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まさかwebで ミステリー大賞に リベンジする日が来るなんて!  作者: ふりまじん
ここは私がミステリー大賞にリベンジする事になるのだろうか?

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附記


『悪霊』の物語はおかしな所が沢山ある。そして、数回読んだあたりで違和感を感じた。

本当に横溝先生が翻訳したドイルの『霧の国』を売りたいと思ったのだろうか?と、疑問が湧く。


散々、横溝先生がどうこうと言っておいてなんなんだけれど、でも、何度か『悪霊』を読むと、その度に何か変だなと作品を読むと思ったりもする。だって、オカルト部分がおかしいんだもん。


「でも、今回は祖父江進一の犯行の過程を追うのではありませんの?ここで方向を…ええと、分岐?でしたかしら、それを違う方向で選んでよろしいのでしょうか?」

ナツメは私を見て聞いてきた。

「まあ、この枠は元々、『ミステリー大賞』のものだし、この話って広く頭を整理しないと上手くないのよね。」

私は苦笑する。そう、ここまで書くのでも、いろんな分岐や謎が増える。それを上手く頭の引き出しにしまわないとまた、エンディングのあたりで混乱してしまうかもしれない。

「整理…そうですわね、時間はたくさんありますもの。ゆっくりやりましょう。」

ナツメはなんだか嬉しそうだった。


「ねえ、『悪霊』って何文字くらいの物語にしようとしたんだと思う?」

私の問いにナツメは少し考えて、

「そうですね。当時は原稿用紙で考えたでしょうし、1枚400文字として、10万字、250枚くらいでしょうか?」

ナツメ、割といいところをついてくる。

「そうよね。コンテストとかでも5万字から10万字位が理想って感じだもんね。この『悪霊』はこの時点で5万字弱って感じだし内容から考えると数万字程度の中短編だった気がするわ。」

と、私は大雑把に『悪霊』の文字数を見てからそういった。

「では、あと数千字で解決したのではありませんか?物語的には園田さんが何かに気がついて、終盤感がありましたもの。」

ナツメは少し考えてそう言った。

「そう、だよね。でも、本当にそうかな?なんかさ、それだとやっぱりおかしいとも思うのよ。」

私はため息をついて『悪霊』の始めの部分、『発表者の附記』をナツメに見せる。

「まあ、確かにお話を聞いていると、ところどころ、おかしな部分があるとは思いましたけれど。」

ナツメは肩をすくめる。その姿に私は苦笑で返した。


「そうよね、私もはじめは、あと数回、文字数で言うと1万字位で終わるって思ってたんだ。この話、割とこの始めの『発表者の附記』の部分を適当に読み飛ばす人いると思うのよ。私だけじゃなく。」

私は言い訳がましく言った。

そう、こう言った作中作者が出てくるものは、読者はその部分を邪魔だと思うものだと思う。

まあ、明智小五郎とか、魅力的なキャラの場合を除いて、大概はプロローグっぽい感じで作者が物語の司会をするようでまあ、説明でしょ?と、読むのが面倒になるもんなのだ。そして、大概、読み飛ばしたところで問題はない。

「確かに、内容は事件の書いてある手紙を手にしたって説明ですものね。」

ナツメは附記を読みながらそう言った。

「うん。読者は事件が見たいのであって、事件と関係のないメタの住人のメイキング裏話はそれでなくても面倒臭く感じるんだよね。」

私は思わず頭を掻いた。私はそれでかろうじて生き延びてるんだけど。と、自分に突っ込みながら言葉を続ける。

「でも、この話をイベントに投稿して再び読み始めると、事態が変わるんだ。」



2025年、私は剛との約束の年をしみじみと感じていた。本当だったら皆んなで慰安旅行に名古屋にゆく予定だった。それが出来る最低限の金を用意し、そして、小説でなんとかモーニング1食分、剛にモーニングを渡す分のポイントを貯めることに成功していた。ただ、その時にはあれだけ行きたがっていた剛が、既にこの世からいなくなっていたんだけれど。そして、インバウンドや万博などの色々で旅費なども上がり、暑かった事もあって、去年の旅行をやめて、その一年でもう少し小説でお金を稼ごうと思った。


