22.靴と魔王はどちらが強い?(後編)
デジレは自分の足ごと鉄の靴を切り離そうと、剣を向けてきた。
わたくしは素早くコマンド画面を操作して、『デザイン変更』でロングブーツになった。素材はもちろん『真っ赤に焼けた鉄』のままだ。
ちらりと見えた素材欄に『真っ赤に焼けた鉄』が追加されていた。前はそんな素材はなかった気がする。やっぱりスキルを使えば使うほど、できることが増えていくみたいね。
「ウオワアァァァァ――ッ!」
デジレは剣を放り出して叫んだ。
魔王であっても、やっぱり『真っ赤に焼けた鉄』が密着しているのは辛いのね。
ねえ、デジレ、覚えていて? 辺境の町ドラスでは、あなたの送り込んだ兵士と魔物によって、多くの民や魔物たちが死んだのよ。
町を焼き尽くし、ヴァランタンにわたくしを殺させようとしたわね。
せっかく復興しようとしていたところに、ドラゴンまで送り込んできたわね。
あなたは二度も、ドラスの町を焼いたのよ。
デジレは今度は、自分の膝から下を引き千切ろうとしてきた。
わたくしの攻撃はどれくらいデジレにダメージを与えているのかしら?
実はまったくのノーダメージということはないわよね?
転生前に実は無傷だったというパターンを見たことがあるから不安だわ。
わたくしはニーハイブーツに変身し、また素材を『真っ赤に焼けた鉄』に変更した。
「ウグゥッ! ウグゥッ!」
呻きながら、デジレは足の付け根を掻きむしった。
わたくしは『サイズ変更』を使い、サイズを一つ下げた。
靴の密着度が上がったからだろう。デジレはまた絶叫した。
「シャンタル嬢……」
ヴァランタンがわたくしを呼んだ。
すごく心配している声だった。
あのね、ヴァランタン、わたくしだって、あなたが心配なの。
あなたを守るために、わたくしだって死力を尽くすわ。
あなたはデジレなんて倒さなくたって別にかまわないのに、デジレを倒したいわたくしに付き合って、こんなところまで来てくれた。
わたくしの大好きな、お人好しの大魔王様。
デジレは自分の足を引き千切ろうとしてきた。
わたくしは今度はしばらく好きにさせておいた。自分で自分にダメージを入れているんですもの。
わたくしはのんびりコマンド画面を操作して、田植えや釣りなどに使う、胸元まで覆う『胴付長靴』を選択した。胴付長靴に変身すると、また『手を使わずに履ける』を使ってみた。
わたくしの期待した通り、デジレが『手を使わずに』肩ひもを装着するのも手伝ってあげることができた。
「ウオワアァァァァ――ッ! こやつ――ッ!」
デジレは仁王立ちになって、胴付長靴と自分の胸元との間に指を突っ込もうとしてきた。自分の肉が削げるのも構わず、自らの血を流しながら、本気でわたくしを排除しにかかってきていた。
わたくしは『サイズ変更』を使って、さらにサイズを一つ小さくした。
「許さん――! 貴様! 靴の勇者、許さんぞ――!」
胴付長靴の鉄板がデジレの指で歪まされていく。
デジレはいきなり腰を曲げようとしてきた。
おそらく『真っ赤に焼けた鉄』ならば、曲がるだけだろう。鉄は伸びるはずだ。
鉄が伸びると、わたくしはどうなるのだろう?
怪我をするのかしら?
なにかダメージが数値的に蓄積していくの?
ステータス画面にも、コマンド画面にも、HPやMPの表示はなかった。
デジレが腰を折り曲げて、鉄が大きく歪んだ瞬間、わたくしはいきなり死んでしまったりしないだろうか?




