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靴の勇者令嬢~ハズレスキル『靴』を持つ侯爵令嬢は、勇者として魔王に嫁ぎ、最強の旦那様と共に真の悪を倒します~  作者: 赤林檎


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14.靴の勇者はついに旅立つ(前編)

 町の復興資金の調達も兼ねて、わたくしはついに旅立つことになった。

 ドラスの町の冒険者ギルドに所属して、クエストを受けることにしたのだ。

 スキルも『勇者とは冒険する者のこと』と主張しているので、冒険しないとね。


 わたくしたちは今、ツコシの町にほど近い、ラストラト山の山裾にある洞窟の入り口に立っていた。ツコシの町には、クロードの食堂の一つがある。


 わたくしはポールとエドガーが調達してきてくれた、『輝くドレス』という魔法を反射する力のあるドレスタイプの旅装に、剣と盾を装備していた。

 ヴァランタンは以前から持っていたという漆黒の鎧に、いつもの長剣を背負っていた。


 ラストダンジョン感のあるこの洞窟からは、『魔獣の骨』や『死んだ兵士のなれの果て』などの骸骨系のモンスターが沸いて出てきていた。骨ばかりの魔物たちは、決まった時間になるとツコシの町を襲い、引き上げて行くことを繰り返していた。


 この魔物たちの討伐をクロードが冒険者ギルドに依頼し、そのクエストをわたくしたちが受けたのだ。

 クロードから支払われる討伐の報酬は、すべてドラスの町の復興のために使う予定だった。


「どうやら魔王エーヴがデジレについたようだな……」

 わたくしとヴァランタンは、並んで洞窟に入っていった。もちろん横に並んでではなく、縦に並んでだ。

 勇者パーティーには伝統的な並び方というものがある。


 ――わたくしは勇者。仲間を従え、初めてダンジョンに挑む者なり。


「さあ、勇者よ、戦うが良い。哀れな者どもに永遠の眠りを与えてやるのだ」

 ヴァランタンが、『魔獣の骨』という魔物の前に立つわたくしを励ましてくれた。

 大魔王だけに、大魔王感のある言葉遣いだわ……。最後に『のだ』が付けられていなかったら、大魔王が最終決戦に挑む勇者に言っているようにしか聞こえないわ。


 ヴァランタンがわたくしの後ろから、『つよつよ』という攻撃力と守備力を増す複合補助呪文をかけてくれた。わたくしの身体は、ヴァランタンの魔法によって紫色に禍々しく輝いた。


 勇者が大魔王の魔法によって禍々しく輝いて良いものなのか、ちょっとだけ心配だわ……。


 わたくしは左手に装備している盾を掲げた。盾から氷の塊が飛び出して、魔獣の骨に襲いかかった。魔獣の骨はあっという間に砕け、銀貨となってダンジョンの土の上に散らばった。


 この氷結の盾は、スライムが装備していたブーメランと同じシリーズのものだった。ポールが旅立つわたくしに譲ってくれた品だ。

 この世界では、剣や盾などの手に持つものは武器屋で売られていて、鎧などの身に付けるものは防具屋で売られているらしかった。


 ドラスの町で防具屋を営んでいたイザベルという高齢の女主人は、デジレに襲われた夜から姿が見えないという。

 ポールはもしもイザベルが戻って来なかったら、武器と防具、両方を売る店をやるつもりだと言っていた。


「すごく簡単に倒せましたわ」

「良かったではないか」

 わたくしは銀貨を拾って革袋に入れた。

 あまりにもあっけなかった。

 魔王城前の町で売っている盾すごい。


 元は魔物だった得体のしれない骨たちは、かわいい表情などは一切しないし、悲惨な背景がありそうな様子もなくて、倒すことに罪悪感を覚える要素がなにもないのも良かった。


 氷の攻撃が効きにくい敵には、炎の攻撃もできた。ヴァランタンが宝物庫から出してきてくれた火焔の剣からは、火の玉が次々と放たれて、敵を焼き尽くしてくれた。


 わたくしはなんの苦労もなく、盾か剣を掲げるだけで敵が倒せて、銀貨や金貨が手に入り、レベルもアップしていった。


「そろそろスキルポイントがだいぶ溜まっただろう」

 ヴァランタンは指先で黒い渦を作り、そこから敷物を出してくれた。わたくしたちは洞窟でピクニックのように並んで座り、スキルポイントをふることにした。


『子供靴』

『その他の履物』

『知っている靴』


『知っている靴』がどういう意味かわからなかったので、試しに使ってみることにした。

 わたくしはステータス画面に表示されてきた靴から、ロマンチックな一足を選んで変身した。


「シャンタル嬢、どういうつもりだ!?」

 ヴァランタンがひどく慌てて、靴になったわたくしに触れようとして、迷った末にやめた。


「シャンタル嬢、早く元に戻ってくれ! シャンタル嬢!」

 ヴァランタンはわたくしから少し離れたところでひざまずき、なにかを警戒するようにあたりを見まわした。

 わたくしはヴァランタンがこんな怯えたような反応をするとは思わなかったので、慌てて元の人の姿に戻った。

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