5話 2度目の死
「すぅ、はぁぁぁ」
シンラ先生は呼吸を整え、右拳に赤い光を灯す。
「応えよ火の精霊、汝の使い手たる主人の前にその力を示せ、アグニ!!」
『ズオオオ』
シンラ先生がそう言うと、赤い光は瞬時に燃えさかる炎となり、その熱気が俺にまで伝わった。
す、すげぇ。
「さぁてユキよ、よぉく見とけよ」
そう話すと先生は、炎を纏った拳を脇腹近くに置き、正拳突きの構えをする。
「せいやぁぁぁ!!」
『ズドォン』
そうしてそのままシンラ先生は大岩に自身の拳をぶつけ、その勢いで拳を大岩を砕いた。
「な、なんですか今の……」
「にっししし、これが魔闘士の力よ」
シンラ先生は笑みを浮かべそう答えた。
こ、これはすごいぞ、これがあればパパンやママンは絶対救える。
よし俺もこれを学ぼう、そうすれば子供の俺でも大人に勝てる!
「シンラ先生!この力は子供の俺でも使えますか?」
「もちろんよ、まぁ物になるまでは1年はかかるけどな」
1年か、いやそれなら間に合うぞ。
襲撃があるのは大体ここから1年半後なわけだし。
それなら間に合う、間に合うぞ!
待っててねママン!それとパパン!
そうしてそこから俺の魔闘士に向けた、修行が始まった。
ーー8年後
「おいユキ!父さんと母さんはこれから、農場に行くけどお前も来るか?」
なんとなく庭を眺めていると、パパンがそう訊ねてきた。
「いやいいよ俺は、これからまた先生のところ行かないとだし」
「そうか……それなら仕方ないな」
パパンは悲しそうな顔を浮かべてそのまま立ち去っていく。
シンラ先生の元で魔闘士の修行を始めて8年、結局あの後、俺は1年で風の精霊と契約して強くなったけど、襲撃は起きなかった。
理由はわからないが、7歳の運命のあの日は、俺やパパンを殺した連中は現れずなんて事ない平和な日だった。
平和な日だったはずなのに、何か違和感が残り、モヤモヤが未だに俺の胸の中にはあった。
『バタン』
その時、家の中で何やら大きな物が倒れる音がした。
なんだろ、パパンが転けたのかな?
そう言って俺は音のする方へと歩き出す。
「親父?大丈夫かぁ……え?」
「……」
そこには、腹を刺され倒れるパパンとナイフを持つママンがいた。
「ごめんなさい、ごめんなさい2人とも、私にはこうするしかないの」
ママンはただ謝るばかりで、ナイフを手に持ったまま、ゆっくり俺へと近づいてくる。
「え、いや、なんだよ、どう言う事だよ、これ」
『グサッ』
そうして俺の腹にナイフが刺さり、意識はまた暗い闇の底に沈んでいくのだった。
ーー奥の部屋にて(ここから三人称視点となります)
ユキとその父が母親であるリリナに刺されたまさにその時、ユキの勉強机に置いてある日記がひとりでに開く。
『パラパラ』
そして日記は真ん中ほどのページで止まり、そのページに赤い文字が刻まれる。
"やり直し"
『パラパラ』
文字が刻まれると、また日記はひとりでに閉じていくのだった。




