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リリャの魔法学園  作者: 夜て
黄金の愛
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学園祭 青い残光

 図書館トロン主催の会場から抜け出して来た私は、学園の敷地の奥の飛行場がある土手にひとりで腰を下ろしていた。


 目の前の飛行場では、飛行部員たちが、一般の人たち相手に、飛行体験をさせていた。大人から子供まで人気で、大いに会場は盛り上がっていた。


『もういないんだよね…』


 去年の学園祭では女子生徒が長蛇の列で並んでいたことを思い出す。学園一の美男子がいなくなったことで、ここ最近の女子たちの顔色の悪さと欠席率の高さは留まるところを知らないようで、先生たちも困っている様子だった。

 そして、そこにマリア先輩も学園をやめたことで、二人は結ばれているんじゃないかと、噂がたち、それは、私が目覚めた後からもしぶとく続いていた。中には、その噂をする女子たちが、マリア先輩の悪口をいって溜まった鬱憤を晴らしているグループもあった。私は、そういった女子たちとすれ違うたびに『そうだよ、バーカ』と心の中で呟いていた。


 私も、担任のハンナ先生から二人が学園をやめたという情報だけが、正確な情報だったが、ラウル先輩からは、二人が置かれていた状況を知らされていたため、その後どうなったかは手に取るように分かっていた。


 二人は結ばれたのだ。それは、もっとも幸せな結末だった。


「羨ましい…」


 他の女子たちと違って、二人の関係に対してそう呟いた。愛する人同士で結ばれることの美しさと尊さに、賛美を送るのだ。それは、私にとってとても価値のあることだった。



 現在の時刻は、およそ午後三時半を過ぎたところで、ここからだんだんと空が暮れては、夜が近づき、学園祭の終わりも近づきつつあった。


『時間、無駄にしちゃったな…みんなと、お祭り回るはずだったのに………』


 それでも今はひとりでいたかった。心が空っぽで、何をするにもやる気がおきなかった。このまま日が暮れて夜になっても、自分はここに座っているんじゃないかと思った。それくらい、もう、何もしたくなかった。何も考えたくなかった。これもすべて、フルミーナのせいだった。


『違う、彼女は何も悪くない、それに、まだ、負けたわけじゃない…まだ、私にだって勝ち筋はあるはず…』


 まだ何も決まったわけじゃない。このフルミーナのことだって、自分が勝手に推論付けて彼女の想いを客観的な視点から見たにすぎず、そこから他人の本当の想いを当てることなど不可能だった。その人が本当に想っていることは、その人にしか分からないのだから。


『でも、勝ってどうするんだ…それで、フルミーナが、嫌だったり、我慢して辛かったら?それこそ、意味がないんだって、なんで、私は分からないのかな…』


 私は、土手の草をちぎっては、そこら辺にばらまくように捨ててを繰り返した。そうやって、何もかも、めちゃくちゃになればいいのにとすら思った。


 そう、結局のところ、自分がいくら相手のことが好きだったとしても、相手が自分のことを好きじゃなければ、何の意味もない。そこから先にあるのは、ただ、ただ、片思いする自分がいるだけで、それは苦しいだけで、常に自分の心を切り裂いているようなものだった。


『結ばれない恋ほど、辛いものはないよね…』


 失恋とは、大好きだったその相手に自分のことを全否定された気がして、苦しい以外の何もでもなかった。私は、そうとしか思えなかった。そして、今後は、こんなに好きという、大きな感情を持つことが許されないとなると、そんな行き場を失った感情を抱えて生きていくのは、苦しくて当然だった。


『だけど、そんな辛さも私は忘れちゃうのかな…』


 心というものが本当に人にあるのなら、きっと私の心は治らない病に掛かって死に向かっていた。このままいくと、感情の起伏が無くなり、人間ではなくなってしまう自分がいた。

 しかし、徐々にその辛いという感覚でさえ、自分の中から消え去っていくのなら、それでもいいのかもしれないと思った。

 私にとって、きっと、その失恋した時の痛みは自分では抱えきれないもので、それくらい、私は、フルミーナという女性のことを愛しているとも言えた。


『好きで、好きで、たまらない。こんな感情を抱かせてくれる、フルミーナのことが、私は好きなんだ…』


 一目惚れだったけれど、一目惚れする機会など人生であるかないかのもので、私はこの落ちた恋をどこまでも大切にして、成就させたかった。彼女を幸せにするのは私だけがよかった。そんな独占欲が湧いてくるほど、彼女のことを愛していた。彼女の人生の隣に少しでも長く私を置いて欲しかった。彼女の口から愛していると言われたかった。彼女とやりたいことがたくさんあった。頭の中の理想の彼女よりも、現実の彼女と笑っていたかった。


『愛してるよ、フルミーナ…』


 ひとり、土手の真ん中で縮こまっていると、後ろから声が掛かった。


「いた」


 後ろを振り向くとそこには、息を切らしているアガットの姿があった。


「アガット…?」


 彼女の様子から相当、走り回ったことが伺えた。


「リリャ、急いで来てくれ」


「どうしたの?」


「キアが、倒れたんだ」


 目を大きく見開いた。私は、すぐに土手の斜面から立ち上がると、背中に六つのリングを展開した。

 飛行リングの、二輪や、三輪で、飛行体験をしていた飛行場の人たちが、その六つのリングの異質な光景を見て、驚きの声をあげていた。


「場所は?」


「西館の保健室だ!!」


「先に行く」


 光り輝く背中に浮かび上がる六輪が悲鳴をあげるかのような音と共に急回転すると、その六つのリングが後光のような光を放ち、それは推進力となり、土手の坂から私を大空へと勢いよく舞い上げた。


 出し惜しみすることなく、六速の青で出力した。


 夕暮れ時の空に、青い閃光が一線を引いた。

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