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6話 スキル解放と初めての会話

(……ふう)


なでなでが、ようやく止まった。

ゴロゴロも収まる。


『危なかった……完全に支配されるとこだった』


隣を見る。


リリンが、ぺたんと座り込んでいる。

満足そうに、ふにゃっとした顔で笑っていた。


(えへへ……)


その姿を見た瞬間――


『……』


リリンに目が釘付けになっていた。

なぜか、胸の奥がざわつく。

落ち着かない。視線を、はずそうとしても――はずせない。


さっきまで戦っていた時とは違う、無防備な表情。

小さな肩が上下して、ほんのりと息が荒い。


汗で頬に張り付いたピンクの髪。

露出の多い服装のせいで、視線の置き場にも困る。


『……おい』


少し気まずさを感じ目を逸らす。

スマホ画面に目をやる。


『ん?』


画面の項目が――増えている。


今までなかったはずの欄。


【プレイヤースキル】


『……こんなのあったか?』


タップする。


表示されたのは――


5Lvスキル

【マジックハンド】

任意で前足を人間の手にできる。


10Lvスキル

【念話】

一定時間、誰にでも自分の言葉を頭に直接送ることが可能になる。

※受信はできない。相手は通常通り声で返す。


『……おお』


これはデカい。両方あったら便利なやつだ。


『手になるってマジか?』


即、発動。


――その瞬間。


にゅるっ。


「にゃっ!?」


自分の前足が――変形した。


黒い毛が引っ込み、

そこに現れたのは――


完全に“人間の手”。


『……』


開く。

閉じる。

指が動く。


『すげぇ……』


めちゃくちゃ動かしやすい。

というか――


『スマホ操作、神かこれ』


サクサク動く。

肉球とは別次元。


「……」


横を見る。


リリンが、固まっていた。


「……え」


(なにそれ……)


『ん?』


「……きもちわるいです……」


『言うな』


ドン引きしてる。

完全に引いてる。


『いや便利なんだってこれ』


試しにスマホを操作する。


スッ、スッ、スッ。


『うわ、快適』


感動レベル。


「……やめてください……」


(なんか怖い……)


『傷つくぞ普通に』


だが――


『これ、好きなときに戻せるのか』


意識を向ける。

すると――


すっ。


人間の手が、元の前足へと戻る。


「……ほっ」


あからさまに安心してるな


『でもこれ、かなり便利だぞ』


必要なときだけ手にして、

あとは猫のまま。


『……当たりスキルだな』


そして――


視線が下に落ちる。


念話。


『……これ』


ずっと欲しかったやつ。


『やるか』


発動。


――次の瞬間。


頭の中の“ぼんやり”が、はっきりとした。


『……聞こえるか?』


「えっ……!?」


リリンが目を見開く。


「こ、これ……!」


(ちゃんと……聞こえる……!)


『おお……』


初めてだ。


ちゃんと“言葉”として伝わる。


「ねこさん……?」


『ああ、俺だ』


「すごい……すごいです……!」


(ちゃんとお話できてる……!)


感情が一気に流れ込んでくる。

喜び。安心。興奮。


『やっと会話できるな』


「はい……!」


リリンがぱあっと笑う。


「えっと……あの……」


少し戸惑いながらも、口を開く。


「お名前……なんていうんですか……?」


『名前?』


その瞬間――止まる。


(……あれ?)


思い出そうとする。


前世の名前。

日本での名前。

確かにあったはずなのに――


(……出てこない)


『なんでだ?』


記憶はある。生活も、ゲームも覚えてる。


だが――


“名前”だけが、抜け落ちている。


「……ねこさん?」


リリンが不安そうに見る。


『……』


少しだけ、間があく。


そして。


『……俺の名前は』


口が勝手に動いた。

出てきたのは魔王ストリートのプレイヤーネーム。


『スケベ大魔王だ』


「……えっ」


面白半分でゲームプレイ時に付けた名前を

リアルで名乗る日が来ようとは…


一瞬の沈黙。


「……」

「……スケベ……大魔王?」


『……』


やっちまった。


完全にやっちまった。


『いや違うこれはだな』


言い訳しようとする。


だが――


「……ねこさんはまおーさまなんですか?」


リリンが、じっとこちらを見る。


『……そうらしいな』


俺もいきなり転生して実感はないが、状況的にはそうなる。


「……」


『俺は魔王だ』


一拍。


そして――


「……!」


ぱあっと、表情が明るくなる。


「よかった……!」


『は?』


「ずっと……さがしてたんです……!」


(やっと……みつけた……)


