
「貴族では無かったぞ?」
「ルミヤルヴィは貴族でもフォンは付かないのでは?」
生徒達も近くで見ている教師達も騒然としていた。
ヒルデガルトは教師達を一瞥して
「彼が、亡きヴォルフ様の一人息子、フレデリク・ズワールトですよ」
と言うと教師たちはなぜか納得したように口を閉じるのだった。父さん、魔法を使えない人だったんだけどな。父さんは何でもありって事なのかな?
フレデリクは遠くを眺めながら肩を落とす。
「あの美少女は男なのか!?馬鹿な!」
愕然と膝をつく男子生徒の姿を見て、フレデリクはうんざりしてくる。
人が多くなると勘違いする人が一気に増えるらしい。僕は男ですってタスキでもかけて歩かないとだめかもしれない。そんな事を考えるのだった。
魔法の試験が終わり実技試験の方に戻る。が、既に実技試験を行っていた戦士志望者たちは全滅していた。
一人の男が顎髭をなでながら立っていた。齢60を過ぎたほどの白髪の老人であるが、その肉体は老人とは思えないほど筋肉隆々であり、無駄な肉が感じさせない程引き締まっている。
地面には疲れ切った男たちが転がっていた。
「情けないなぁ。若者が」
「校長、張り切りすぎです」
呆れたようにヒルデガルトが溜息を吐く。周りの教師達も同意するように頷いていた。
「校長、しっかりと評価していたのでしょうね?」
「こっちから順番に3点、2点、3点、4点、2点、1点、1点、1点、1点、2点、3点、2点…」
手前にいる人間から指をさしながら答える。
「校長、10点満点ではありませんよ」
「100点満点だから、点数かける10で計算しておいてください」
苦言を呈する採点係の先生だが、諦めたようにぼやくのはヒルデガルトだった。扱いが微妙に慣れている。
これが父の師匠であり、物語の主人公でもある剣聖フェルディナントか、とフレデリクは見上げる。あのアルノルトが目標にしていた彼の父親だった。
「さて、魔法試験をしていた学生たち。これより実技試験を開始する。あらゆる手段を行使して構わない。仮想階層主として私が君たちと戦う。君たちはどのように対処するかを見る。今回の実技試験は冒険者としてのふるまいを見る。君たちなりに私を倒すために手を尽くすと良い。戦闘形式は1対全員だ。それでは、5秒後に開始する。戦闘準備をせよ!」
校長の言葉に生徒たちは戦闘態勢に入る。
仮想階層主って……。
僕はギレネ砂漠迷宮に出てきた5階層の化物を思い出す。迷宮は魔力回復しないから大変だった。
まあ、倒せないレベルでもないって事かな?
校長がカウントダウンするようにカウントを読み上げる。本来であれば周りに声をかけて協力したいがそんな暇もないだろう。
「2……1……始めだ!」
校長が一瞬で視界から消えて構えている剣士の正面に現れて木刀を一閃、一撃で昏倒する。
「剣士が敵を前に呆然とするな、1点!そっちも1点だ。」
恐らく縮地法を使えるのだろう。一瞬で逆側でほっとしている剣士の足を払って地面に倒す。
遠くに行ってチャンスだと思ったのだろう。魔法を唱えようと構えるが
「そんなのろのろ動いては意味が無いぞ、1点!」
一瞬で距離を詰めて魔法を討とうとしていた女子の足を払って尻もちをつかせる。
剣を持って校長が飛び込むのを待つ剣士がいたが
「魔法使いを囮にして狙うにしてももう少し分らんようにやらんか、2点!」
狙ったように現れても剣を振る前に懐に入られて殴られて吹き飛ぶ男子学生。
1分経つ頃には全員地面に転がっていた。
フレデリクは校長は近づくたびに距離を取って巻き込まれないように逃げていた。
「戦わんのか?」
