8話 日課と無料ガチャ
強くなるために必要なことは――シンプルだ。
毎日、コツコツやること。
ソシャゲの鉄則。
ログイン。
ログインボーナス回収。
スタミナ消費。
スタミナが満タンのまま放置するのは、損だ。
回復するはずだった分を、捨ててるのと同じだからな。
そして――
無料単発ガチャ。
確率は低い。
だが。
数年に一度、化け物みたいな高レアを引いたことがある。
あれは、夢がある。
『……よし』
さっそく、ノルマをこなすか。
スマホをタップ。
ログインボーナス画面が表示される。
魔晶石+5。
『そういや……』
魔王ストリートは、朝5時更新だったな。
『……もうそんな時間か』
少し驚く。
スタミナ消費の周回に夢中で、時間の感覚が飛んでいたらしい。
『……どんだけ周回してたんだ俺』
軽く引く。
だが――効率はいい。
悪くない。
魔晶石の数を確認する。
『……ん?』
【魔晶石×110】
『……は?』
一瞬、思考が止まる。
『いや、待て』
落ち着いて考える。
『ああ……そういうことか』
魔王ストリートは――
ステージを初回クリアすると、報酬で魔晶石が50個もらえる。
『さっきの周回で……進んだ扱いになってるのか』
現実でも、ちゃんと反映されている。
ゲームのときは。
序盤は石に余裕があった。
だから――
石を割ってスタミナ回復。
レベルアップでスタミナ回復。
さらに周回。
効率重視で、ひたすら進めた。
だが、今は違う。
ここは現実だ。
『エリア移動がワンタップじゃない』
森を抜けるのも、全部“自力”。
『……そのうち探索は必要だな』
エリア報酬もあるはずだ。
魔晶石も回収できる。
だが――
『今じゃない』
まずは拠点。
安全な場所。
休める場所。
守れる場所。
『優先順位はそこだな』
ふと、横を見る。
リリンが、ぐったりしていた。
ぺたん、と地面に座り込んでいる。
肩で息をして、目がとろんとしている。
(つかれました……)
『……だろうな』
体は回復しても、心は回復しない。
それは、もうわかっている。
『今日は休ませるか』
少なくとも、周回は終わりだ。
『……でも』
やることが、ひとつ残っている。
『ノルマは全部終わらせる』
ログボよし。
スタミナ消費よし。
残るは――
無料単発ガチャ。
『……来いよ』
小さく呟く。
確率は低い。
わかってる。
でも――
『ここで引けるやつが、流れ持ってくんだよな』
指を、画面の上に置く。
ほんの少しだけ、止まる。
『……頼む』
タップ。
ピッ。
画面が、光る。
『来い……!』
なんかいいやつ、来い――!!