感情が、強く流れ込んでくる。


『探してた?』


「はい……!」


こくこくと頷く。


「ママに言われて……」


少しだけ言いよどむ。


「まおーさまを……見つけてって……」


『……ママ?』


「リリスっていいます」


その名前に、妙に引っかかる。


『リリス……』


どこかで聞いたような――

いや、ゲームか。


「わたし……」


リリンが、自分の手を見る。


「気づいたら……ここに呼ばれてて……」


「よくわからないまま……戦ってて……」


(こわかったです……)


『……』


そりゃそうだろうな。


『……悪いな』


「えっ?」


『巻き込んだみたいだ』


「……」


一瞬、きょとんとした顔になる。


「……でも」


小さく、笑う。


「まおーさまがいたので……」


(だいじょうぶでした……)


『……』


その言葉に、少しだけ詰まる。


なんだその信頼。


重いな。


でも――


悪くない。


『……そうか』


一息つく。


『じゃあ整理するぞ』


「はいっ」


『俺は魔王』


『お前は眷属』


「はい……!」


『で、お前はそのリリスに言われて俺を探してた』


「はいっ……!」


『……』


一瞬だけ、間が空く。


言葉にしなくても、状況はもう理解できていた。


『……なるほどな』


完全にゲームどおりだ。


リリンは最初に10連ガチャで必ず出てくるチュートリアルキャラだった。

ストーリーのメインキャラで、何度も見てきた存在だ。


なのに――


目の前にいるのは“本物”だ。


『……』


少しだけ、視線を逸らす。


『よろしくな、リリン』


「はいっ!」


元気よく頷く。


「スケベ大魔王さま!」


『フルで呼ぶな』


少しだけ、距離が縮まる。


ただの“命令する側とされる側”じゃない。


ちゃんとした関係。


そのとき。


リリンが、少しだけ真剣な顔になる。


「……まおーさま」


『ん?』


「さっきの……」


「声」


少しだけ視線を落とす。


「……うれしかったです」


『……』


「……こわかったんです」

「でも……まおーさまの声があって」

「ひとりじゃないって、思えました」


(こわくなかったです)


その感情が、まっすぐ伝わってくる。


『……そうか』


短く返す。


それ以上は、うまく言えない。


だが。


悪くない。


かなりいい。


まだ慣れないが――

少しずつゲームの世界に来たのだと実感する。

だが魔王ストリートにプレイヤースキルなんてなかった。


ゲームとの違いはどれくらいあるのか…

様々な思考がめぐる。


そのとき。


「……あの」


リリンが、遠慮がちにこちらを見る。

指先をもじもじと絡めながら、ちら、と上目遣い。


「……いいですか?」


『ん?』


一歩、近づいてくる。

……近い。

ほんのり甘い匂いがする。


「……なでても」


『……』


来たな。


『……まあ、いいぞ』


そう言った瞬間――

ぱあっ、と顔が明るくなる。


「はい……!」


嬉しそうに、小さく駆け寄ってくる。

とてとて、と足元まで来て――


ちょこん、と座る。

そのまま、そっと手が伸びる。


なで……なで……


『……』


指先が、やわらかい。

小さくて、あったかくて。

少しだけ震えているのがわかる。


ゴロゴロゴロ……

喉がなる。


……だから勝手に鳴るなって


止めようとしても、止まらない。

完全に猫の本能だ。


「えへへ……」


リリンが、心底嬉しそうに笑う。


「……あったかいです」


(やっぱり……落ち着きます……)


『……』


撫でられるたびに、感情が流れ込んでくる。


安心。


嬉しさ。


それと――少しの甘え。


なで……なで……


距離が、さらに近づく。

気づけば、リリンの顔がすぐそこにある。

頬が、ほんのり赤い。


「……まおーさま」


ぽつりと、小さく呼ばれる。


『……なんだ』


「……ほんとに、いました」


『……』


その一言に、胸の奥がわずかに揺れる。


なんだその信頼。重いな。

……いや、重すぎるだろ。

でも――

嫌じゃない。むしろ。


『……いいかもしれんな』


小さく息をつく。


なで……なで……


ゴロゴロゴロ……


猫の魔王と、悪魔の幼女。


奇妙な関係。


だが――


確実に、特別な距離になりつつある。


『……まあ』


……この関係が、どこまで続くかは知らない。

だが――

今は、悪くない。

お読みいただきありがとうございます。

読者様にお礼申し上げます。


評価ポイント、ブクマ、リアクション、感想

なんでもいいので反応もらえると作者が泣いて喜びます。


作品を書くモチベーションにも繋がりますので

何卒よろしくお願い申し上げます。

反応頂ければ更新頻度が上がります。

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