「いや、階層主を相手に単独で戦うのは嫌だから協力したかったんだけど、声を掛けようとする間もなく周りの生徒を倒しちゃうからさ」
「残りは貴様だけだ…ぞ!」
「おっと」
魔力を込めた刀身を振るい斬撃を飛ばしてくる。フレデリクは同じように魔力を込めて斬撃をぶつけて無効化させる。さらに縮地法で距離を詰めて来るが、フレデリクは逆に縮地法で剣閃をかわす。
フレデリクが右手で剣を持つと、フェルディナント左側から攻め込んでくる。
「<ストーンソード>」
フレデリクは右手で神授の聖剣を持ち、魔法で作った石の剣を左手で持ち逆にカウンターで仕掛ける。
「ふんっ!」
校長は魔法の剣を砕いて第二撃目を放ってくるが、そっちは右手の聖剣で受ける。
「ぬるいわ!ヴォルフの息子はその程度か!?」
「僕は父みたいな化物じゃないので。<地雷>」
地より雷を空へ向けて放つが、とっさに大きく跳んでかわす校長。対人でこれをかわされたのは始めてだ。アルノルトもレオンも初見では見事に食らって一撃KOだったんだけどな。
「俺を誰だと思ってる?その手の嵌め手、ヴィルヘルムに嫌と言うほどやられて来たわ!」
「あ、そっちの経験者か。やっぱり僕が思いつく魔法の使い方なんて、領主様が思いついて実践するよな」
「そろそろ詰めるとするか」
にやりと笑った校長は右手を前に出す。
フレデリクは何かの技かと怪訝に思うが何かが起こる様子はなかった。
「ほう………。さほど力を感じぬから簡単に取り戻してやろうと思ったが、聖剣はお前を選ぶか。とすると、このフェルディナントを相手に手抜きをしているという事か。面白い、本気を出させてやろう!」
校長は何やらぼそりと呟いてポイッと木刀を捨てる。
そして、何故か校長はやる気を出して、背中の長刀を抜く。まさしくメインウエポンを取り出したようだ。
「そういうのは父さん辺りだけにして欲しいですけど」
「いないのだから仕方なかろう!」
フレデリクは父の後継者になれるほど剣の才能は無いと思っている。
一足飛びでフレデリクに迫るフェルディナントは剣撃叩きつけて来る。フレデリクは受け流すように全てを受けつつ流して威力を殺す。
攻撃速度が上がっていくので、フレデリクもそれに合わせて攻撃を流し続けるしかない。
実力的に見れば、腕力はアルノルトさんより低いし、一撃の重さもそこまでもない。しかし、速度、技巧、更にはこちらの防御を破ろうとする不規則な剣筋の流れとリズム、全てが1~2段階は上にある。
これが剣聖、これが帝国最強の剣士か。
フレデリクは翻弄されながらも、かつてない技巧を前に感心をしていた。
「防戦一方だぞ、小僧!その程度か!ならばそろそろ終わらせるが!?」
「調子に乗るな。<電気網>」
攻撃を受けつつ電気の網を張って防御する。
パアンと激しい音が鳴り、校長は一歩引く。
「なるほどな」
右手が少し痺れた様子で、右手をぎこちなく開いて閉じてを繰り返し、左手で剣を構えながらフレデリクを警戒する。
「魔法剣士などどっちつかずの器用貧乏が成るものと思ったが、お前レベルが踏み込むとこれほど厄介とはな」
「相性の問題じゃないですかね。校長を打倒すると言っていたアルノルトさんは、明らかに校長に対して相性が悪そうだけど、僕に対しては強引に肉弾戦に持っていく力と速度がありましたから、割と毎日泣かされてましたし」
「アレに会ったか」
「火竜王への報復の旅をしてた時、2年ほど仲間として過ごしましたが……。父の知り合いだと知ったのは旅が終わった後ですね」
「なるほどな。火竜王討伐の真実はそれか。」
「さあて、紅鳳騎士団がパレードしてましたけど」
