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雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第1章 雷華の騎士とルミヤルヴィの姫
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6話 ルミヤルヴィの戦争⑪ 天地雷華

 フレデリクは焦っていた。魔物によって城壁が壊れてそこから兵士たちがなだれ込んでいる状況に陥っていた。しかも遠くスタンピードの余波で多数の魔物が奥から押し寄せつつある。城壁を壊した巨大なモンスターはいないが非常に厄介な状況だった。


 魔力温存していたが、多少厳しくても風魔法で飛んで駆け付けるべきだと判断した。


 巨大なモンスターは焼け落ちているから白狼騎士団の魔導師辺りがやったのだろうが、大魔法を使って魔力が枯渇しかねない。戦力はかなりない筈だ。何せ森の奥にはそれ以上の魔物がひしめき合っているのが見える。

 彼らは他領との戦争に介入する余裕はない筈だ。


 これは完全な失念だった。


 フレデリクはハッキライネンとチェスを打っているイメージで戦っていたが、そもそも大前提を間違えていた。リンノイトゥスでスタンピードラッシュが起きていて、完全に食い止めることが難しいのは知っていた。何が起こるか分からない状況だったのに、籠城すれば持ちこたえられるという謎の信頼をしていた。

 とんでもない馬鹿野郎だ、平和ボケしているのは誰でもない自分だったとフレデリクは突きつけられていた。ルトガーとゲオルクの二人がいれば多少なら大丈夫だと言う甘い考えをどこか持っていたのだ。

 大急ぎでアレクサンドラの元へ向かわなければならない。


 超高速で空を飛び、空をからランジランタ城の前に着地する。襲い掛かる敵兵を片っ端から首を落として走って城内へと向かう。

 幼いころの記憶を頼りにニクライネン伯の居るだろう場所へと向かう。リンノイトゥスならともかく、ランジランタの構造も偉い人がいる場所もよく分かっていなかったからだ。

 途中で剣を持って襲い掛かる敵を蹴り飛ばし、剣を持っていると走る速度が遅くなると気付き、腰に提げて大急ぎに目の前の兵士たちを殺しては走るを続ける。


 素手で相手を殺すから今度は血まみれになってしまうがそれ所ではない。フレデリクからすれば剣で殺すも拳で殺すも速度に大差ないので武器を腰に下げたまま、とにかく走る。

 大勢が一斉に襲い掛かって来るが、フレデリクは走る速度を止めず、爪に魔力を伸ばして通りすがりに急所を切り裂いて血の花を咲かせる。

 冒険者時代の最初についた字は暗殺者殺しという物騒なものだった。貴族の護衛をして暗殺者を全て返り討ちにし、更にはギルドをも壊滅させた為についた字だった。


 必死に走るフレデリクだが、それでも目に付くのは侵入者たちに殺された男の死体と犯されている女。まさに敗戦国に訪れる略奪と強姦がこの城で吹き荒れていた。

 フレデリクはそれを見過ごすことが出来ないので多少遠回りしても目に付いたら通りすがりに叩き殺し続けるしかなかった。


 故にフレデリクの通った後に兵士たちの死体が大量に転がる事になる。


「くっ!離せ!!サーシャを守らないと」

「黙りな嬢ちゃんよ」

「お前は俺らを満足させてもらわないといけないからな」

「これだから戦争は止めらんねえぜ」

「こんな戦場で良い体してるお前が悪いんだぜ」

「次は俺だぞ!」

「分かってるって。良い乳してやがる」

 男たちは欲望にかまけてニクライネン家の兵士らしき女性に襲い掛かっていた。上半身を露出している女性は必死にもがいて逃げようとしていたが、武器もなく大勢に組み敷かれて暴れるだけだった。


「アレクサンドラ様を探して忙しいのに盛ってんじゃねえ!このサルが!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 股間を露出しようとしていた男の股間を、尾てい骨ごと踏み抜く。

