預鉢
平成時代、ファミリードラマが人気だった。
忘年会で盛り上がっていた時、庶務の爺さんが思い出したようにこう言った。
「しまった!あのドラマの最終回スペシャル、拡張版で2時間半だった。録画を間違えてしまった。」
爺さんの言ってるファミリードラマは当時、お化け番組と言われる人気のドラマで、半年くらい、ある家庭の姉妹の生活を通して色んな問題に姉妹が悩まされながらも家族と生きてゆく姿に視聴者が感情移入してイライラしたり同情したりと話題になった。そして、作中のその問題は最終回のスペシャルで回収される設定だった。
「あ、私見たよ。」と、みんなが口々に爺さんに言った。そして、揃ったようにこう答えた。
「皆、問題を解決させて幸せになるんだ。」
この答えに、爺さには悔しそうに叫ぶ。
「そんな事はわかってる!わかってるんだっ。」
ああ、懐かしい。見逃し配信がある現在、野球の延長でドラマが見られないとか、録画の失敗なんてないもんね。そして、そのドラマの俳優さんは毎回、名演技で視聴者を魅了した。だから、その演技を、物語の過程が大切だったのだ。
爺さんの叫びにみんな同情を込めた失笑を込めて、
「そうだね。」
と、言ったことを思い出した。
そう、結末がわかってもそれでいいというわけではない。
過程が大事って物語もあるのだ。実際、アガサクリスティーのミステリーなんて私は何回も、俳優を変えて、日本版も含めて何度も見てる。ミステリーのキモは犯人を上がるところとは言われるけど、クリスティーの物語はその描写や、ドラマの場合は女優さんのファッションや調度品、何度見ても新しいときめきを感じるものである。
祖父江進一もそんな類の物語の登場人物だと思う。
だから、犯人がわかったってどうにもならない。過程、過程を考えないといけないのである。
タイムスリップしないやつ!!!
「タイムスリップ、タイムスリップって、どんな結末を考えていらっしゃったの??」
ナツメは渋い顔で聞いてきた。なんて話そう??ここからの話はもっと複雑になるのである。
「そうね、この話って、考えるたびに分岐が増えるんだよ。で、まあ、面白いんだけれど、どれが本当の結末かわからなくなるんだけれど、ね。ここからは、『幽霊作家』ではなく、『ミステリー大賞』のための物語なんだ。」
私は話し始めた。なんで『悪霊』を追いかけると『ミステリー大賞』にリベンジする、ドキュメンタリーを書くWEB小説家の話になるのかを。
そう、江戸川乱歩の『悪霊』は本当に混乱する物語なのである。
乱歩本人が完結しないで生涯を終えたように、この話に決定的な1つの完結をつける事はもう出来ない。
この話には沢山のふわっとした分岐があって、矛盾もある。
それを追いかけると、分岐がまた増えるのである。そして、そこから金の香りが漂うから、欲につられて混乱するのである。
「欲、またそのような…もう、小説を書くのに欲だの金だのの話はやめてくれませんか。」
ナツメは非難がましく私を見る。もう、小説に夢を見過ぎてると思う。
「だって、本当の事だもん。お金って大事だし。魅力があるから人は金を払うんだもん。
でも、それはいいのよ。WEBで『金』を稼ぐってのはね、ゴールドラッシュのアメリカの川で砂金掘りするくらい大変なんだから。金が出そうだ。と、金を見つけた。は雲泥の差なんだ。
そんな簡単に手に入らないのよ。だから、いいのよ。夢なんだから。でも、そこはまあ、いいの。
私だって、タイムトリップが立ちはだかるなんて考えてないから 春の時代劇 イベントに参加したんだもん。」
私は頭が痛くなる。でも、ここでちゃんと整理しないといつまでも混乱する。
そう、この話はなんか色んなワードを詰め込んでいるので、見方を変えると色んな物語が始まるのである。分類してみる
現実世界
乱歩先生のメタ世界
横溝先生と『悪霊』の参考資料について
物語の世界
犯人と犯行カテゴリー
祖父江進一 犯人説
まずはここから始めようと思う。
この2つの分類から。そして、今からの話は現実世界のカテゴリーに入るのかもしれない。
乱歩先生の執筆動機を考えるようになってから考えた。果たしてどんな参考資料を使って物語を考えたのだろうか。という話を。