「たわけ。ああ、やっと見えてきた。やはりお前はヴィルヘルムが育てたヴォルフのガキだ。本気で行くぞ。ついてこれるか?」
ドンッ
一瞬で視界から消えると、フレデリクは背後に殺気を感じて慌てて防御に入る。
激しい金属の打撃音、ほぼ偶然だが斜め後ろから迫る剣撃を受け流せた。が、姿が見えない状況で今度は左から剣撃が飛んでくる。受け止めようとするが力に押されて吹き飛ばされる。
見えない相手と戦う状況になりフレデリクは困惑しているが、この手品の種は知っている。父が使えるからだ。だが、分かっているイコール対処可能とは言えない。
弾かれて倒れそうになり、地面についた手をついて堪えようとするが、校長はそこを狙ってきたので、手をつかず体を翻す。
「<空中浮遊>」
フレデリクは魔法で体を浮かせながら宙で転がり、低い剣閃が通り過ぎる。
「いやはや、まさかとっさに魔法で身を護るとは。自然に手足のように使う魔法使いなど帝国に5人といるまい。だが、殺気を感じとれても我が技の前に手も足も出まい」
言われている通り、実際、手も足も出ない。わずかな殺気を感じてかわすのが精々だ。
気配を消したうえで縮地を使う事で完全に視界から消えるという最悪の技に昇華させたことが分かる。だが攻撃する際にはどうしても殺気が漏れるの。そのお陰でフレデリクがギリギリで防御が間に合った理由でもある。
更にフェルディナントの攻撃は激しさを増していく。フレデリクは相手の膂力と速度にそろそろ対応が厳しくなってきていた。
フレデリクは小さく相手に分からないよう溜息を吐く。
仕方ない。犠牲は最小で終わらせるか。
手数が回らなくなってきたフレデリクはフェルディナントの斬撃の嵐を抑え込みに行く。
「おおおおおおおおっ!」
咆哮を上げてフェルディナントの斬撃を撃たせる前に剣を弾くように叩きに行くが、目にも止まらない超速攻撃の嵐の中で、まさかフェイントを入れてきたのだ。
流石にフレデリクは止まれない。
バランスを崩した所をフェルディナントは脳天にめがけて剣を振り下ろす。
フレデリクは剣を持った右手でその攻撃を敢えて右手を切らせて斬撃を体の中心からずらして避けるのだった。
剣を持った右手だけが空を舞う。
「終わりだ。………!?」
フェルディナントはそう言ってフレデリクを見下ろすが、フレデリクを見た瞬間、その顔が驚愕に染まる。
フレデリクは左手にナイフを持ち換えて既にフェルディナントの首筋に押し当てていたからだ。最初から聖剣を持つ右手を捨てる積もりだった。相手にとって決定的な一撃のつもりが、決定的な隙を作らせたのだ。
「終わりですね?」
「くっ…………ハハハハッ!そうだな。100点満点をやろう。実力が低くても勝つ。」
大笑いする校長に僕は小さく溜息を吐く。校長もアルノルトさんと同じ脳筋なのだと
理解させられる。
「ヒルデガルト君、彼の腕を……」
フェルディナントはヒルデガルト声をかけるが、
「必要ないですよ」
フレデリクは落ちている手を拾い、握ったままの聖剣を左手で持ち、<空中浮遊>の魔法で切られた右手を持ち上げ、傷口に合わせる。
「<欠損復元>」
僕は神聖魔法で腕を繋げる。
「ほう、神聖魔法もつかえるのか」
「魔法の仕組み自体は母から習っていましたから。魔法能力がついてきたのは最近なので、最近覚えたものですけどね」
「神授の聖剣が選ぶわけか」
ふむとフェルディナントはフレデリクの持つ聖剣を見る。
「これですか?」
「それは、所有者を選ぶという。その時々で最も相応しい英雄の手元に流れ着く。俺は修行の旅に出て剣聖の名と共に先代鬼人王より貰い受け、レーベンベルク伯になる際に帝国に献上した。後に帝都の英雄となったヴォルフが手にしたものだな」
