汁 2
何にしても面倒なことである。まさか、味噌でこんなに捕まるとは思わなかった。
味噌、大豆の発酵食品である。日本のポピュラーな調味料ではあるけれど、わりと決まった製品しか使わないモノなのだ。
「もう、私が悪いんじゃないわ。GHQよ。戦後、GHQが、マヨネーズなんて持ってくるからいけないのよっ。」
と、苦し紛れに叫ぶ。
「何お話でしょう?マヨネーズは今までの話にどんな関係があるのですか?」
と、ナツメが苛立ったように言ってくる。まあ、そうだ、味噌の話からマヨネーズに飛ばれても混乱するだろう。でも、私には文句があるっ。
「あるわよっ。じゃあ、聞くけど、とれたて新鮮なきゅうりを食べるとしたら何をつける?」
「塩でしょうか、でも、味噌、そうですね、麦味噌なんて美味しいのではありませんか?」
ナツメ、あっさり味噌と答える。
「そうね、昭和の時代なら、私も迷わなかったわ。味噌一択だったと思うの。でも、令和の現在、私の心にはきゅうりにつける調理料はマヨ一択になっていたのよっ。恐ろしいわ。西洋文明!日本の千年の味噌文化をここまで浸食するなんて!ねえ、そう思わない?西洋化した私の舌はすっかり味噌の事を忘れていたのよ。」
ああ、本当に、味噌の方がヘルシーに違いないのに、やっぱりマヨネーズの誘惑に負けてしまうのよ。
なんて悲観する私を冷たい視線で見つめながらナツメは肩を落としてこう話し始めた。
「ああ、それは違いますわ。今、失念されているのはお客様への配慮と、おもてなしの心ですわ。私たちは小説の懐石料理を提供するのですし、お客様は去年の物語の続きを知りたいのではありませんか。」
ナツメにそう言われるとグウの音も出ない。
「うーん。まあね。でも、懐石料理のメニューが決まらないと話が続かないわ。」
「それはワタクシがお話を聞きながら考えますわ。まずは去年のお話をお伺いしたいところです。」
ナツメは穏やかに、そして、何かのめり込むように私を見る。
「は、あはは。うーん。そうね、何から話したらいいのかな。克也からは連絡ないし、乱歩の話をしようかな。」
と、なんとなくボヤいたらナツメは食いついてくる。
「そう、それです。江戸川乱歩の未完の謎。それをお聞きしたいのです。」
ナツメは私ににじり寄り、私はその勢いに押されながら話始めた。
「そうね、あれは、去年の今頃かしら…」
と、怪談の前置きのような言葉から私は去年の事を思い脱した。
去年、2025年は剛との約束の年だった。名古屋に慰安旅行をしようとそんな事を考えていた。
剛は独身のおっさんで、そんな奴と旅行というのは側から見たらおかしな気持ちになるのかもしれない。でも、お互い、恋愛体型ではないし、中高年だし、他にもメンバーがいるし、同じところで宿泊しないからいいやってそう思っていた。
剛は万年金がなかったし、私は往復のバス代の2万円をなんとか貯めて、剛はどうせ、夜行バスで帰ることになるだろうと思っていたから気にしてなかった。
いや、そうではないな、なんだかファンタジーな計画だったのだ。
だって、何年も叶わない夢見たいなモノだったし、お金がない剛のために小説を書くとか言った私も結局、お金儲けなんて小説では出来なかったのだから。
ムーンショットなのだ。だから、頑張って計画して、そして、奇跡を見たかったのだ。これはフリマ仲間の甲子園のようなそんな計画だったのだ。甲子園に行けないと諦めた時点でゲームセットなのだ。
ただ、私たちは高校生ではなかったから、いつまでも夢を追うことになったのだけれど。
それは地獄のような苦行だった。本当に、何度泣いたかわからないわ。でも、頑張った。そして、なんか500円分のポイントは貯めた。2025年ほぼ、ギリギリの事だった。
私は剛に草むしりとかいろんな雑用を頼み、そして、奴のバス代2万円を貯めた。そして、小説で、なんとか剛の分のワンコインでコーヒーとパンの付いてくる、お得なモーニングの500円を小説で貯められたのだった。
ただ、剛はその前にひっそりと死んでしまったけれど。
私は未完をなんとかしながら、剛との約束の年まで小説を書いた。剛は死んでしまったけれど、手にした500円で名古屋のモーニングを食べにゆこうを決めた。
500円分のギフト券を現金化するために漫画を買うことにした。そうだった。500円は24年にはたまっていたんだった。でも、電子書籍のその漫画は600円に値上がり?していた。
私は、500ポイントたまった嬉しさと、それを使う興奮で思わず、そんな日々の記事を書いて、それから買いに行っての100円足りないだったので、なんか、感想とかが来なくても恥ずかしかったのを思い出した。本当に、手に入れてから落ち着いて発表しないとな、と、今でも思う。
そこから100円を貯めるのに1年追加して、それで、2025年、生まれて初めて電子書籍の漫画を買った。すごく、嬉しかった。そして、何年も前からこの電子漫画を買うために置いておいた500円玉を旅費に加えたのだった。
世は大阪万博で盛り上がっていた。
そして、観光客が多すぎてやっぱり、26年にしようという話になった。
だから、参加メンバー3人分のモーニングの代金を稼いでみようと、去年はなんか頑張って小説を書いていた。
持てる全ての作品を収益化しようと思った。
そして、完結してなんか少しでもお金を稼ごうと思った。
だから、本当に、本当に、完結させようと頑張っていたんだわ。なんか、未完ばかりでふざけているように見えるかもしれないけれど。
でも、検索AIは私の名前を検索すると、なんか頑張ってる残念な作者のように説明してくれたから、頑張ってるとAIは判断しているんだ。とほほ
じゃなくて、
まあ、そんなこんなで、なんでも投稿しようと去年は頑張ったのよ。
で、前にイベント用に書いては見たものの締め切りに間に合わなかった作品があって、それを本格時代劇のイベントにエントリーしたんだわ。
あと一話で完結って作品だったから、楽勝だって思ったし、あと一話で終わりだから、なんか、色々と盛り上がっていたから、やってやれ!って気になったんだよね。
それが悪かったんだよな。まあ、今更だけど。
ついでに夢見は悪くて、剛の夢を見たり、ローマ法王が崩御されるし、なんだかんだとネタの多い一年だった。
まあ、その話は今はやめて、その時書いたのが『幽霊作家』という作品で、乱歩の未完の『悪霊』というが本当に未完になる少し前の、架空の出版社の文月という編集者がこの物語先を考えるところから話が始まるのだ。
この話に『悪霊』の解決編はない。
ただ、この話の登場人物の熊浦という人物のモデルは誰か、みたいな物語になる予定だったのだ。
ああ、なんで9割書いていたのに、誤字を直そうとしているうちに壮大な話になっていったんだろう?
全く、本当に、あの話は呪われている気がするけれど、まあ、私は『少しばかりの修正』から、大正時代のオカルト史に沼って行くことになるのだった。




