7話 魔界の仕組み
俺は、リリンから話を聞いた。
この異世界――魔界。
その名は、グルンポーン。
魔界に生きるすべての存在は、
“魔素”というものを内包しているらしい。
魔素を多く持つ者ほど、強い。
それは単なる力ではなく――この世界のエネルギーそのものだ。
そして。
魔素が濃い土地は、豊かになる。
逆に薄くなれば、土地は痩せ、世界そのものが弱っていく。
「……」
リリスは、元魔王の部下。
その魔王が死んだことで、
このグルンポーンは不安定になっている。
だから――次の魔王を探している。
「……なるほどな」
大体は、ゲームどおりだ。
魔王ストリートでもそうだった。
魔王がいなくなった魔界。
そこに現れた“プレイヤー魔王”が、ガチャで眷属を集め――
勢力を拡大し、最終的に魔界を統一する。
そういうゲームだ。
魔王を名乗る連中も、山ほど出てきた。
『……だが』
視線を落とす。
それはあくまで“ゲーム”の話だ。
この世界では――
魔素を多く持つ者。
力のある者が、他を従え、土地に根を張ることで――
その場所の魔素は安定する。
つまり。
『強いやつが、そのまま正義か』
シンプルで、救いがない。
「……」
だが――
『どこまでがゲームどおりなんだ?』
そこが問題だ。
ゲームなら、順番に敵が出る。
レベルに応じた難易度。調整されたバランス。
だが、ここは現実だ。
『もし序盤で――』
『いきなり強敵が出てきたら?』
考えた瞬間、少しだけ背筋が冷える。
今の戦力。
ゴブリン(☆1)
スライム(☆1)
ゾンビ(☆1)
ゴブリンアーチャー(☆2)
ウルフ(☆2)
オーク(☆2)
スケルトンソルジャー(☆2)
魔力の指輪(☆2)
ボロ布のローブ(☆1)
そして――主力は☆3のリリン。
『……足りねぇな』
もし。
ゲーム後半レベルのやつが、いきなり現れたら。
勇者。魔人。上位悪魔。
そんなのが出てきたら――
『詰みだろ』
どれだけゲームに似ていようが、関係ない。
ここは現実。
リセットはない。
やり直しもない。
『死んだら――終わりだ』
その事実が、じわっと重くのしかかる。
「……まおーさま?」
リリンが、不安そうにこちらを見る。
『……いや』
思考を振り払う。
『問題ない』
嘘だ。
だが――今はそれでいい。
『やることは決まってる』
スマホを見る。
戦う。
回す。
強くなる。
それしかない。
『一刻も早く、力をつける』
小さく、息を吐く。
猫の体の奥で、妙に冷静な思考が回る。
『……生き残るためにな』
そのために――強くなるしかない。
そこで、ふと引っかかる。
『……待てよ』
視線を上げる。
森の奥。気配はあるが――まとまりがない。
『さっきから思ってたが』
『こいつら……連携してこないな』
ゲームのシステム上、そういうものだと思っていた。
だが――ここは現実だ。
遭遇はするが、
“群れ”として襲ってくる感じが薄い。
『リリン』
「は、はいっ」
『魔物って、群れないのか?』
少し考えてから、リリンは答える。
「……あまり、ないです」
『やっぱりか』
「魔物も、魔族も……」
「基本は、自分が一番って考えなので……」
『……ああ』
妙に納得する。
「種族が違うと、なおさらです」
「一緒にいることはあっても……」
「ちゃんと協力することは、ほとんどないです」
『……だから魔界はまとまってないのか』
「はい……」
小さく頷く。
「強い人がいても、その人だけで……」
「全体をまとめることは、難しいです」
『……なるほどな』
だからこそ――
魔王が必要になる。
『魔王ってのは』
『例外的に“まとめられる存在”ってわけか』
「……はい」
リリンが、まっすぐこちらを見る。
「まおーさまだけが……」
「みんなを従わせて、守って……」
「魔界を安定させられるんです」
『……』
つまり。
『普通じゃできないことをやるのが、魔王か』
ゲームでは当たり前だった“眷属システム”。
だが、現実では――
『これ、かなりチートだな』
種族が違っても関係なく従える。
統率も取れる。
戦闘終われば全回復。
『……そりゃ、統一できるわ』
逆に言えば。
それがなければ――
この世界は、ずっとバラバラのまま。
『……』
少しだけ、笑う。
『面白くなってきたな』
バラバラの魔界。
まとまらない魔物たち。
そこに――
全部まとめる“魔王”が現れた。
『……やることは決まってる』
スマホを握る。
戦う。
回す。
強くなる。
そして――
『全部、まとめてやる』