「鬼人王から?」
「鬼神王が亡くなり後継者不足で手に取れる者がおらず、俺が御前試合で鬼人の剣聖と戦って勝利した際に褒美として貰ったものだ。扱える者ならば持って行けと言われてな。帝国に渡したのは帝国が管理するべきものだと思ったからだ。しかし、その資格を今の帝国があるとは思えないがな。だが、聖剣はあっさりとヴォルフに渡り、ヴォルフは西部ダンジョン攻略に王手をかけたという。相応しい者が相応しい者に渡り歩くのが神授の聖剣だ」
「これ、そんな凄いモノだったんだ。対して切れ味良くないのに」
「魔力を込めれば固く強くなる」
「ああ、だから火竜王がポコンポコン父さんに叩き飛ばされてたのか」
ドラゴンを切れなくても大打撃を与えられると。
「リンノイトゥスは火竜王に滅ぼされたのだろう?あいつらはどのように戦った?」
校長はどこか寂し気に話を変えて来る。僕の呟きを聞いたのだろう。
「領主様は民を守り亡くなりました。両親も民を守り、僕を守ったが為に亡くなりました。父であれば恐らく僕を見捨てれば倒せたか、倒せないまでも追い払えたはずです。父と領主様が守る者もなく2対1で戦っていれば必ず勝てました。僕が火竜王にとどめを刺した魔法は領主様が賢者になった切っ掛けである雷魔法LV10<雷龍牙>でしたから。皮肉ですよね、何もかも奪われ、守る者を失っただけで彼らより弱い僕が、火竜王を殺せるなんて」
「そうか。民を、大事なものを守る為にその身を犠牲にしたか。納得した」
大きく溜息を吐く。
「納得?」
「ヴィルヘルムは常にルミヤルヴィの民の為に行動していた。冒険に出たのは力のある自分を次期領主に担がれない為、そしてダンジョン攻略の一助となる為。父や兄が亡くなったと聞けば仲間と泣く泣く別れて実家へと戻ったという。最後までアイツはルミヤルヴィ王国の王族として生きて死んだのだな。あのわんぱくだったヴォルフが民の為、息子の為に命を使うなど信じられん。帝都の連中、無様に負けたと喜んでいたが、俺はあいつらを誇りに思う」
「……ありがとうございます」
「何より、アイツらの魂を受け継ぐ者をこうして残していたのだ」
フレデリクの頭をグシャグシャとなでてからフェルディナントは去っていく。
もちろん、フレデリクは父の残した宿題を自分が片付けるつもりだ。西部迷宮攻略はフレデリク自身で必ず成すと決めている。
その為に、地獄迷宮とも言われるヘレントルのダンジョン、父が言っていた最も深く最も悪辣なここを一度体験しておく必要があると言っており、ここを経験する為に学校に来たのだ。
ピヨッ!?
あとがき担当のヒヨコだぞ!ピヨちゃんと呼んでくれ!
安いもんだ、腕の一本くらい。ヒヨコ界の四皇赤髪とはヒヨコの事だ!
さてあとがきが始まってしまったぞ?タスキに男って書くのか?もしや彼はタスキに名前を書いているヒヨコの仲間かな?
え、まだ書いていない?それじゃあ、ヒヨコの仲間にはなれんぞ?
それにしても、ヘレントルダンジョンか、何もかもが皆懐かしい。何て悪辣なダンジョンだろうか。ヒヨコは罠にはまって酷い目にあった。皆に笑われる羽目になったのを今でも決して忘れない。ヒヨコがうかつだったのではない。きっとダンジョンが悪辣だったのだ。
ぶっちゃけダンジョンマスター自身も、『どないしよ、やり過ぎて止められへんねん』みたいな気持ちだったのではないだろうか?
次回、ヒヨコ伝説『ありふれたヒヨコで世界最凶』でお送りするぞ!この次もサービスサービス!(三石●乃風)
※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。




