表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第1章 雷華の騎士とルミヤルヴィの姫
22/44

6話 ルミヤルヴィの戦争⑩ ~アレクサンドラ・ルミヤルヴィ~

 フレデリクはボーデンフェルトを後にして再び高山を登る。

 魔力を使って1日で山の中腹で一泊する。そこからエルッキと再会した高い場所からランジランタ方面を見る。

「!?」

 フレデリクが予想していたランジランタの状況は一変していた。まさか籠城はが決壊していた。紅玉級レベルの敵がいるのかと目を細めて見るがそれ程強力な人間の魔力反応はない。そもそもそう言う相手がいなかったからこそ安心して後回しに出来たのだ。


「拙い!何故だ!?」


 フレデリクは過去最大級に焦り走り出す。下りは着地が出来れば魔力が無くても一気に進めるのだ山猿の如くジャンプしながら一気に崖を下っていく。


 そしてランジランタの南側、こちらから見ると微妙に死角になっている場所に巨大な魔物の死骸が城門を崩して倒れていた。


 スタンピードラッシュで抜け出した凶悪な魔物が城門を破壊したため籠城が崩壊した。しかもそんな状況でもランジランタ攻めを敢行するハッキライネン軍に心から腹を立てる。

 魔力回復なんて言っていられない状況が差し迫り、フレデリクは最後にジャンプして山を越えると風魔法LV7<飛翔(エアフライト)>を使って一気に空を飛ぶ。

「間に合ってくれ」


 フレデリクは自身の間抜けさに後悔する。

 敵はハッキライネン軍だけだと思っていた。

 スタンピードラッシュ中だから領軍が使えないと言うだけの認識をしていた。元白狼の皆なら大丈夫という無意味な信頼をどこかでしていた。

 スタンピードラッシュで父やヴィルヘルムがいた時代でさえ魔物の群れを抑えきれず、自分達子供達が外で魔物の集団に襲われて、子供の頃にたった一人で囮になって魔物と戦った事がある癖に、何で彼らが全部抑えきれるだろうという前提を勝手にしていたのか。