私にとって、小説を書く動機は剛の旅費の足しだった。そして、書き始めた時は、剛の面白エピソードを書いて『いいね』を貰って剛に見せてあげたようと思った。昔、「お前には本当に意味での友達はいない」と、喧嘩の買い言葉で言ってしまった事をその時、そっと謝りたかった。評価と好意的なコメントを貰って、そして、私はあんたの友人だって、アンタは自分で考えるより好かれる人物だと言いたかった。

人生、最初で最期の友人との旅行を剛にプレゼント出来るはずだった。


でも、剛は死んでしまったし、もう、私には書く理由はそれほど無くなった気がした。何にしても、数年、余暇を全てと言っていいほどかけて、やっと600円くらいしか稼げなかった、辛くて長い小説生活に一区切りをつけたかった。

だから、小説の全部を一度、売りたかった。全部を売って、そして、それが売れようが、売れなかろうがそれで一度、気持ちに区切りがつく気がした。もう、子供の頃に拾ったジュースの瓶とか、消費税を引き合いに自分の原稿料を考える、そんな事はやめようと思った。


だから、ほとんど書き上げて放置していた『幽霊作家』も投稿しようとした。あと、1話で話が終わる予定だった。完結ボタンは押せるって、そう信じてエントリーした。


みんなはどうかは知らないけど、私の場合、一度、物語を頭で作り上げて一人称で主人公が昔話をする、もしくは、主人公として物語を実況する、そんな感じで話を作っていた。


だから、小説家として書く、と、いうより、演じる に近いイメージなのかもしれない。

ので、本番で書き始めると、主人公の文月の性格とか思考で世界を見ている。

これは多分、三人称でも同じなんだと思う、私は文月として喫茶店で『東京マルノウチ音頭』を歌い、そして、婚約者のさっちゃんを思い、『悪霊』をなんとかしようと考えた。

2025年は万博の年で、剛との約束の年で、そして、明智小五郎のデビュー100周年だった。

区切りをつける最後のイベントとして、明智小五郎の作品を作りたいと思った。だから、彼を入れた。


まさか、これが未完の沼に引き込まれる事になろうなんて、私だって当時は予想してなかった。

明智は当初、向井が指摘するはずの 熊浦のモデルをズバリという役だった。物語を撹乱するトリックスターではない。


でも、人が増えたら物語は変わる。AIだって、途中で変な事を聞いたら今までの会話を忘れておかしな事を言い出すみたいだけれど、人間の頭も言うほど綺麗には整理はされない。整理されて見えても。


明智小五郎は乱歩のいる世界では存在しないし、乱歩ファンの不快感も怖かった。だから、登場するのは明智小五郎役の役者にした。

役者にしたので、向井は脚本家になる。この辺りは将棋でもするように流れに合わせて改変がされる。

私の場合、と、いうか、今回はこれがうまく機能しすぎた。

向井は、ちゃらんぽらんな性格から、脚本家として真面目に『悪霊』の結末を考え始め、


『第一発見者が犯人の可能性が高い』


なんて、名探偵のテンプレセリフまで言い出してなんだか調子のいい希望を話し出す。

で、それに文月が反応する。文月のワクワクした気持ちと助かったと言う安心感を感じながら、変わり始めた物語を追いかけることになった。


当時、私はオカルト関係で物語を突っ込みながら適当に面白い事を言って終わらせようと思っていた。

でも、文月がミステリーものとしての先を調べ始めたので付き合うしかなくなる。

まあ、それなりに私も釣られて楽しかったんだけれど。

で、和錠の事とかを調べていると、なんだか本当に密室で解決できるんじゃないかとか、そんな妄想に取り憑かれた。まあ、その話をすると違う分岐にゆくから、やめて、文月は『悪霊』の原稿を丹念に調べ始める。奴がノートを取り出すから、私もノートを片手にもう一度、『悪霊』を読み返す。


もう、何度読んだかわからない『悪霊』でも、文月としてみる『悪霊』は少し違って見えた。

何より驚いたのは、あの、私が面倒臭いといい加減にしか読めなかった『発見者の附記』を丹念に読み始め、あんなに面倒だと思ったその文を、私もまた、興味深く読み込めるようになったのである。



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