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靴の勇者令嬢~ハズレスキル『靴』を持つ侯爵令嬢は、勇者として魔王に嫁ぎ、最強の旦那様と共に真の悪を倒します~  作者: 赤林檎


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17.魔王が大魔王に魔王討伐を勧めています(後編)

 地上に降り立った男の頭上から、一本の巨大な綿毛のようなものが飛び去っていった。

 わたくしは男と綿毛を見比べた。


「ここがドラスの町か?」

 男は横柄に訊ねてきた。なかなか良い体格をして、革袋を担いでいることから、おそらく冒険者だろう。


「ここはドラスの町だ。気をつけろ、魔王城が近いぞ!」

 町の住民である若い男が言った。すごいNPC感……。彼はこの言葉を旅人に告げるという使命を帯びて生まれてきたのだろう。


「滅んでるじゃねーかよ」

 男は金髪をかき上げると、血のような赤い瞳であたりを見まわした。

 感じが悪いし、なんとなく気持ちの悪い男だった。見た目は普通に見えなくもない。顔だってそこまで悪くはない。なのに、なぜだろう、なんだかこの人、すごく気持ちが悪いわ……。


「俺の大魔王ちゃんが死んでるんじゃねーだろーな?」

「なんて?」

 わたくしは思わず訊き返してしまった。


「あぁ? 大魔王ちゃんだよ。わっかんねーかなぁ。このへんにエロいのがいるんだろ?」

「なんて?」

 わたくしが真顔でまた同じことを問いかけてしまうと、男は舌打ちをした。


「うるせえな。俺が大魔王ちゃんをぶっ倒して、いろいろわからせてやるんだよ」

「私は辺境領カエの領主のユーベル・キャスタです。勇者様でいらっしゃいますか?」

 辺境伯がとても丁寧に応対してくれた。

 さすが辺境伯、いろいろなことに対処しながら年齢を重ねてきただけあるわ。

 どうやら大魔王を戦闘で弱らせた後、改心させようという考えの方であるようだった。


「俺はサンソン・ウキンシュ。ウキンシュ男爵家の四男だ。ジョブとスキルの鑑定会で『花の勇者』に認定された。俺こそ当代の真の勇者だ」

「おお、あのヤドームの町の大商人、ウキンシュ男爵の!」

 クロードが興奮したように言った。


「親父の知り合いか? てめぇ、商人だろ? なら、こいつを買えよ」

 サンソンは吐き捨てるように言うと、担いでいた革袋をクロードの足元に乱暴に放った。

 なんだろう……。この人、もうちょっとなんとかならないのだろうか……。


「拝見します」

 クロードは引きつった笑みを浮かべて、革袋の中身を出した。

 銀色に美しく輝く、神々しい鎧兜一式が現れた。


「それを売るなんてとんでもない!」

 ダミアンを抱えたエドガーが叫んだ。


「アァッ!?」

 サンソンが威嚇するような声を出した。


「これを売るなんてとんでもない!」

 クロードもまた、同じ内容を叫んだ。


「なんだよ、売れねーのかよ。大事なものかよ」

 サンソンは事態を理解したようだった。


「この防具はどうなさったのですか?」

 わたくしが問うと、サンソンはなぜかわたくしを上から下まで値踏みするように眺めた。


「ダリオン王国の王様がくれたんだよ。『勇者の鎧』とか言ってたけど、嘘なんじゃねーかな? 着られねーの」

 サンソンは先ほどよりも態度を柔らかくして、わたくしに比較的丁寧に答えてくれた。


 この『勇者の鎧』は、わたくしならば着られるだろう。

 わたくしは昔ながらの魔王を討つための勇者のはずだからだ。


 サンソンはおそらく、わたくしとは別なタイプの勇者だ。

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