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靴の勇者令嬢~ハズレスキル『靴』を持つ侯爵令嬢は、勇者として魔王に嫁ぎ、最強の旦那様と共に真の悪を倒します~  作者: 赤林檎


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15.靴はドラゴンを倒せるか(前編)

 わたくしはヴァランタンの魔法で洞窟から離脱し、大魔王城まで戻った。そこから、わたくしは走るヴァランタンに抱えられて、ドラスの町まで連れて行ってもらった。

 いきなりドラスの町までは移動できないようだった。人間の町は魔族の移動ポイントに登録できないのかもしれない。


 ドラスの町に着く前から、ドラスの町を襲っている巨大な魔物の姿が見えた。

 せっかく復興してきていた町を、緑色のドラゴンの吐く炎が焼き尽くそうとしていた。


 わたくしたちはドラゴンの脇を抜けて、いつもの中央広場まで行った。

 熱風が吹き荒れている中央広場では、町の住人や魔物たちが金属に変化させられていた。


 わたくしは、このように人を金属に変化させる魔法を知っていた。

 わたくしが前世で得た知識では、この魔法は仲間の身を守るために唱えられ、唱えた者は自己犠牲の大魔法で散ってゆく。胸が熱くなる展開専用魔法だったはずだ。


「戻ったか、ヴァランタン! 何度『かちんこちん』を唱えたことか! おい、大変だったんだぞ!」

 フェルディナンがわたくしたちに駆け寄ってきた。


「町の者たちを守ってくれたことには感謝するが、なぜあんなドラゴンごとき、さっさと倒さぬのだ!?」

「万が一にも間違いがあっては困るからだ!」

「間違いとは!?」

 言いあっているわたくしたちに向かって、ドラゴンが炎を吐きかけてきた。

 ヴァランタンは背負っていた長剣を抜いて、炎を切り裂いた。


「貴様のところの『強盗団を相手に無双した、最強の用心棒のダミアンさん』が、あいつに喰われて腹の中にいる。『かちんこちん』の魔法金属化が解けたら、消化されてしまうかもしれない」

「なぜ喰われたりしたのだ!? そんなことになる前に倒せ!」

「あいつ、素早いだろ!? 誰よりも早くドラゴンに向かって体当たりしに飛んでいって、そのまま飲まれてしまった。俺様はそれから延々と『かちんこちん』を唱えて、魔法金属化させて守ってやっていたのだ。文句を言われる筋合いなどないわ!」


 わたくしはダミアンのことを思い出した。ダミアンはフェルディナンがここに来た時にも、魔王になんて明らかに敵いっこない魔物なのに、ヴァランタンの横に並んで迎え撃とうとしていた。


 ダミアンはエドガーにすごく懐いていたし、魔物のお友達もいっぱいいた。

 あの子は仲間を守るために、強い敵にも向かっていく勇気があった。

 そんなダミアンだからこそ、ヴァランタンはわたくしの靴箱として、あの子を選んだのだろう。


「お前はあいつらのトレーナーをしていただろう! 無駄死にするような戦い方はいけないと、ちゃんと教えろ!」

「貴様の配下ではないか! そのくらいの躾はしておけよ!」

 言い争いをしている二人の横で、わたくしはドラゴンを観察していた。

 わたくしも前世から知っている、ごく普通のドラゴンにしか見えない。


「そろそろまた『かちんこちん』をかけ直さねば!」

 フェルディナンが魔法を詠唱し、魔法金属化の効果が続くようにした。


「なぜ私たちは魔法金属化しないのだ!? 魔法金属化してもらいたいわけではないが、おかしいだろう!」

「俺様は勇者パーティーの一員ではないだろう」

「まあ、そうだが……。では、なぜ、町の住民や魔物たちは魔法金属化しているのだ?」

 フェルディナンの頬が朱に染まった。


「そんなこと、どうだって良いだろう!」

 どうやらフェルディナンはもうすっかりこの町の一員で、町のみんなや魔物たちを自分のパーティーのメンバーにしたのだろう。


 フェルディナンは、普通では考えられないような、すごい大所帯のパーティーを組めるようだ。おそらく、これほどの驚異的な人数のパーティーを組めるのは、フェルディナンの持つ『驚異』のスキルの一つだろう。

 驚異の魔王フェルディナンは、ヴァランタンが町の守りを任せたいと思っただけのことはある、たしかにすごいスキルを持っていた。


「私たちが動けるのは良いが、下手にドラゴンを討伐すると、ダミアンが一緒に消えてしまうかもしれんな」

「だから、俺様は『かちんこちん』を唱え続けて、お前たちが来るのを待っていたのだ! さっさとダミアンをドラゴンの腹から出せ!」

 わたくしたちは三人でドラゴンを見上げた。

 ドラゴンは大きく口を開けて、威嚇するような咆哮をあげた。

 おそらくダミアンは、咆哮が終わったくらいのタイミングでドラゴンに突っ込んでいって、そのまま飲まれてしまったのだろう。


「わたくしがドラゴンの腹に入って吐き出させます。ヴァランタン、『つよつよ』でわたくしを強化してください」

 わたくしはその場でピンクのベビーシューズになり、サイズを最小にした。

 ヴァランタンはわたくしに『つよつよ』をかけ、わたくしの身体は紫色に輝いた。

 フェルディナンがまた『かちんこちん』を唱えた。


 ドラゴンがしっぽでわたくしたち全員を薙ぎ払おうとした。

 ヴァランタンがわたくしを抱え、フェルディナンと一緒に飛び退って攻撃をかわした。おそらくドラゴン側からしたら「ミス!」という感じだろう。


 わたくしは『指定デザイン変更』でベビーシューズを靴紐を結ぶタイプに変更。ヴァランタンはわたくしの左右の紐を結びあわせて、左右バラバラなにらないようにしてくれた。


 フェルディナンがヴァランタンからわたくしを奪い取った。

 フェルディナンは、ドラゴンが咆哮を終えて口を閉じようとしている瞬間を狙い、わたくしをドラゴンの口に投げ入れた。


「おい――!」


 と叫ぶヴァランタンの声を遠くに聞きながら、わたくしはドラゴンの喉の奥へと転がっていき、そのまま飲み込まれた。

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