「て、てめえ、な」

「軍人なら口より先に手を出せ無能!」

 慌てて戦闘態勢になろうとする男たちだが、その前にフレデリクが一人の男の顔面を前蹴りで壁に叩きつけて物理的に頭を蹴り潰す。

「僕はな、欲望丸出しのサルを見ると皆殺しにしたくなる性質なんだ!さっきから忙しいのにあちこちで使用人やらに手を出すクソ虫共が僕の視界に入るな愚鈍!」

 剣を抜いて切りかかる男だが、その剣の腹を手でつかんでそのまま無防備な所を膝蹴りで鎧を凹ませ、兜をねじって首を一緒にへし折ってしまう。

 最後の一人を蹴り飛ばして鎧を凹ませて胸が潰れて動かなくなるのだった。もはや人間の所業でもなかった。


「すまない。アレクサンドラ様達はどこに?まだ生きてるよね!?大丈夫だよね?大丈夫だって言って!?」

 フレデリクは若干涙目ですがる様に助けた女性に問う。ほとんど懇願している様子に少女はうっかりアレクサンドラのいる場所を口にしてしまう。

「あっちの兵士が立ってる部屋…。早く行かないと…」

「ありがとう!恩に着る!」

 大慌てでフレデリクは走り出す。


 助けられた少女、サラは脱がされた上半身を戻しながら息を吐く。

「凄い子ね。私より馬力のある子、初めて見たわ。サーシャの友達?いや、私も早く行かないと」

 サラは我に戻って去っていったフレデリクの後を追う。この時、サラはまだフレデリクを男だとは思って無かったので、上半身を晒していたがあまり気にしてなかった。今まさに上半身が裸なのに気付いて慌てて破れた服を結んで胸だけを隠して追いかける。




***




 フレデリクは部屋に入ると目の前には3年前とさして変わらないエメラルドブロンドの少女がそこにいた。

「申し訳ございません。アレクサドラ様。フレデリク・ズワールト、遅ればせながらただいま帰還いたしました」

 フレデリクは敵をすべて制圧すると同時に、アレクサンドラに跪き恭しく首を垂れる。

「生きてたの?リッ君」

 ヘンドリカは驚いた様子で口にする。

 アレクサンドラはフレデリクを見て、どこか不満そうに見ていた。

 何か怒ってる?遅すぎたのだろうかなどとフレデリクは考えて悩むとアレクサンドラは頬を膨らましてフレデリクに言う。

「アーちゃんでしょ、リッちゃん」

「そっち!?いや、ここ内々じゃないよ。ぶっちゃけ戦場真っただ中だよね?」

 フレデリクはあまりにもいつもの台詞を吐くアレクサンドラに慌てる。3年も連絡を折らなかった事とか突っ込み所がたくさんあるのに、不機嫌な理由はそこだけなの?流石に困惑していた。

 そんなアレクサンドラの対応にヘンドリカは苦笑する。

「ずっと生きてるって、アレサだけは信じてたの。いつも通り呼んであげて」

 その言葉にフレデリクは力が抜ける。

「ごめん、アーちゃん。ただいま」

「うん」

 アレクサンドラはフレデリクに抱き着く。

「驚いたな。まさか本当に生きてたとは」

「まさか本当に火竜王に復讐しに行っていた訳じゃないでしょう?」

「え?………あー、んー……殺してやる事なくなってどうしようかなって時に冒険者ギルドにいたらヴァイスフェルト家の令嬢にあってね。まさか自分達が殺した火竜王の褒章を、ただのゴミ片付けに来てた騎士団が貰うらしい上にアレクサンドラ様……アーちゃんを妾に貰うだとかアホなこと言ってるらしくて」

 フレデリクは目を泳がせながらしどろもどろに説明すると

「蛙の子は蛙というか、狼の子は狼だったわね」

 あまりの事実にヘンドリカは苦笑しか出なかった。

 火竜王を殺した偉業よりこっちを知ろうとしなかった事に怒られると思って、しどろもどろなフレデリクの姿が昔と何も変わってなかったからだ。


「リューネブルクの件を片付けて、ランジランタは籠城してるだろうから暫く大丈夫だと思ってね。カイヴォスを襲撃した紫鷲騎士団を滅ぼして、戦後処理をヴェルザー伯に押し付けてからこっちに駆けつけてきたの。スタンピードラッシュの余波で人対人じゃなくなっているとは思って無かったからさ。焦ったよ。完全に計算ミス。いやスタンピードラッシュを止めることを第一にすべきだったか。そうすればカイヴォスに白狼を派遣できたか。微妙だな、どっちにしても」

「………私たちの抱えてた問題をほとんど解決してきたの?」

 ヘンドリカはフレデリクのやって来たこをと把握して驚いたように視線を向ける。

「いや、………これからですね。ランジランタはハッキライネン軍に完全に落とされてるし、スタンピードの漏れた魔物もこっちに流れて来てる。状況は酷く拙い」

 ヘンドリカの問いにフレデリクは苦々しそうに答える。

「これからという事は解決する策があると?」

「スタンピードのモンスターを殺しつつ、それを使って脅し、彼らを無理やり引かせることにする。これでも3年の放浪期間で父さんや領主様にはかなわなくてもそこらの有象無象には負けない程度にはなったからさ」


