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靴の勇者令嬢~ハズレスキル『靴』を持つ侯爵令嬢は、勇者として魔王に嫁ぎ、最強の旦那様と共に真の悪を倒します~  作者: 赤林檎


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21.傀儡の魔王と最強の大魔王(前編)

 玉座の間の奥に明かりが灯り、玉座に座った王様がクリスティーヌをお姫様抱っこしていた。

 サンソンが「えぇ……っ!?」と声を上げた。


「えっ、あいつら、あんな風なの!? 俺が謁見した時は、王様は普通に威厳があったじゃねーか! あの地味な聖女様は、ただ横で突っ立ってただけだったしよ」

「サンソン様を利用するために、普通の王様と聖女を装っていたのでしょう」

 わたくしはサンソンの名前を呼んだ。サンソンがすごく嬉しそうにニヤニヤしながら、わたくしを見てきた。

 ああ、やっぱり『花の勇者様』と呼ぶんだった。これがなんとなく嫌で、ずっと名前で呼ばなかったんだよね……。


「クリスティーヌ、私がこの反逆者どもを始末しよう。あなたは『愛』のスキルを駆使して、この私を助けてくれるだろうか?」

「はい、王様……! もちろんでございます!」

「あなたを危ない目にあわせてしまうのが辛い……」

 王様とクリスティーヌは見つめあい、口づけをかわした。

 王様がクリスティーヌを床に下ろし、クリスティーヌの手を握ったまま立ち上がった。


 二人は手を繋いだまま、わたくしたちの前に歩いてきた。

 わたくしたちはそれぞれ武器を構えた。


「チェスナ侯爵令嬢、そんな男たちを引きつれて、冒険の旅などしているのですか? はしたないのではなくて?」

 クリスティーヌがわたくしを軽蔑した目で見てきた。

 わたくしはクリスティーヌを無視することにした。もはや相手にする価値もない。


「闇落ち聖女ちゃん、たまらんね! いいじゃん、いいじゃん! 俺のど真ん中を突いてるわ!」

 サンソンの息が荒くなってきた。ただ立っているだけなのに、人はこれほどまでに激しい息遣いになれるものなんだ……。


「サンソン様に差し上げますわ」

 わたくしは心からサンソンにほほ笑みかけた。

 ヴァランタンも同意するようにうなずいた。


「おう、あの闇落ち聖女ちゃんは任せろ! 俺がきっちり抑えてやるぜ!」

 サンソンは戦闘用のコマンド画面を操作し始めた。


「このわたくしの『愛』のスキルを抑止できるとでも!?」

 クリスティーヌの前にも戦闘用のコマンド画面が現れた。クリスティーヌもまた、なにかのスキルを使おうとしていた。


 王様の姿をしたデジレが、腰からレイピアを抜いた。緋色の絨毯の敷かれた床を強く踏みしめながら、わたくしにレイピアを向けて、まっすぐに突っ込んできた。


 ヴァランタンの長剣が大きく振るわれた。王様の姿をしたデジレは、長剣を避けて華麗に床を転がった。


「王様……!」

 クリスティーヌが悲痛な声で呼んだ。

 いつまでそんな恋愛ごっこを続けていられるかしら?


 部屋の隅に移動していたサンソンは、頭上に肉厚な花びらを持つ銀色の薔薇を咲かせていっていた。

 薔薇に見えた花は、どうやら薔薇ではなかったようだ。中心部が盛り上がり、銀色の身体に黄色の長い髪を持つ女性の姿になった。


「人!?」

 わたくしの驚きの声に、サンソンが「銀のドライアド・フラワー」とだけ返してくれた。


 ドライアド・フラワーは、人型の足の部分が伸びていき、両手でクリスティーヌに抱きついた。


「え!? なに!? なんなの!? 気持ち悪い!」

 ドライアド・フラワーは暴れるクリスティーヌを引きずってサンソンの元へと連れて行った。


 サンソンはその様子をたまに確認しながら、またコマンド画面を操作していた。


 クリスティーヌはいくら『愛』という強めらしいスキルを持っていても、城で王様に化けたデジレに庇護されていた身だ。実戦の経験はほとんどないだろう。魔物のいる洞窟から這い上がってきたサンソンに敵うはずがなかった。


「サンソン、助けて!」

 クリスティーヌの身体が薄桃色に輝いていた。おそらく、なにかのスキルを使っているのだろう。

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