 周りの人間を平和ボケと心の中でだきしておきながら自分が父と領主様に守られて平和ボケしていた事実を突きつけられていた気分だった。




***



 時は遡り、アレクサンドラがランジランタに戻り籠城を始めてから1週間が過ぎる。

 食料ストップが懸念されていたが、御用商人の一つでもあるミュラー商会から食料調達が出来たため辛うじてライフラインを保持していた。

「アレサ様。まだお外に出ちゃダメ?」

「危ないからね。ごめんね」

 アレクサンドラは小さい子供にしがみ付かれて困ったように返す。

「こら、エリサ。我儘を言わないの」

「だってぇ」

「申し訳ありません、アレクサンドラ様」

「子供は外で遊びたいのは当然ですから。ご迷惑をおかけします」

「そんな」

 母親はぺこぺこと謝りつつ、食料配給で食事をアレクサンドラ達から貰って、娘を連れて去っていく。

 アレクサンドラは頭を下げて彼女達を見送り、次の食糧配給を貰いに来た人に食事を渡す。


「あーあ。ヴィルヘルム様が生きてた頃ならな」

「ドラゴンなんかに負けるからだ。所詮祖父さんだって事だろ」

「ほんと、しっかりしろよな」

「何が英雄だ役立たずじゃん」

 若い男たちがぐちぐちと文句を言って奪い取る様にアレクサンドラから食事をとって帰ろうとする。

 隣にいたサラが怒りに任せて背にある剣を手に取るがアレクサンドラは押しとどめて首を横に振る。

「腹立たないの?」

「弱いのが悪い。お父さんならそう言うから」

 妥協を許さず強者でなければこの土地を治められないのだと。高潔すぎる生き方は力があって初めて成立する。

 アレクサンドラが迷惑を掛けますと食料配給の手伝いをしながら、一身に民の不満を聞いていた。

 この食糧配給もリンノイトゥス崩壊の為に未だ城壁の外に住む人間が多くいたため、仮設テントで暮らす元リンノイトゥス住民を含み住民たちの為でもあった。


「馬鹿もんが!貴様ら!領主様を何と心得ておる!」

 すると小柄な老人が怒り狂って若者たちに杖で殴り掛かるのだった。

「って、何すんだよ、ジジイ」

 だが、若者相手に老人では全く歯が立たず、蹴り飛ばされて地面に倒れる。

「俺らの言ってることが間違ってんのかよ」

「いっそ今の領主を突き出せば外の領軍が攻めるのを辞めんじゃね?」

「金をたくさんもらえたらなー」

 ゲラゲラと笑って倒れた老人を歯牙にもかけず去っていく。

「大丈夫、爺さん」

 サラは呆れたように老人に手を貸す。

 流石に男嫌いでもよぼよぼの老人まで毛嫌いするほどでは無かった。それを見ても誰も止めないしどこか諦めたような冷たい眼をしている避難民達だった。

「情けない情けない」

 おいおいと泣く老人にサラは溜息を吐く。

「実際、ハッキライネン軍が攻めてきたのは姫様方が失政してからでしょ」

「私達の自由を返して欲しいわ」

 ぼそぼそと苦情をアレクサンドラに聞こえているにもかかわらず文句が漏れていた。

「ワシ等の幼い頃は半分以上の人間が15歳まで生きられんかった。皆、魔物の餌じゃった。スタンピードラッシュで十年に一度は国が滅びかけ、古い貴族は大半が死に絶えておる。ヴィルヘルム様が帰って来て死に物狂いで領地に尽くしてくれたから平和に暮らせるようになったというのに……。守られていた人間が守ってくださった英雄に文句だなんて、なんて情けない領民なんじゃ………」

 涙を流して悔しさを吐露する老人に、サラはこの国の歴史を理解してしまう。ヴィルヘルムのやって来た事は領地そのものを変えるような事だった。地獄を平和ボケな人間ばかりに変える程の改革だ。老人たちと若者の間でここまで考えが違う事に、その凄さを思い知らされる。


 そう言えば、爺さんが王になる前はあちこちで戦争が起きて老人たちは誰も彼もが戦争経験者だと聞いていた。メルシュタイン王がいたから平和に暮らせると感謝していた。

 だが、今は後継者不在で若い連中は先行きの不安で文句がよく聞こえる。


「メルシュタインと変わらないって事なのね」

 サラは地元とここが似ている事に溜息を吐いてしまう。必死に父の作った平和を崩すまいと戦うアレクサンドラの姿を見て少しでも力になりたいと思うのだった。


 すると兵士の一人が走ってアレクサンドラの方へとやって来る。

「どうしたの?」

「ハッキライネン軍がこちらから急いで距離を取ってます。リンノイトゥスの方で何かあったようで」

 すると遠くから一人の男が空を飛んでこちらの方へ近づいて来るのが見える。

 元白狼騎士団長ゲオルクだとすぐにアレクサンドラは気付く。


「申し訳ない、スタンピードを抑えきれず、1体大物を逃しちまった!南側は魔物の群れがこっちに届く!避難させてくれ!」

「!?………何を逃がしたんですか?」

「キングサーペントだ。続けざまに10体も出て来て流石に手に負えずどうにか他の9体は抑えたが、それでもギリギリだ。どこで決壊するか予断出来ない状況だ。1体ほど脇から抜け出して止められなかった。申し訳ない」

「はあ!?キングサーペントって街喰らいの化物じゃない!」

 サラは思わず声を上げる。10体なんて国が亡びるレベルだ。

「ハーパネン卿、今すぐ警鐘を!南部の住民は北方に逃げるよう避難を呼びかけて!スタンピードが来ます!ゲオルクさん、申し訳ないけどランジランタ軍は各警戒を続けたまま、手空きのものは全員南広場に集合するよう声をかけてから戻ってください」

