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拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?  作者: ゆうきゅうにいと
第8章 のろのろ帰還と運命の再会?

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第027話 サルマトール侯爵派のマーブルお姉様


 アイリスがレンリート王国に戻った事は美容魔法を再開する事は順番待ちをしていた有力者達にすぐに広まった。その中にはマーブル・アスタードも居た。

 アスタード伯爵家の長女でアイリスの学院時代の先輩だ。アイリスをお菓子で餌付けしてお姉様呼びをさせた張本人でもある。ビアンカも対抗して呼ばせていたが、今や自国のお姫様である。

(お遊びで呼び始めたんだけど、巻き込んだ様でどう思われてるのか気が気じゃないわね)

 マーブルの実家であるアスタード伯爵家は南部サルマトール侯爵家の派閥だ。

 フォシュレーグ王国との戦争ではそのサルマトール侯爵が南部派閥ごと領地に引き籠もる決定をしていた。それ事態はシャルロッテも了承しており悪い訳では無い。

 しかし初手で寝返った東部ブラン侯爵派閥や王都攻略に参加した西部ベルビュート辺境伯の派閥と違い、何の成果も上げていないと言うのが周囲の評価である。

 当人達もその事は分かっていて、今はどうやって新王家に取り入るかと苦心していた所だ。


 王都で評判になっている美容魔法を受けられると言うのに私達は緊張感に包まれている。それは目の前の人物、マロネーリ・サルマトール侯爵夫人が原因だ。

「良い事、私達の目的は美容魔法を受ける事では無いわ。それを施すフローディア公爵家のアイリス様と友好関係を築く事よ」

「「「はいマロネーリ様」」」

 今回私はサルマトール派の人間としてサルマトール侯爵夫人。マロネーリ・サルマトール様の付き添いで来ている。他にも第二学院で一緒だった同じ派閥の友人2人も一緒だ。

 誘拐事件の時にアイリスちゃんと交流があった事をサルマトール侯爵も知っていて私達に声が掛かったのだ。

「後日王家と会談を持つ事になるけど、少しでも良好な関係を築く為にも貴女達には期待しているわ」

「「「はい……」」」

(期待が重い! 先輩ではあるけど誘拐事件の時は助けて貰った方で借りがある方なのに、そんな期待されても困るのよ!?)

 そうは思うけど侯爵夫人に対して何か言える訳でもない。と言うか父親にも期待していると送り出されているので今更でもある。



 施術を受ける私達は使用人用の大浴場の更衣室に集まっていた。

 近衛の女性騎士達が警護をしているとは言え高位貴族の令嬢もいる中で、こんな所に来させるなんて本来有り得ない事だ。

 当然当初はこんな場所に身を置かせるとは何事だと不満を口にした者達も居たが、王家から「嫌なら帰れ」との声と美容魔法の劇的な効果で誰もが口を噤む事になった。

 ――まあ当然よね。若返るかの様な美容魔法を言葉一つで手放すなんて、女性なら誰にも出来ないもの。

 そう言えばビアンカ姫とは一度しか会ってないけど肌艶がとても良い方だと思ってたのよね。思えばそれもアイリスちゃんのお陰なのかしらね?


「あら、サルマトール侯爵夫人。ようやく此処に来れる様になったのね」

「ブラン・メローニャ」

 声を掛けて来たのはブラン・メローニャ様。ブラン侯爵家の次女で若い時の火遊びが原因で33歳になっても結婚相手が居ないとっくに行き遅れの女性だった。

 浪費家で収集癖もありブラン侯爵も持て余してると言う話しだったのだが、今のブラン侯爵家は今後フォシュレーグ王国との友好な貿易が見込まれ好景気に沸いている。

 そのお陰でメローニャ様にも縁談の話しが幾つも舞い込んでいるらしい。

「私なんて今日でもう3回目なのよ? うふふ。どう? この肌艶。20歳と言っても通じるでしょう?」

 勝ち誇った様にサルマトール侯爵夫人を煽ってくるメローニャ様。まあ20歳は言い過ぎだけど20代半ばくらいには見える。

(そりゃ機嫌も良くなるわよね)

「そうね。私も楽しみだわ」

「ブラン侯爵家は王家からの信頼も厚いしフォシュレーグ王国との交易には欠かせない領地ですからね。今後幾らでも受けられるから、貴女達は希少な機会を噛み締めて味わうが良いわね」

