エレニン彗星
「私、結構調べたら、2012年と 2025年が近いし事に気がついたんだよ。
13年周期ってのは太陽の活動期の11年周期というのと近いと言う事がわかった。
2012年も太陽の活発が激しくて黒点がいっぱい出たんだって。
今年も活動が活発だった。地震もあった。黒点と地震が関係あると何かの本に書いてあった。
そこまでは周期であり得る事よね?
でも、それだけじゃなかったのよ。そこにエレニン彗星ってのがやってくるのよ。」
私は呻いた。未完の地獄の奥底から込み上げる呪いのように。
あああ。なんだろう?これは。
それは2010年の事だった。ロシアのエレニンという人がこの彗星を発見した。で、この彗星が太陽と地球と一直線に並んだのが2011年3月11日らしい。
それが本当に影響があったのか、ないのかは分からない。でも、こんな話もあって、色々と話題になった気がする。3Iアトラスはそんな特異な位置には居ないと思うけれど。でも、人の深層心理には刷り込まれているのかもしれない。
「でも、2011年なら、13年じゃなくて14年じゃない?」
山臥、なかなか鋭い。
「まあ、それくらい。で、いいんじゃない?日本の十二支は12年。太陽の活動は11年。少しはずれても。」
私は苦笑した。どちらにしても都市伝説クラスの噂なのだ。
「まあ、ね。俺はビールが美味ければそれでいい。」
山臥はそう言ってビールを追加した。静かに25年が過ぎてゆく。
剛との約束を、さまざまな思いを乗せて…
明日、何かが変わるのだろうか?
多分、何も変わらないと思う。
1999年の7月のように、12月のように
2012年の12月のように、
2015年のように
そして、終わりは予想外なところでひっそりと訪れるのだろう。
剛が死んだ時のように、
お父さんが死んだ時のように…
「何、耽ってるんですかぁ。そんな惚けた顔をしてる場合じゃありませんよ。」
いきなり山臥が不自然に明るく聞いてきた。
「悪かったわね。もう、それにしても、みんな来ないわね。」
私はあれから30分も経ったことに少し寂しさを感じていた。
「まあ、そうですね。でも、いいじゃありませんか。こんな夜は、私と2人で夜空を見るのも悪くありませんぜ。」
「私?」
山臥が酔い始めたのを感じて面倒くさくなった。今度はどんな人格にレボリューションしたんだろう?
「ふふ。私。貴女のやさしい悪魔ですよ。」
山臥はそう言ってウインクをした。
「何がやさしいのよ!いや、そうね。本当に、今日は優しく紳士的に8時には帰ろうね。」
私は面倒くさくなってきた。もう、どちらにしても、今日は完結ボタンなんて押せはしないのだ。
「ええ?今日は素晴らしく澄んだ夜ですよ。3Iアトラスを見ましょうよ。」
見ましょうよ。だって、本当に人格が変わるんだから。
「見れないわよ。いい?3Iアトラスが接近って言っても、相当遠いんだから。それに、明日は平日で、明日も仕事があるんだから。もう少し飲んだら帰ろうよ。」
山臥の不穏な雰囲気に嫌な予感が込み上げる。悪酔いしないうちに早く帰らないと。
「寂しいな。まだ、5時にもなってないじゃないか。宵の口にも無kつてないよ。」
山臥の言い分は正しい気もするが、正しくもない気もする。
「いいのよ。中年のおばさんはシンデレラより早く帰るのよ。まあ、何か腹溜まりするものを食べてから、ね。」
私は笑った。
「それはいいですね。そして、もう少し、お話をしましょう。」
山臥はなんか食いついてくる。
「まあ、いいけど、とりあえず、なんか頼もうよ。」
私はそう言って、遥香さんが来ないのか、もう一度連絡を入れることにした。
今日はもう、彗星の話はしたくない気がした。