 アレクサンドラは普段の眠そうなぼんやりした姿ではなく、領主としての姿に切り替える。その指示は的確だった。

「戻って良いのか?」

「元白狼騎士団の人達が漏らすような相手でしょう。向こうはもっと大変な筈。一体だけならここは私の魔法で堪えられると判断します」

「……子供子供だと思っていたが、やっぱりヴィルヘルム殿の娘だな」

 ゲオルクは苦笑してから<エアフライト>の魔法で空を飛んでこの場から去り他のランジランタの衛兵へ声を掛けに向かう。

 即座に警鐘が鳴り響き衛兵たちが南で避難誘導を始める。

 アレクサンドラは南へと走り出し、サラはそれについていく。

 アレクサンドラはサラや居残り組の兵士たちと共に、南の城壁に登って南部を見るとリンノイトゥスの西側の森から巨大な化け物が蠢いていて、一体が体中に傷を負いながらこちらへと進んでくる。その魔物に続いて魔物の群れが続く。


 サラは絶句する。

 あまりにも巨大な魔物の姿に。ランジランタの城壁と同レベルの巨大な体躯を持った蛇が多くの魔物を引き連れてやってくる。だが、それ以上に驚かされるのは、もっと巨大な影が無数に森で蠢き数百人で剣と魔法で足止めをしている事だ。

 白狼騎士団は化物集団という噂は本当だったのかと理解する。そしてあの一体の為に戦線を崩すのは悪手だというアレクサンドラの判断は間違ってないと思ってしまう。

「アレクサンドラ様、手すきのものは集めました」

「ありがとうございます。これより西部迷宮で撃ち漏らした魔物討伐を開始します。弓隊

は全員で向こうに見えるキングサーペントに攻撃を。他の者達はキングサーペント以外の魔物を。魔法部隊は私の魔法の後のつなぎで援護を。詳細は隊長さんに任せます」

「はっ、分かりました」


 徐々に近づく魔物の群れ、それを率いて現れるのは城壁と同じくらいの上体を起こして近づく巨大なサーペント。近づく程のその巨大さはリアルになり、兵士たちは顔色を変える。

