第026話 連合国の外貴族
暫くして商工ギルド長のダールトンがシャルロッテに招かれ王城にやって来た。アイリスの一件からか顔色を悪くしてるのは見間違いではないだろう。
「取り敢えず、アイリスちゃんについて何処まで聞いてるのかしら?」
「一応、此方に戻ってから精霊神社で巫女のイーリス様に聞いておりますが、連合国圏外で男に戻ったとしか聞いておりません」
「そう、まあ良いわ。取り敢えず連合国について聞きたいのだけど、良いかしら?」
「ええ、……聞かれるだろうと一応調べて来ましたよ」
「先ず、直近の問題としてだけど連合国と行き来出来る人間を増やせるのかしら?」
行き来出来るのが王族だけと言うのは領地運営に重い足枷になっている。有用な人物でも帰って来る事が出来ないとなると安易に行かせる事が出来ないのだ。
シャルロッテはアーダルベルト達や飛空艇の乗組員達を勧誘していたのだが、リアースレイ精霊王国出身でも自由に行き来出来ないと断られていた。
「――ダールトン様なら来れたのに、ね」
「あれはアデール領からレンリート領への移譲に案内人として同行させて頂いただけですよ。もう行きたいと思っても行けませんから」
お手上げポーズを取るダールトン。だが今の所シャルロッテしかレンリート領で内政に関われる人材が居ないのは痛かった。
「でも新しい土地でしょう? アイリスちゃんの護衛に不安があるのよね?」
「……そもそもその様な場所に行かせなければ良いのでは?」
「あの地には巫女様も居ないしまともな回復魔法の使い手も居ないのよ? あの子も領民の健康を気にしていたわ」
「ふう、……ならば兵を家族ごと送り込めば宜しいのでは? この国からでもフォシュレーグ王国のレンリート辺境伯領からでも良いですし、領地を譲ったとは言え親子なのですからそのくらいの融通は利かせられるでしょう?」
「……そう言う答えが欲しい訳じゃないのは分かっているでしょう?」
シャルロッテの冷めた視線にダールトンは「分かっていますよ」とまたお手上げのポーズを取った。戯ける様にしているがシャルロッテの威圧を思い出しちょっと引き気味である。
「連合国間を行き来出来る人は王族だけと言う縛りがありますが、シャルロッテ様が打診した様に傘下の国でも王族であれば行き来は出来る様ですね」
シャルロッテはタヒュロス王国とメメントリア王国の王族にリアースレイ連合国レンリート領の運営に関わらないかと提案していた。何方の国も前向きに検討すると答えをもらっている。
レンリート領で成果を上げればレンリート王国はリアースレイ精霊王国との貿易の関税で優遇される。タヒュロス王国やメメントリア王国はそれに貢献する事でレンリート王国からの庇護を強化出来る。
実際その様にしている国がリアースレイ連合国には数多くあるそうだ。
「それで?」
「もう一つ、リアースレイ精霊王国に認められる能力を示す事でも良い様です」
「――具体的には?」
「既にアイリス様がなさっているでしょう?」
アイリスはリアースレイ精霊王国でも3人しか居ない大巫女並みの能力を持つと言われているのだ。認められて当然だろう。
「アレは、人には無理じゃないかしら?」
「はは、……確かに。まあ、他に明確な基準としては一定以上の魔力量と魔法技術を示すか、傭兵か探索者でランク9に上げる事が挙げられます」
「魔力、に関してはどのくらいか分かる?」
「シャルロッテ様で言えば後1割弱程度ですかね。魔力量を増やせば良いそうですよ」
(……出来なくは無い。そうなればアイリスちゃんとの婚約を解消しても、いえ駄目ね。あの子との縁は切れないわ)
「もしそれが成されれば精霊王国の外貴族と言う扱いを受けます」
「外貴族?」
「ええ、中央領には様々な施設島がありますが規制も多い。外貴族となればその様な場所への立入許可も通りやすくなりますし、連合国内で重要な役職に就く事も可能にはなります」
連合国には王族として来れる様になったけど、中央領にはそれだけじゃ行けないと言う事ね。
「……それは魅力的ね。でも、傭兵探索者ランクの9と言うのは高過ぎないかしら?」
(出来ればレイク達を連れて行きたい所だけど、レイクですらつい最近ランク7に上がった所なのよね)
