第015話 幼女にされたから
中央領は網目の様に川があり、それぞれが島になって独立している。
その島ごとに別々の役割りを持っていて橋も無いから飛空艇でしか入れないそうだ。しかもそれぞれの島には資格が無ければ入る事が出来ない様になっているのだそうで、本来なら精霊神社のある島も通常は入れないらしい。
今回は招かれて飛空艇で降りる事になったのだが、特別な事らしい。
この島は人が忌避する程ではないが濃い聖素に満ちている。ユニコーンのキーちゃんがリリィ達の聖素を受けなくても良いくらいだった。だからキーちゃんは飛空艇から乗り込んだ魔導車に乗らないで走って付いて来ている。
巫女様は俺が幼い女の子になっちゃった理由を教えてくれるそうだ。そんな事より元に戻して欲しいんだけどな。シャルロッテお姉様に何とか交渉して貰うしかないよね?
巫女はオリビア様とかイーリス様とか皆んな良い人そうだったし、此処の巫女様も良い人なら何とかしてくれないかな?
降りた島の中央にある精霊神社はレンリート王国やカントラス王国にある精霊神社と同じ木造りで構造も変わらない様に見える。
その精霊神社の前では神社に仕える服を着た人達とは別に、貴族っぽい人が騎士っぽい人達を連れて待っていた。
魔導車を降りる時にまたシャルロッテお姉様に抱っこされる。もう歩けるんだけど、……まあ良いか。
「私はこの精霊神社で宮司を任されているメルウッドと申します。此方は当精霊神社の巫女様であられるユアンナ様に御座います」
「巫女のユアンナです。宜しくお願いします」
精霊神社の代表として宮司と巫女様が挨拶して来た。
宮司と言う人は40代半ばくらいのおじさんで巫女様は30歳くらいかな? 巫女様の年齢は見た目じゃ当てにならないんだけど。
『それはお主もじゃろ』
幼女にされたからなぁ。
『そう言う事じゃないと思うなのー』
「私はラッセルアート・オル・ラピユールです。リアースレイ精霊王国にて男爵位を賜り、現在はこの中央領の領主をしております」
貴族風の人は貴族だった。50歳くらいのおじさんで、何故かシャルロッテお姉様じゃなく俺に跪いて挨拶して来るんだよ?
「ん」コクリ
ジッと見つめて来るから気まずくなって、取り敢えず挨拶し返すと満足そうな笑顔で引き下がった。何なの?
貴族のおじさんや巫女様達はそれからキーちゃんにも跪いて挨拶してた。キーちゃんて偉いのかな?
『お国柄じゃないかの?』
「ヒヒン『人の評価なんてどうでも良いのー!』」
……子馬に跪く人達、何か滑稽に見えたよ。
その後ビアンカお姉様の両親、ビアンカお姉様シャルロッテお姉様へと普通の挨拶を終えて部屋に案内される。
そんな様子を傍目にグランツは大いに慌てていた。下級貴族の男爵位とは言え超大国の貴族である。他国の国王としてどう接すれば良いのか分からないが、少なくとも機嫌を損ねて良い相手ではない。
「お、おいエウレカ。貴族だぞ? ……領主って、精霊神社に向かったのを知ってコッチに来たんだよな?」ボソッ
「そうでしょうね」ボソッ
「不味くないか? 領主を避けて精霊神社に来たとか思われてないかな? ヤバいぞ? 怒ってるかも知れん」ボソッ
「そうかも知れないけど堂々としなさいよグランツ。みっともないわよ?」ボソッ
「みっともないって、エウレカお前……」
避けた筈の領主に来られた事にパッと見て動揺して見えるのはグランツだけだった。
「お父様。動揺するのは分かりますけど一応国王陛下でしょう? せめて顔には出さないで下さいませ」ボソッ
「ビアンカ。お前まで、何で平然としてられるのだ? それと一応じゃないぞ? 本当に国王だからな?」ボソッ
「グランツ陛下。相手がアイリスちゃんに会いに来たのかキーちゃんに会いに来たのかは分からないけど、いずれにしても何方かにしか会えない相手だったのですよ? 幸運だと思って下さい」ボソッ
「……シャルロッテ。お前何でそんなに強いんだよ」ボソッ
「シャルロッテは今更でしょうグランツ?」ボソッ
「そうよ。シャルロッテなのよお父様?」ボソッ
「む、…………うむ」ボソリ
エウレカとビアンカの言葉には納得するしかなかった。
(この領主。魔法技術は分からないけど魔力量は私よりも2、3割り上回っているわね)
シャルロッテは魔力至上主義と聞くリアースレイ精霊王国に近付く為に、ダールトンの伝手も使い魔力を鍛えてきた。その魔力量は近隣諸国では一番と言う自負もある。
だがその魔力量をこの領主は優に上回っていた。
(でも、絶望的な程ではない)
貴族と同レベルの魔力を持つ事にどれだけの意味があるのか分からない。けどアイリスだけでなく自分自身にも価値を持たせる事は大きな意味があるとシャルロッテは考えていた。
巫女のユアンナ様は白く長い髪に緑眼で清楚な感じで優しそうに俺に微笑んでる。
俺達は宮司のおじさんに促されて席に着いていた。まあ俺はシャルロッテお姉様の膝の上だけど。そうじゃないとテーブルの上も見づらいんだよ?