 ヴォルフがいた頃はこの手の魔物がランジランタまで来ることさえなかった。白狼騎士団の功績は大きい。

 恐怖で震える兵士達だが護るべきお嬢様が戦場の真正面に立っているのに逃げる訳にもいかない。

 アレクサンドラは魔力を練って魔石の嵌った杖をキングサーペントに向ける。頭ではなく、足元に向けて呪文を唱える。

「<爆発(エクスプロージョン)>!」


 轟音を上げてキングサーペントは体をゆっくりと地面に倒れる。兵士たちは歓声を上げるが

「まだです!終わってません!戦闘準備!」

 アレクサンドラは慌てて勝ったと勘違いしている兵士を締める。

「来るぞ!弓隊!一斉準備!撃てーっ」

 ベテランの隊長が大きい声で若い兵士たちを締めて叫ぶ。

 彼はキングサーペントと戦った事がある人間だった。昔この地で襲撃された時、当時の領主が命がけで討ち取った。この程度で倒せるほどの化物じゃないと知っていた。

 そして最初にアレクサンドラが足元を狙ったのは飛び跳ねて城壁を飛び越さないための上手い戦略でもあった。

 喜んでいた弓隊の若者たちは大慌てで矢を弓に番って構える。

 その前にキングサーペントは体をよじらせて矢の攻撃を避けて体を翻して尾で城壁を叩く。一部の城壁が崩れ落ちる。

「魔法部隊!撃て!攻撃を止めろ!」

「<火弾(ファイアボール)>!」

「<風刃(ウインドカッター)>!」

 魔法部隊による魔法攻撃が次々と跳ぶ。


 アレクサンドラは魔法一発で少し疲れて肩で息をしていた。渾身の攻撃魔法はさすがに魔力消耗が大きい。息を整えて次の一撃の準備をする。


 槍を持った兵士たちが遠巻きに近づいて攻撃をしては距離を取りダメージをチクチクと与えていく。それを補助するように魔法部隊が攻撃を仕掛ける。


「さすがはアレクサンドラ様です。アレの攻略法をご存じで?」

「お父さんの手記に残ってたから」

「あとどの位行けますか?」

「あと1発ちょっとが限界」

「もう少しダメージが欲しいですね。動きを止めて急所に一撃か」

「うん」

 隊長はアレクサンドラがしっかりと戦えると理解して限界を確認したかったのだ。


「動きを止めたいの?」

「うん」

 サラはアレクサンドラに訊ねると、アレクサンドラは素直に頷く。

「やってみる」

「え、でも、サラちゃんは私の護衛で……」

「護衛で、友達でしょ。それにアイツ殺さないと護衛もクソも無いでしょ。トドメは任せるわよ」

「うん」


 サラは背中の大剣を抜いてキングサーペントの動きを見る。多くの兵士たちの攻撃を避けながら反撃しようと動いて簡単にとらえられそうに無かった。

 蛇が噛みつくときの様に大きく跳ねないからこそ地面に這う相手をどう攻撃するかに集中できた。その時に、アレクサンドラが何で下側に魔法を撃ったか理解する。一撃で倒せず、飛び掛かられたら簡単に城壁を超える相手。まず飛び掛かれないようにしたのだと。


「やっぱすごいわ、私の友達」

 キングサーペントが弓矢が飛んでくると尾で払おうとする。

「ここだ!」

 尾で矢を払った瞬間を狙い、サラは走ってキングサーペントの右目に刃を叩きつける。

「ギャアアアアアアアアアアアアツ!」

 悲鳴を上げて体をよじらせる。キングサーペントは片目を失い暴れ狂う。

「素晴らしい!」

 思わず感嘆する隊長。アレクサンドラは魔力を溜めて次の魔法に集中する。

「全員サーペントから離れて!行きます!」

 アレクサンドラが叫び攻撃してた地面に降りて戦っていた兵士たちや飛び込んだサラは一斉に南門の方へと逃げる。


「<灼炎(バーニングフレイム)>」

 火魔法LV8にも達する圧倒的な破壊力を持つ大魔法だ。火魔法は特に攻撃力が高く、火魔法LV8は他の攻撃魔法のLV9をも遥かに凌ぐ攻撃力があった。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 キングサーペントが断末魔の叫びをあげる。炎に包まれ上体をボロボロにしながらも、それでもなお戦おうと瞳を城壁に向ける。

 そして最後の力を振り絞り焼けた体で城壁に体当たりをするのだった。

「!?」

 城壁が崩れ城壁の上にいたメンバーは崩落と一緒に地面へと落ちていく。

「くっ」

 隊長は崩れつつあった城壁を走ってアレクサンドラを抱えて自らが下になって地面に叩きつけられる。

 アレクサンドラは慌てて立とうとする。

「ガハッ…ゴホゴホッ」

「マキネン卿」

「ガッ………はや…く……早くお逃げを」

「で、でも……」

「………敵軍が来ます」

 彼のいう事が正しいかのように、ハッキライネン軍が魔物の消滅と共に気勢を上げて進軍を開始する。

「どこまで腐ってるのよ!」

 サラは憤りながら崩れた城壁の方へ走って来る。

「ガハッ……早くお逃げを…」

「ま、待って。回復魔法を。<治癒(ヒール)>!」

 アレクサンドラは回復魔法を掛けようとするが全然光らない。完全な魔力切れだった。

「お願い……もう少し…」

「ご友人。早く……アレクサンドラ様を失うのはこの領地の終わりを意味します!早く!」

 血を吐きながら隊長は叫び、サラはアレクサンドラを無理やり引っ張って走る。

「サラちゃん!」

「命がけで己のキングを守るのは彼らの仕事よ!サーシャがここで奴らに捕らわれたら終わるんだから!」

 アレクサンドラはサラに引っ張られて追従せざるを得なかった。

 サラはアレクサンドラを引っ張りながら走る。

「男なんてクズばかりだと思ってたけど、サーシャの家の家臣たちは良い奴が多いわね」

「ん」

 アレクサンドラは涙を堪えながらサラと走る。中央のランジランタ城の方へと。




 だが城塞が決壊した今、最早守る者はなかった。籠城は終わった。ハッキライネン軍が一気に領都陥落に侵略を開始したのだった。半数が傭兵で構成された軍隊は規律がとれておらず、始まるのは略奪と暴行が開始される。