 フレデリクは首に提げてる赤い冒険者証を見せる。

 それを見てニクライネン伯爵夫妻もヘンドリカも驚く。

 迷宮攻略相当の偉業を果たした冒険者の証。この国において貴族相当の証明でもある。

 フレデリクは木枠の窓を開けて、城の外の壁をするするとよじ登って城の頂上へと向かう。

 窓からフレデリクを見上げる一同は何をするのかと思ってみていた。


 フレデリクは最初から決めていた事だ。


 空に手を掲げて魔力を集中させる。莫大な魔力を要するが、<雷龍牙(インロンファング)>よりは魔力消耗が少ないし命の危険も少ない。だが、効果範囲と威力に関しては人類の頂上ともいえる大魔法。ヴィルヘルム・ルミヤルヴィが編み出した雷魔法LV10、雷華の賢者の名の由来となった魔法を使う積りだった。

 これで全魔力を使い切るだろうが、フレデリクはそれが全てに対してチェックメイトになると心の中で呟く。


 空がゆっくりと暗くなっていく。その規模は視界に移る空の全てがだった。

 空からは雷鳴がとどろき始める。


「ま、放つコースが分かっていれば逃げられるだろ」

 フレデリクが持つのは自分を鍛えてくれた年長の騎士達に対する絶大な信頼があるから出来る事だった。


 雷華の賢者ヴィルヘルムより魔導の知識を伝えられ、要請の英雄ミロンから必要な魔力操作能力を教わったフレデリクにとって最新の異名となったその魔法のを唱える。


「<天地雷華(ライトニングフラワー)>」


 雷雲が空を深く埋め尽くし、地平の先まで闇夜のように世界が黒に染まる。そして空に雷が鳴り響きだす。ランジランタの南の空から凄まじい雷の光と轟音が鳴り響く。


 暗闇の中で雷の華が空に咲き誇り、花の茎の様に雷の竜巻が天と地を巻き上げ続ける。雷の花が向かうのは南西方向。向かうは西部迷宮。

 耳がつんざく様な轟音が鳴り響き続け、世界が雷光によって照らされる。




~西部迷宮前~


 スタンピードラッシュに対応している元白狼騎士団を中心にした領兵達は突然の異変に慌てる。

「何が起きた!?」

「分からん。空が暗くなって空に……おいおい、あれは」

「何が……ああ…」

 兵士たちは魔物討伐に必死になって戦っている中、未だ倒せないキングサーペントの群れの足を止める為に決死の戦いを強いられていた。キングサーペントを止める為に雑魚は全て無視している状況で大量の魔物が既に北へと向かいだしている。それでも止めなければ大惨事になってしまうからキングサーペントを止めようと戦っていた。

