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靴の勇者令嬢~ハズレスキル『靴』を持つ侯爵令嬢は、勇者として魔王に嫁ぎ、最強の旦那様と共に真の悪を倒します~  作者: 赤林檎


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3.魔王って何人もいるものなんだ……?(前編)

最後まで書けましたので、今日からしばらく朝昼晩で三話ずつ投稿させていただきます。

よろしくお願いいたします!

 ドラスの町を燃やし尽くそうとする炎の前に、上半身裸の男が立っていた。

 滅ぼされている最中の町に半裸で立っている、おかしな格好のものすごい美男は、わたくしの目にはヤバい魔族にしか見えなかった。


「お疲れ様でーす」

 わたくしは挨拶をすると、木の棍棒を適当に構えた。

 勝手に表示されてきていたステータス画面は、いつの間にか消えていた。


「小娘よ、なぜ武器を構えるのだ……」

「イベント戦闘だよね!? あんた、筋肉ムキムキじゃん! 明らかに勝てそうにないもん!」

 武器は木の棍棒で、防具は絹のドレス。

 わたくしのレベルは一。

 勝てる要素がなにもない。


「ムキムキがなにかわからないのだが……。魔王の討伐に来た靴の勇者なのではないか?」

「うわっ、こいつ絶対に魔王を殺してるよ! 無理! 無理無理無理!」

 いきなりの下剋上展開!?

 なんで!?

 こういう美男って、だいたい魔王を裏切る二番手ポジションだよね!?


「魔王を殺したことはあるが、どこのどの魔王のことを言っているのだ?」

 殺した魔王が複数いるの!?

 うわぁ、ヤバすぎでしょ!

 顔とか鍛えられてる身体とか、ちょっといいけど!

 普通の服を着たら、きっと素敵だろうなと思うけど!


「そんな何百年も昔の話をして、どうしようというのだ」

 長生きしてるから忘れちゃった的な!?

 魔族であることをアピールしつつの誤魔化し方!

 えげつないわぁ……!


「あんたが魔王ヴァランタンを殺したんでしょ!? わたくしが嫁いでくるってわかってるのに、なんで辺境領カエがこんなに滅ぼされてるのよ! おかしいじゃない!」


 わたくしは木の棍棒を適当に振り回した。もしかしたら勇者の持つ運の力で、この目の前にいる美形の魔族に、会心の一撃が入ったりするかもしれないもん。

 まあ、普通に考えたら運の力とかありそうもないけど……。靴と運はそれほど関係なさそうだし……。


「我こそ魔王ヴァランタンである。靴の勇者よ、このカエの地が食糧難だったことは知っているだろう? 私はカエのご領主が食糧難を理由に降服してきたので、ご領主と共に人間の食糧を探しに行って留守にしていたのだ。……その間に貴国の軍が、どこかの魔王の配下たちと共に我が城に攻め入り、我が配下が反撃した結果が、この惨劇だ! これが靴の勇者の戦い方か!? どういうことなのか説明してもらおう!」

 魔王ヴァランタンだと名乗った美形の魔族は、腕を大きく振って、炎と魔物の咆哮の中で滅びゆくドラスの町を示した。


「え……? まず、食糧難って……? なんでそんなことになってたの?」

 わたくしはそんなことは聞いていなかった。侯爵令嬢の耳には、農作物の出来とかは入ってこないの? そういうことって、貴族の間では少しも噂にならないもの?


 この世界にはスマホとかパソコンどころか、テレビも新聞もない。娯楽の少ないこの世界では、農作物の出来が悪いみたいなニュースは、日常生活に直結している刺激的な噂話になると思うんだけど……。


「この辺境領カエの地は現王が即位してからずっと、何者かが食糧の供給の邪魔をしていたのだ! 人間は飢えると死んでしまう! ご領主が何度も嘆願書を送っていたはずだ。勇者ならば知っているだろう!」

「あぁ……。やっぱり王様かぁ……。あいつ、ちょっとおかしかったもんね」

 わたくしは怒りをあらわにしているヴァランタンに、うなずいてみせた。

 これでわたくしの勘が当たっていることがわかった。


 やはり、わたくしが勇者として討つべき相手は、あの王様のようですわね。


「あいつとは……。お前はこの国の騎士かなにかで、国王は主君なのではないのか?」

「ちょっと聞いてくださいませんこと?」

 わたくしが井戸端会議に参加中の貴婦人みたいに言うと、ヴァランタンは戸惑ったようにわたくしを見た。


「なんだろうか?」

「わたくし、王様から『靴の勇者なんて国を守れないから、人と魔族の和平のために魔王に嫁げ』と言われて、無理矢理ここに送られてきたんですのよ」

「そう……、なのか……? 嫁ぐ……? 嫁ぐはまあいい……。いや、良くもないが……。無理矢理とは……。それは嫌々ということだろうが……」

 ヴァランタンは非常にショックを受けている様子だった。


 無理矢理なのがそんなにショックを受けるようなこと!?

 魔王に嫁ぐ勇者はそれなりの人数いそうだと思うけどさ、やっぱり基本、勇者なら魔王は討伐しに行くものだよね!?


 これは個人的な予測になっちゃうけど、嫁ぐにしたって、討伐しに行って捕まるパターンか、魔王に負けて戻って国から責任をとらされるパターンが多そうじゃない?


 スキルがハズレ枠で魔王に勝てそうもないからとか、理由としてけっこうひどい部類だと思うわ。

 別に勇者として立派に魔王と戦いたいとか思ってないけど、これはちょっと違うと思っちゃうよね。


「なんと聞いていらしたのですか? 王女が魔王様に一目惚れしたとかでしょうか……?」

「いや……、普通にダリオン王国の国王から、『靴の勇者が討伐に行きますから、覚悟しておいてください』といった内容の手紙をもらったのだが……。人間が嫁いでくるなどとは、一切書かれていなかったが……。あなたは本当に、この私に嫁いで来たのか?」

 手紙がどうやって届けられたのかわからないけど……、よく魔王に届いたよね。


 いや、それより、手紙の内容さぁ……。

 もうね……、魔王を挑発するなよっていうね……。


 この魔王ヴァランタンさんがけっこう礼儀正しい方だから、内容を敬語で説明してくれてるだけで、実際には『魔王よ、討伐するから首を洗って待っていろ』的なことが書かれていたんだろうなっていう……。

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