 ランジランタ城の上層にある部屋でアレクサンドラは母とニクライネン伯爵夫妻と集まって避難する。

「もう、ダメかしら」

 困ったという顔でおっとりしたニクライネン伯爵夫人は小さくつぶやく。

「ハッキライネンの小僧が……。白狼が離れたらこの地は終わりだというのに……何も知らないガキが!」

 拳を握り机をたたくニクライネン伯爵だった。

「ごめんなさい」

「貴女が謝る事は無いわ。ヴィルヘルム様の跡継ぎとしてよくやったわ。私は貴女を誇りに思うもの」

 頭を下げて謝るアレクサンドラを母ヘンドリカは娘を優しく抱きしめ、頭を撫でる。

「でも……」

「お父さんはずっとあなた達に申し訳ないと言ってた。リッ君がこの地に縛り付けるあなた達を開放してくれるかもしれないと思っての婚約だった。ルミヤルヴィの為じゃないのよ。ルミヤルヴィの生き方は死と隣り合わせだから。だからあの人は私達より民を守って死んでしまった」

「まあ、もしもあの世があるならば、ハッキライネンがどんな形で無様に死ぬか見たいものだがな」

「その前にヴィルヘルム様に謝るのが先ですよ」

「娘になってくれるはずのマルヤーナ様の幸せを見ることが適わないのが心残りだが。トビアスを忘れて他の男と幸せになって欲しいものだ」

「そうねぇ」

 戦は終わったのだと全員が理解する。ハッキライネン軍はランジランタ包囲し、次々と開かれた城門に兵士が入っていく。


「サラさんは?」

「外で戦うって。剣が無いのに。もう帰った方が良いのに」

これ以上は関わる必要が無い。少なくともその方がサラは生きて学校に戻れるはずだとアレクサンドラは考えてしまう。

「……。あの子の気持ちは分かるわ。だって私はルミヤルヴィの生き方を愛して、ヴィルヘルム様の女になりたくてギレネを飛び出してここまで来ちゃったんだもの。お嫁さんにしてくださいって私が行った時、マルヤーナちゃん、すんごい嫌そうな顔してたの覚えてるわ。でも本当に民の為に身を投げられる人って上に立つ人間には居ないのよ。居ないからこそあの人は誰よりも美しかった」

 するとガシャンと乱暴にドアが蹴り開けられて、どかどかと兵士たちが入って来る。

「ルミヤルヴィ辺境伯アレクサンドラ、元辺境伯夫人ヘンドリカ、ランジランタ領領主エーミル・ニクライネン伯、ニクライネン伯爵夫人ヘンニ。失政の責任を取り死んでいただく」

 大柄な男が剣を抜きながら前に出るとアレクサンドラは3人を庇うように前に出る。

「失政?文句があるなら言って欲しいと伝えた筈だけど文句を言う前に戦争をするのがハッキライネン伯のやり方なの?」

「黙れ小娘が!辺境伯には死んでもらう事になっている。これは最初から決まった筋書きだ。何、後で残りの連中もまとめて公開処刑でお前の居る場所に送ってやる」

「なるほど。失政原因は我々。アレクサンドラ様は戦争で死亡。後継不在で大貴族の誰かの推薦でも貰って辺境伯に立つのがハッキライネン伯のたくらみか。くだらない、反吐が出る。結局は爵位が上がっても大貴族の傀儡になるだけだろうが!」