 だが、彼らにとってあまりにも見覚えのある光景が北東方向に広がる。

「領主様は死んだ筈だ。だが、アレは…」

「超広域殲滅魔法<天地雷華(ライトニングフラワー)>!?」

 大魔法の発動を見て戦慄する。

 だがこの場で最も冷静だった男が珍しく大きく焦った声を上げる。

「全員撤収!撤収だよ!死にたくない奴は東へ!リンノイトゥス跡より東だ!」

「え、何で?」

「使い手が未熟だ!多分あれ、ヴィルヘルム様と違って制御されて無い!魔物と一緒に焼け死ぬよ!」

 ルトガーの指摘によって全員が顔を見合わせてそのヤバさに気付く。

 当然だが、全員が魔物を放って慌てて逃げ出す。




 大領の魔物を放置しつつ、それでも縋る魔物を殿を務めるオットーが切り捨てる。そして東へ逃げながら雷の花を見上げる

「誰だ、領主様の真似事など……」

「僕らが気付けなかったら皆殺しだったろうに、無茶をする。僕らをよく知る未熟な雷魔法の使い手だったのかな」

「そんな奴、知りませんよ」

 オットーはルトガーの言葉に呆れたようにぼやく。

「でも、あれはそのまま西部迷宮に進撃してる。スタンピードラッシュも終わりに差し掛かっていたし、これで打ち止めになるんじゃないかな」

「確かに……あのままサーペントと戦ってたら次のスタンピードで死者が出かねませんでしたし」

「ハッキライネン軍を止めに行かないと嬢ちゃん達の方も危ないんじゃないのか?」

「俺らが行けば戦争は止まるだろ」

「いや、恐らく今の魔法で終わるよ」

 ルトガーは苦笑して空を見る。

 超広域殲滅魔法はその気になれば国一つを滅ぼせる雷華の賢者にとって切り札だったからだ。




***




 雷の嵐は迷宮へと進み、流れて来る魔物も、西部迷宮付近で蠢いていたませる巨大なキングサーペントの群れも雷の嵐が呑み込み黒い消し炭となって滅び去る。

 さらに雷の花は西部迷宮の上で大きく美しく咲き誇り、同時に轟音が耳を劈くほどに響き渡る。

 雷華は迷宮をも襲撃し、電撃が送り届く範囲すべての魔物を殺し続ける。

 恐らく、スタンピードラッシュももう終わるだろう。雷の華が通り過ぎ、後には何も残らない。魔物の群れは黒い消し炭となって朽ちていた。



 全てが沈黙したのちにフレデリクは拡声魔法を使って注意を引く。


『私は紅玉級冒険者、雷華の騎士フレデリク!ヴォルフ・ズワールトとザシャ・フォン・ローゼンブルクの子フレデリク・ズワールトだ!』

 その声は戦場のみならず響き渡る。避難したリンノイトゥスの方にいる領兵たちはその声に驚きを隠せなかった。

 ランジランタ市民になったリンノイトゥスの元住民たちはその名を聞いて驚く。あの子が生きていたんだと涙ぐむ。


『ハッキライネン軍に告げる!戦争を辞めて降伏せよ。さもなくば我が雷華は、戦場にて貴軍の空で咲き誇るだろう!』


 フレデリクの声は響き渡りハッキライネン伯爵は呆然とする。

「ふ、ふざけるな!今更勝ち戦を辞められるか!」


 そう叫ぶが武器を捨てて祈りを捧げる多くの農民兵たち。

「帰って来たんだ」

「ヴィルヘルム様の雷だ」

「無理だ。ヴィルヘルム様に逆らっちゃなんねぇ」

「伯爵様に許されなくても、あの雷を敵に回すよりましだ」

 無理やり連れてこられた農民兵達が武器を捨てて祈る様に膝を突く。この領地における30代以降の領民にとってヴィルヘルムは紙にも等しい存在だった。

 傭兵は真っ先に逃げ出す始末だった。あんなのが自分達に来たら全滅は確定だ。明らかに勝てない相手に喧嘩を売るバカはいない。あんな大魔法を自分達に向けられたらと思うだけで逃げる選択以外考えられなかった。

 たった一つの魔法で崩壊するハッキライネンの正規兵達もそれを見て心がへし折れてしまう。魔物の群れを薙ぎ払う雷華を見た事がある者なら尚更だ。自分に向けられると聞いた瞬間、武器を捨てるしかできなかった。


「馬鹿な!貴様ら!もうほとんど陥落したも同然で……奮い立たんか!」

 ハッキライネン伯も他の反乱貴族達も声高に叫ぶがそれに応える人間は皆無だった。

 もはや占拠するのも時間の問題だった状況が一つの魔法で状況がひっくり返り、兵士全員の心がへし折れてしまいう。ハッキライネン伯は地団太を踏んで怒鳴り散らすしかできなかった。


「伯爵。無理ですよ。あの魔法を見せられて戦える人間はいません」

「そんな……あと少しだったのに。辺境伯の……大貴族の座が……」

 空を見上げて呆然とするハッキライネンは膝を突いて愕然としていた。

 ハッキライネン連合軍は空に雷の華が咲き誇ると同時に、戦意喪失して瓦解した。

 ピヨッ!

 あとがき担当のヒヨコだぞ!ピヨちゃんと呼んでくれ。

 今日の都合で魂を売った人々の決定などは明日にも崩れ去るものさ。ヒヨコ界の赤い彗星と呼ばれたヒヨコの名言をここで送ろう。え?違う人だって?ヒヨコの記憶にはない話だな。

 おい、本当に欠落してるから仕方ないなとか言わないでくれ。


 天地雷華、それはヒヨコ伝説を作りにあたり、作者が各属性LV1~10まで作った魔法名称にある魔法の一つで、ヒヨコではと使われなかったある意味で幻の魔法だ。

 ヒヨコは雷魔法LV7だったからな。残念ながら使えないのだ。


 何でヒヨコは雷魔法のLVが低いかって言われても……

 おい、あの魔法はち密な計算が必要だからヒヨコの頭では無理だなんて言ったの誰だ!?

 魔力の使い方とか変質させる才能とか色々とあるんだ。ヒヨコが火魔法&神聖魔法に特化していただけだからな。ホントだぞ?


 こほん。では次回予告だ。

 次のピヨちゃんは『異世界のんびりピヨちゃん』でお送りするぞ。地球でのんびりするヒヨコのスローライフ姿が思い浮かぶぞ。だからニートとか無職ヒヨコ~鳥になったら本気出す~とか呼ぶでない。さっきから茶々を入れるのは誰だ!?


※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。

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