表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/56

52話 禁書庫

『気になるな』


俺は禁書庫の扉を見つめていた。


図書館の一番奥。


巨大な鉄扉。


分厚い鎖。


青白く光る魔法陣。


そして。


【禁書庫】


という文字。


どう見ても怪しい。


怪しさしかない。


隠し部屋。


封印された扉。


禁書庫。


そういう場所には大体ロクでもない物がある。


そして。


大体重要な情報もある。


俺は近付いてみる。


すると。


扉に刻まれた魔法陣が淡く光った。


ゴォォォ……


低い音が響く。


リリンが俺の後ろへ隠れた。


「ま、まおーさま……」


モエは逆に興味津々だった。


「開くの〜?♡」


ゼフィーは少し警戒している。


「お気を付けくださいまし」


『だな』


俺は慎重に前へ出る。


すると。


ピコン♪


スマホが反応した。


『ん?』


画面を見る。


────────────────


【禁書庫】


閲覧権限不足


現在権限:魔王領主Lv1


推奨権限:魔王領主Lv3


────────────────


『あっ』


駄目だった。


入れない。


ゲームだった。


完全にゲームだった。


『権限不足ってなんだよ』


さらに画面が切り替わる。


────────────────


禁書庫の利用条件


・領民人気70%


・領地ランク3


・図書館利用実績


────────────────


『なるほど』


つまり。


領地を発展させろという事らしい。


簡単には見せてくれないらしい。


俺は少し残念だった。


帰還方法。


混沌神。


魔王。


そういう情報がありそうだったからだ。


『まあ仕方ないか』


今は入れない。


だが。


条件は表示された。


つまり。


いずれ入れる。


その時だった。


モエが案内板を指差した。


「スケベちゃん♡」


『ん?』


「こっち見て〜♡」


そこには小さな説明文が書かれていた。


────────────────


禁書指定資料


・古代魔王史


・異界召喚記録


・神話級魔導書


・世界外観測記録


────────────────


『……』


俺は固まった。


異界召喚記録。


世界外観測記録。


思いっきり俺案件だった。


『見たい』


めちゃくちゃ見たい。


『絶対見る』


新たな目標ができた。


領地発展。


領民人気。


図書館利用。


全部上げる。


そして禁書庫へ入る。


俺が勝手に決意していると。


リリンが袖を引っ張った。


「まおーさま」


『ん?』


「こっちにもへんなほんがあります」


『変な本?』


案内された先を見る。


そこには一冊だけ。


妙に分厚い本が置かれていた。


表紙にはこう書かれている。


【はじめての領地経営】


『……』


『今の俺に必要なやつだ』


思わず手を伸ばしていた。


分厚い本だった。


辞書みたいに分厚い。


鈍器としても使えそうである。


『領地経営ってそんなに覚える事あるのか?』


少し嫌な予感がした。


だが。


今の俺は領主だ。


城がある。


領民がいる。


税金みたいな魔素徴収も始まった。


避けては通れない。


俺は近くの机へ飛び乗った。


リリン。


モエ。


ゼフィーも集まる。


図書館は静かだった。


高い天井。


並ぶ本棚。


窓から差し込む柔らかな光。


外の喧騒が嘘みたいだ。


俺は本を開いた。


────────────────


領地経営とは。


住民を豊かにし。


安全を守り。


未来を育てる事である。


────────────────


『おぉ』


思ったより真面目だった。


もっとゲーム攻略本みたいな内容かと思っていた。


ページをめくる。


────────────────


領地運営の基本


・食料


・衛生


・治安


・娯楽


────────────────


なるほど……


何のために必要なのか。


ちゃんと書かれている。


食料不足になれば不満が溜まる。


衛生面が悪ければ病気が増える。


治安が悪化すれば争いが起きる。


娯楽がなければ活気が失われる。


『なるほどな』


『領民人気ってこれか』


頭の中で線が繋がる。


人気。


満足度。


好感度。


名前は違う。


だが意味は同じだ。


領民が暮らしやすいかどうか。


それが数字で表示されているのだろう。


俺はページをめくる。


すると。


次の項目が目に入った。


────────────────


優秀な領主は全てを自分でやらない。


────────────────


『耳が痛い』


即座にそう思った。


続きを読む。


────────────────


代表者を任命せよ。


種族長。


村長。


隊長。


職人長。


信頼できる者に仕事を任せる事。


────────────────


『おぉ』


これは良い情報だった。


キャベツ。


まさに今やっている事だ。


ゴブリン達のまとめ役。


今後。


コボルトが増えたらコロ。


リザードマンが増えたらリザ。


そんな形になるかもしれない。


『やっぱ中間管理職って大事なんだな』


モエが首を傾げる。


「ちゅうかんかんりしょく?」


『偉い人と働く人の間にいる苦労人だ』


「大変そう♡」


『大変だぞ』


キャベツを見ながら言う。


今頃。


広場で胃を痛めているかもしれない。


少し同情した。


さらに読み進める。


────────────────


領地発展の近道


住民を増やす前に基盤を整えよ


────────────────


『あー』


納得した。


今の領地は。


城。


レストラン。


スーパー銭湯。


農園。


工房。


色々増えた。


だが。


住宅地はまだない。


村もない。


ゴブリン達は仮住まい状態だ。


まずは基盤。


その後で人口増加。


本はそう教えていた。


『焦るなって事か』


千人。


二千人。


そんな話を考えていた。


だが。


まずは三十人。


その三十人を幸せにする。


そこから始めろ。


そう書いてある気がした。


不思議だった。


攻略本を読んでいるようだ。


妙に納得してしまう。


その時。


リリンが隣で声を上げた。


「あっ!」


『ん?』


リリンが指差したページを見る。


そこには。


────────────────


住民満足度を上げる方法


・食事


・清潔


・安全


・交流


────────────────


と書かれていた。


「おふろあります!」


「ごはんあります!」


『あるな』


「じゃあだいじょうぶです!」


『そう単純でもないと思うぞ』


だが。


少し笑ってしまった。


確かに。


スーパー銭湯とレストランは。


かなり強い気がする。


少なくとも俺でも住みたい。


そんな事を考えながら。


俺は本を閉じた。


『なるほど』


『結構参考になるな』


攻略本。


説明書。


当たり前のようだが大切な事。


今の領地に足りないもの。


これから必要なもの。


意外と見えてくる。


そして。


本の最後には。


一文だけ。


大きく書かれていた。


────────────────


領地とは建物ではない。


人である。


────────────────


『……』


俺は少しだけ黙る。


城。


施設。


農園。


工房。


それらも大事だ。


だが。


本当に大事なのは。


そこに住む者達。


キャベツ。


コロ。


リリン。


モエ。


ゼフィー。


そして三十二人のゴブリン達。


『人か』


領民人気3%。


まだまだ先は長い。


だが。


少しだけ。


何を目指せばいいのか分かった気がした。


意外と学ぶ事がある。


時間がある時は図書館で読書も悪くないかもしれない。


ガチャで眷属を増やせない今。


頼れるのは今いる眷属と領民達だ。


眷属を増やせないなら領民を増やす。


生活を豊かにする。


領地を発展させる。


やる事は山ほどある。


『よし』


『しばらくは領地経営に力を入れるか』


領民人気3%。


まだまだ先は長い。


だが。


目指すべき方向は見えてきた。


俺は本を閉じる。


まずはゴブリン村の整備。


敵対反応の排除。


話はそこからだ。


そうして俺達は図書館を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