 ニクライネン伯爵は笑って狙いを指摘する。

「黙れ!大義を知らぬ愚か者が!貴様から殺してやっても良いんだぞ!」

「やれるものならやるがいい。破滅に進んでることすらわからぬガキが大義を語るとは笑わせる」

 流石にトビアスの父なのでかなり口が達者だった。頭も良いので状況を正確に把握していた。


「貴様…」

「将軍、拙いですよ。彼らが責任を取って処刑、どさくさに紛れて辺境伯が死んでたというのが筋書きなんですから!」

 部下の一人が慌てて諫める。

「ちっ……命拾いしたな。そういう事なんでな。辺境伯、貴様には死んでもらう」

 剣をアレクサンドラへと向ける。

「ここに来る途中に護衛の女の子がいたと思うけど」

「ん?あのデカい女か。さあな、部下に任せて来た。5人がかりで姦されているんじゃないか」

 アレクサンドラはキッと相手を睨む。

「きっとあなたは後で後悔する事になるわ」

「はっ……強がりを。死ね!」

 剣を振ろうとした瞬間、ゴシャッと何かが入り口から飛び込んできた。


「!?」

 全員がそっちの方へと視線を向ける。入って来たのはハッキライネン軍の鎧を着た血まみれの死体だった。手も足も人体の向いていけない方向に曲がっていた。


 最後に顔面が潰された男が飛んできて壁に叩きつけられて地面に倒れる。


「はあはあはあ、いた。間に合った。間に合ったよぉ~」

 最後に走って入って来たのは銀髪の美少女としか思えない少年だった。泣きそうな顔で血まみれになりながらこの場に入って来る。

「だ、誰だ!きさ」

 剣を抜いて襲い掛かろうとした部下の一人は全てを言い切る前に首が飛ぶ。

「辺境伯殺害未遂の現行犯だな。投降しろ。投降すればお前だけの罪で済むぞ」

「何を馬鹿なこ……」

 部下の一人が剣を抜いて少年の方に一歩進むが頭から真っ二つにされて血を吹いて倒れる。

「サーシャ!大丈夫!?」

 少年の後に現れるのはサラだった。

「私の部下はどこに……」

「あの世?ここに来る途中のハッキライネン連合軍は全員殺したから100より先は覚えてないよ。投降しろ」

「ば、馬鹿な!貴様の様な小娘が!?ふ、ふざけるなーっ!」

 剣を抜いて襲い掛かろうとするが腕も剣もまとめて切り裂いて体がくの字になって死体をさらす事になるのだった。

 少年は剣についた血を一振りして地面に落とし鞘に入れる。


「申し訳ございません。アレクサドラ様。フレデリク・ズワールト、遅ればせながらただいま帰還いたしました」

 フレデリクはアレクサンドラに跪き恭しく首を垂れる。

 ピヨッ!

 あとがき担当のヒヨコだぞ。ピヨちゃんと呼んでくれ。

 久しぶりにやって来たあとがき。戦争は終局に突入する。ルミヤルヴィの危機に駆けつけるフレデリク。果たしてヒヨコとどっちが足が速いのか!?

 命の危機にさらされるアレクサンドラ。そして、ついに二人は再会を果たす。

 ……間に合った……間に合ったよ……神様……間に合った……

 生きてる……生きてるよね

 そう、閃光のピヨちゃんとはヒヨコの事だ!


 ちなみにヒヨコの冒頭のきめ台詞募集中だ。ヒヨコの決め台詞のポイントは赤だぞ。今回の台詞も実は紅白で目出度そうな団員服を着てた某ラノベヒロインの台詞から抜粋されているのだ。閃光といってもハサウェイじゃないからな?


 そして、戦争は佳境へ。ついに雷華の騎士と呼ばれたフレデリクの雷魔法が炸裂する。

 果たしてヒヨコのブレスとどちらが上なのか?

 え?一々張り合うなって?

 そうか、残念だがそうしよう。ヒヨコのICBMブレスは雷華程破壊範囲は大きくないが世界の裏側でも攻撃が出来るという利点があるのだがな。


 次回のピヨちゃんは『ヒヨコの勇者の成り上がり』でお送りするぞ。皆、見てくれよな!


※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