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季節のデサートはマンゴープリンだった。これが季節なのかはわからないが美味しいからよしとした。

そして、ワインを美味そうに飲む山臥の世間話を聞きながら頭を落ち着ける。


「そういえば、克也さん、8月に富士山が爆発とか言ってたよ。」

私はそう言いながら、この話をどう終われせようか考えていた。

なんだか、最近、地震の速報が多いし滅多なことは書きたくないのだっけれど、書いてしまったからには、なんとか決着させないといけない。

「富士山の爆発…ロマンだよね。」

山臥は映画でも語る様にそう言った。まあ、仕方ない。昭和の時代、富士山の爆発は割と使われる素材だった。

江戸時代に噴火してから、次の噴火が近いとか言われていたし、世紀末はいろんな災害ものの映画が人気だったのだから。

「私には悪夢だよ…富士山、穏やかに過ごして欲しいわよ。」

私は渋い顔になる。富士山はうっすら雪が積もっているからいいのだ。

「克也くんが言ったんだろ?じゃ、富士山は安泰さっ。」

と、ういんくをする山臥を不謹慎に思いながらも納得する。克也の予言は基本、外れるのがお約束である。そうでなければ、今頃私はゾンビになってとうかいした自宅でデスシティでなんかと戦いながら、深夜アニメに未来を教えてもらっているはずだから。

「そうとも言えるけれど、なぁ。」



「そういえば、山臥さんって、霊が見えるんだよね?」

女性が集まる場所と帰るのが寂しいときに出てくるインチキくさい霊ではあるが。

「あ?ああ。視えるよ。でも、いつもとういわけじゃない。」

山臥は少しやるさなそうに笑う。いつもなら胡散臭いと文句を言うところだが、小説を書く様になると、このわざとらしさが逆に参考になる。小説もまた、多少のデフォルメが必要なんだけれど、それって無から考えるのは難しいのだ。

「わかってる。ええとー、病気の人のオーラとかに陰りが見えるんでしょ。」

話しやすい話題を振った。間違っても女の霊の話はしない。脱線するから。

「そうだね。オーラというか、その人が全体的に影に隠れるって、そんな感じかな?」

山臥は何かを思い出す様にゆっくりと、天井を見上がる様な仕草を何度かして言った。

「へー」

私は相槌を打ちながら、乱歩先生の近くには霊能者はいなかったんだな、と思った。

それは、インチキの多い業界なので金持ちは知り合わない方が無難な気がするけれど、オカルト小説を書くとなると凄く優越感が湧いてくる。

何しろ、あの、江戸川乱歩ですら混乱する文章を、モデルがいる分いい感じに書けるのだ。人によっては私小説の方が良いと言ってくれる読者だっているかもしれない。

「うん。俺は霊媒とか、そういうのは出来ないよ。ただ、人の多い場所に行くと、その人のところだけ、光が遮られている様な光景を見ることがあるんだ。

あと、俺の命を狙っている黒い女が、ね。」

と、ここで「俺に惚れちゃ、ダメだよ。」と言うのがお約束。

「そうなんだ。なんか、取り憑かれたりはしたことないの?」

「無いよ。やめてくれないか。そう言う話をすると寄ってくるから。」

山臥は少し、嫌そうな顔をした。そこで私もため息をつく。

「そうか、ごめん。そういえば、創作界もコンプラとかで心霊ものも書きづらくなったとか聞いたことあるな。心霊ものって、小説のジャンル的に失敗だったかな。」

私は江戸川乱歩の苦悩に少し共感する。ミステリーの心霊ものって、面倒臭い。

「そうだね。やめるなら、今、かもね。」

山臥のセリフに一瞬思考が止まる。漫画とかでこう言う場面によく言われるセリフ、こんなセリフ、本当に言う人いるんダァ!なんだか笑ってしまう。が、笑ってるばあいじゃない。

「もうね、エントリーして結果発表聞くだけなんだよ。連載中だけれど。遅いと思う。と、言うか、もう、結末つける方が近いと思うんだ。つかないんだけれど。」

私は情けなくなりながら説明する。ああ、そうだ、もう、数万字書いた。後はなんとか結末をつけさえすればそれで良いはずなのに。

「そうか、じゃあ、がんばらないとね。」

クスリと笑うその仕草が、昭和の少女漫画を思い出させる。おっさんだけど。

「うん。いま、登場人物整理していて頭が爆発しそうだよ。でも、90年近く昔の話で、たくさんの人が考察している、その話なのに、私が考えた様な事を考えた人っていないみたいなんだよね。しらんけど。多分。推理小説好きが考察するから、エクトプラズムの事なんて真面目に調べてなかったんだと思うんだ。

それに、考えれば、コンプラとかでも面倒だから、上位ランカーが参戦もして来なそうだし、私クラスには良いテーマだったかもしれない。うん。頑張って見るよ。」

わたしは自分を励ます様にいった。




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