未完
ああ、面倒臭い話が出てきた。
江戸川乱歩。この数年確かにいじりまくっていた。
江戸川乱歩の著作権はすでに切れていた。そして、デビューや何やらが丁度、今から100年前に当たったから、なんだか目についたのだ。
そして、どうにも完結する話も、人気も出ない自作に疲れて、著作権の切れた作品の二次作品を考えていた。それなら、設定がしっかりしているから私にも完結する10万字の物語を考えられると思っていた。
でも、それほど簡単でもなかったし、自分の未完ですらどうにもならないのに、
何で、よりにもよって、あの、日本を代表する推理作家、江戸川乱歩の未完を抱え込む事になるなんて。
あー。面倒臭い。
「別に、そんなの考えてないし、あの謎にはさまざまな資料が必要になるんだよ。」
私はぼやくように言った。
ああ、私、何やっているんだろう?
「すごいですね。」
小林はのんびりした風に言う。
「いや、多分無理だよ。あの話を解決するなんて。でも、何か作ろうと考えてはいるんだ。ところで、小林くんって呼んでいい?」
私は話を変えようとした。
「ええ、大丈夫です。」
小林、どこまでも穏やかで人好きするキャラ。ナイス!
「いや。その、『くん』呼びって平気?」
「はぁ?特に気にしませんけれど。」
「そう?最近は『くん』とか『ちゃん』付で呼ぶのって良くないって風潮じゃない?」
私は心配になって聞いた。
「そうですか?僕は気にしませんけれど。」
「それは良かったわ。私、小林くんは君付けで呼びたいのよ。別に、年下だからじゃないわ。
怪人二十面相だって明智小五郎を『明智くん』って呼ぶじゃない?
『よくわかったね、明智さん。』って、二十面相が言ったらなんか締まらないもの。」
私は力説した。そう、そうよ。数年、ネットでぼやいた関係で明智小五郎ものも完結はさせたいの。
それには小林青年、あなたの協力が必要なの!必要な気がするの。
私の必死の訴えを聞いて山臥が笑った。
「何言ってるの?二十面相なんて、今時の若者はわからないよ。」
山臥に言われてハッとする。そうだった。最近、テレビで明智小五郎のドラマも見なくなっていた。
「え、知ってますよ。明智小五郎。アニメとかでも登場しますから。」
小林は楽しそうにそういった。それを聞きながら私は深夜アニメのさまざまな明智を思い出していた。
「そう、だね。でも、二十面相って知ってる?」
「はい。学校の図書館にも置いてありましたし。」
小林の言葉に、知的で穏やかな彼の人柄が滲んでいた。
「懐かしいな。卯月さんは二十面相を書くの?」
山臥に言われて私は否定した。
「いや、書かないよ。というか、私のライフか足りないと思う。それより、小林くんはオカルトが好きなの?」
私は興味津々で聞く。ここから、新しい小五郎、私の小五郎が飛び出すかもしれない。
「はい。おじさんが好きだったので。僕も好きなんです。」
「ああ、彼、隣の部落に住んでいるんだ。彼もSNSとかやってるんだ。」
山臥の言葉を小林はやんわりと否定する。
「SNSと言っても僕は卯月さんのような小説とかは書いてませんから。」
小林の言葉に私はギョッとした。
「いや、書いてるって趣味だし、これ、他で言わないでくれる?恥ずかしいから。山臥、アンタもだからねっ。」
私は小林に笑いかけながら山臥を睨んだ。