 軽く受け流そうとしたサルマトール侯爵夫人に好き勝手言って自派閥の所に行くメローニャ様。サルマトール侯爵夫人は言い返す事もせずにその後ろ姿を睨みつけている。

「……無礼な」

 ボソリと呟くマロネーリ様。……怖い。

 確かに侯爵夫人と侯爵家の次女とでは本来なら侯爵夫人の方が立場は上だ。けどサルマトール侯爵派が王家からどの様に思われているか分からない状況で敵を増やす様な事は出来ないのだ。

 その不満が此方に飛び火しないと良いんだけど。



「フローディア公爵家、アイリス・フローディア様がいらっしゃいます!」

 その声に一同が跪いて両手を交差させ肩の前に置く。これは本来なら貴族が王家に対して行うものだ。しかしビアンカ姫の婚約者であり『美容の天使』とまで言われるアイリスちゃんに敬意を示す形で自然と広まって行ったらしい。

「面を上げなさい」

 アイリスちゃんの声じゃない、女性の声だ。

「面を上げなさい」

「「「――えっ!?」」」

 2度目の声を受けて顔を上げると遠目にアイリスちゃんが目に入った。

 相変わらず可愛い、……んだけど、縮んでない?? えっ!? 本人? よね??

「「「「「…………」」」」」

 不味い。思わず声が出てしまった所為で注目を集めてしまっている。私だけじゃなく友人達もだ。かなり悪目立ちしてしまった。

 これは後でサルマトール侯爵夫人にお叱りを受けるわね。

「あっ、マーブルお姉様!?」

 そう思ってるとアイリスちゃん? が私を呼んでトコトコと駆け寄ってギュウっと抱きついて来た。

 やっぱりアイリスちゃん? でも勘違いじゃ有り得ないくらい縮んでるんだけど?? けど可愛さは相変わらずね。

「んふふ〜。マーブルお姉様久しぶりぃ」

 機嫌が良さそうにぷにぷにした頬を擦り付けて来るアイリスちゃん? 思わず抱き締め返してしまった。けど広い室内で百人近い女性達が静まり返って此方を注目している事に気付いてハッと我に返る。

(注目を浴びすぎてるじゃない! 皆の視線と静寂が痛い!! どうすれば良いのよぉおおおおお!!!)


「流石は幼子を愛でる会名誉会員ですね。マーブル・アルタード様」

「……そんな珍妙な会に入った覚えは無いわよ」

 声を掛けて来たのは学院でアイリスちゃんの侍女をしていたナージャとか言う女性だ。確かあの時もそんな事を言っていたわね。

 何とかこの場を治めて欲しいのだけど、このおかしな侍女には期待するだけ無駄でしょう。

「大丈夫です。名誉会長はビアンカ姫様ですから」

「っ!? ……本当に?」

「はい。間違いありません」

「……ビアンカ姫様の許可は取っているの?」

「勿論(取っていません)」コクリ

 自信満々の表情で頷くナージャ。何が大丈夫なのか良く分からないけど、ビアンカ姫様が居る会の名誉会員となればどんな珍妙な会であろうとマーブルは入るしかない。

(更に、悪目立ちしてるわ!! 何とか話題を変えないと!)


「と、ところで、……本当にアイリスちゃん、――様なのですか?」

「ん、アイリス」コクリ

「その姿は、どうしたのです?」

「神様の思し召しです」

 胸を張って答える侍女ナージャ。何の答えにもなってない。多分アイリスちゃんに聞いても要領を得ないでしょうね。

 ――と言うかもう気軽に聞ける立場でもないのよね。私は伯爵家の3子で兄が2人居るし、貴族としては余り強い立場ではないのだ。

 ビアンカ姫の婚約者であり本人も『美容の天使』として近隣諸国にまで名を広げつつあるアイリスはレンリート王国にとって最重要人物だ。

 そんなアイリスに姉として懐かれるマーブルの姿はこの場に居る全ての派閥の貴族達に大いに衝撃を与える事になる。

 ――そして当然マーブル本人にも大きな衝撃が与えられている。

(……詰んだ)

 他派閥からの妬み嫉みに自派閥からの期待と言う無理難題。これから降り掛かるだろう苦難に目眩がしてしまうマーブルだった。






明日は12時00分に第027話を投稿します。

ブックマークや何らかの評価を頂けると励みになるので大変嬉しいです。

これからも宜しくお願い致します。

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