向こうは巫女様に宮司のおじさんと貴族のおじさんだけ座っていて、他は後ろに控えてる。
「今回の精霊の愛し子様の件ですが大巫女様に連絡を取った所、我が国の王族のある御方が興味本位で精霊神様に御力をお借りした様なのです」
お話しは巫女様がする様だ。お相手はシャルロッテお姉様に任せよう。
それにしても小さくなっちゃったなぁ。シャルロッテお姉様に膝抱っこされてるけど、それでも頭1個の差があるんだもん。
前はそこまでじゃなかったのに、今は常時おっぱい枕状態だよ。ポヨンポヨンと眠りを誘って来るんだよ? 全く、…………すやぁ。
『コヤツさっきまで泣き腫らしておった癖に……』
神様に王族、ね。話しぶりから距離が近い様に感じるけど、或いはそう思わせ様としてるのかしら?
「……いったいどの様な思惑があっての事なのでしょう?」
「思惑も何も、敢えて言うなら悪ふざけかと思われます」
巫女様は目を閉じて首を振り、申し訳なさそうに答えた。
「悪ふざけ、……ですか」
思惑も何も無い。……神の気まぐれと言うのなら神らしくて納得がいくのだけど、此方はそれで済ます訳にもいかないわよね。
「王族の方はどの様にしてこの子の有り様を知ったのでしょう」
シャルロッテから見てもアイリスなら幼女化しても違和感が無い。けど王族がそうしようと考えたのであれば何らかの手段でアイリスを見知った筈だ。
「それこそ精霊神様の御力を借りたのでしょう。精霊の愛し子として精霊神様の寵愛を受けた者。それは王族の方々の関心を充分に刺激致しますから」
やはり、神と人が近いのかしら。恐ろしいけど、――興味深いわね。
「……こう言う事は良くあるのでしょうか?」
「私達巫女の様に神に見初められる事はありますが、この様な話しは初めてです」
「そうですか。……私と此方のビアンカ姫はこの子、アイリスと婚約者なのですが女性になった事でこのままでは破綻してしまいます。それについてはどの様に考えておられるのでしょうか」
「ふわぁ〜、ん〜」
目が覚めた。精霊に起こされたみたいだ。どのくらい寝たのかな? シャルロッテお姉様達はまだ話し合っている。
『20分程かの』
うーん、此処の精霊神社の精霊は大人しい子が多いな。オリビア様やイーリス様の精霊は走り回ってる子達がいっぱいいたのに。
『おしとやかと言って欲しいわね。愛し子』
「ん、もふもふ?」
『もふもふじゃないわよ。お、し、と、や、か。分かった?』
「ん」コクリ
話し掛けて来たのはちょっと偉そうな羊っぽい精霊だ。口調から女の子だろうか。精霊は魔力の塊だから触ってももふもふしないから残念だな。
『この子が愛し子か。連れている精霊も似ているな』
『ふふっ、自分が好きなのかしら? 可愛いから分からないでもないけど』
他の精霊達も寄って来て興味深そうに見てくる。精霊の姿は連れている主の影響を受ける事があるらしい。
でもリリィとネネェは俺じゃなくて妹のねぇねの姿なんだよね。ねぇねと俺はそんなに似てるのかぁ。仕方ないなぁ、てへへ。
『向こうはちゃんと大人になっとるのじゃ』
『母娘に見えるなのー』
くっ、幼女にされたからな!
『元からそう見えたのじゃがの』ボソッ
『なのー』ボソッ
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