「ふふっ、寧ろ魔力量と技術だけで外貴族になる方が余程難しいのですよ?」
「そうなの?」
シャルロッテは元々巫女のオリビアが認める程魔法関連で高い才能を有していた。それがリアースレイ精霊王国式の鍛練で子供の頃から20年以上の時間を掛けて磨き上げて来たのだ。その能力の高さは推して知るべしだろう。
「ええ、精霊王国式の鍛練で長年磨き上げたからこその高みです。……そう言えば魔宝石で一悶着あったそうですね。イーリス様から誤解が解けたと言伝を預かってますよ」
「……誤解が解けたなら良いわ。でもやっぱり難易度が高過ぎないかしら」
「連合国の中でも外貴族になられた方は少ないですからね。ですが長年それでやって来てるのですから仕方がありません」
他の国々は長年統治して来たから連合国内の領地の人材も豊富だ。自国から人を送り込む必要性も低いので問題にならないのである。
(けど、此処でその不平を言っても仕方がないわね)
「外貴族。貴族と言うからには爵位もあるのかしら?」
「ええ勿論。まあ今いる連合国の外貴族達も男爵位止まりではありますがね」
「爵位は男爵位から?」
「いえ、傭兵か探索者でランク9になると騎士爵位を、魔力量魔法技量で認められればその上の男爵位を得る事になります。――まあ男爵位と言っても、中央領領主であるラピユール男爵様とは同列にはなりませんがね」
まあ、それは納得ね。本国の貴族と外様貴族を同列になんか出来る訳がないもの。
「ですが、アイリス様であれば更に上の扱いを受ける事も可能ではないかと思います」
「上?」
「――アイリス様の能力が、魔力が多いとか傭兵ランクが高いと言った者達と同列に語れますかね?」
(私の魔力量が1割伸びて男爵位を得たとしても、アイリスちゃんの能力程の価値は無い。となると男爵位では足りない、……あの子の能力は人の範疇を超えているとしか思えないものね)
「アイリスちゃんの能力は、単なる外貴族の範疇にないって事かしら?」
「外貴族と言うのは連合国内でも十数名しか居ない実力者達なので。単なる、とは言い辛いのですがその通りです」
「仮にその、上とやらに成れたとして何が変わるのかしら?」
「中央領での権限が爵位に応じて上がって行く様ですが、子爵位以上になりますと爵位に応じた数、好きに従者を付けられます。これは王族、外貴族でなくとも構いません。立場としてはラピユール男爵様と同等以上となります」
「簡単に言うわね。……そう言えば、ラピユール男爵様は精霊神社でアイリスちゃんを敬っている様に見えたわね」
「アイリス様は精霊王国に帰化するのであれば王族、大巫女様並みの立場を与えられるお方ですから。男爵様が敬うのは当然でしょう」
「――それなら、アイリスちゃんなら従者を何人も引き連れて行き来出来ると言う事?」
「いえ。あくまでも精霊王国に帰化するのであれば、です。せめて中央領で何らかの実績が無ければ流石に無理ですよ」
「実績、……ね」
お昼前に王城に行ってひと月振りにビアンカお姉様と会った。何だかお疲れモードだったよ? 俺の美容魔法を求めて来た偉い人達の対応に追われて大変だったらしい。
まあそれでも小さくなった俺の姿には驚かれたけど。
「対応を任せられる王族も貴族も足りないのよね。まあアイリスちゃんが施術すれば機嫌良く帰ってくれるでしょうけど」
一緒にお昼寝したら落ち着いたのか微笑みながらそんな事を言って来た。美容魔法も効いた様だし良かった良かった。偉い人達への施術も何時もの事だし大丈夫だろ。
頼れる父親的存在としてビアンカお姉様の期待に応えないとな。
『期待に応えても父親的存在には無れんじゃろがな』ボソッ
ガシッ!
「うえっ!??」
ビアンカお姉様に連れられ施術に向かおうとしたら突然肩を掴まれた。誰かと思って振り返ると王妃のエウレカ様が笑みを浮かべて迫って来る。
ちょっと怖い。何かしたかな?
「――――アイリスちゃん? 私にも美容魔法、良いかしら?」
当然やったよ? 念入りに、……だって圧が凄いんだもん。
明日は12時00分に第027話を投稿します。
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