48話 返品したい
命名を終えた。
ゴブリン達への指示も出した。
キャベツには全体指揮。
ピーマンには探索。
新しく仲間になった眷属達にも役割を与えた。
広場では既にゴブリン達が動き始めている。
資材を運ぶ者。
温泉へ向かう者。
レストランの匂いに釣られている者。
かなり騒がしい。
だが悪くない。
領地らしくなってきた。
『さて』
俺はスマホを取り出した。
今日のやる事を確認しよう。
スマホを操作する。
そしてステータスを開いた。
そこで違和感に気付いた。
『ん?』
二度見する。
もう一度見る。
やっぱりおかしい。
『……あれ?』
プレイヤーレベル。
Lv33。
『え?』
昨日までLv24だったはずだ。
見間違いではない。
何度見ても33。
プレイヤースキルも増えている。
『なんで?』
探索はしていない。
眷属達も出撃させていない。
魔王戦の後は温泉。
買い物。
施設確認。
それくらいだ。
経験値を稼げるような事は何もしていない。
『魔王戦……?』
いや。
あれは負けた。
ボロ負けだった。
勝利どころか手も足も出なかった。
それなのに経験値が入るのか?
しかも9レベル。
最近はレベルも上がりにくくなっていた。
そんな状況で一気に9レベル。
確かに魔王は、とてつもなく強かった。
異常だった。
あの強さなら負けイベントでも、それくらい経験値が入るのか?
『理由は魔王戦で間違いないだろう……』
そこで。
ふと。
脳裏に蘇る。
あの時の表示。
ガチャ演出。
そして。
魔王召喚。
【SUR】
【異世界の魔王】
【個体名 断角王ガルンディアス】
【召喚完了】
【眷属登録されました】
『……あっ』
思わず固まった。
そうだ。
あった。
確かにあった。
眷属登録。
あの表示。
『眷属』
つまり。
俺の経験値共有対象。
『まさか……』
背筋が少し寒くなる。
俺の眷属は戦闘すると経験値が入る。
その経験値は俺にも共有される。
なら。
もし。
あの後。
ガルンディアスが戦闘していたら?
『経験値が入る』
↓
『俺がレベルアップ』
↓
『Lv24から33Lv』
『……』
あり得る。
むしろそれしかない。
あの化け物魔王。
俺と別れた後も、
どこかで戦っていたのだろう。
あの様子だと、
運営に殴り込みでもかけたのかもしれない。
というか。
最後に
「念話の気配を辿って殺す」
とか言っていたし。
その結果。
大量の経験値を獲得した。
そして。
その経験値が俺にも流れ込んだ。
『待てよ』
そこで。
さらに恐ろしい事に気付く。
『経験値が俺に入った』
『って事は』
『魔王にも経験値入ってるんじゃないか?』
沈黙。
嫌な予感しかしない。
俺は震える前足でスマホを操作する。
ガルンディアス。
あの怪物。
あれ以上強くなるのか?
『いやいやいや』
やめろ。
考えるな。
だが現状把握は必要だ。
俺は眷属一覧を開く。
スクロール。
キャベツ。
コロ。
ホネ。
ピーマン。
ガウ。
フラン。
そして。
一番下。
そこにいた。
【断角王ガルンディアス】
『いた!』
しっかりいた。
しかも。
レベル。
Lv33。
『うわぁ……』
俺と同じだった。
現在の上限値。
最大レベル。
そこまで育ち切っている。
『やばい!』
率直な感想だった。
『できれば二度と会いたくない』
心の底からそう思う。
あの戦闘を思い出す。
絶望。
威圧感。
理不尽な強さ。
圧倒的暴力。
あんな相手が。
今はさらに強くなっている可能性が高い。
『この眷属』
『返品できないかな』
無理だろうな。
知ってる。
絶対無理だ。
だが言いたい。
返品したい。
今すぐ。
『……』
俺はしばらくガルンディアスの名前を見つめた。
そして。
ふと思い出す。
新機能。
【ご意見BOX】
『そうだ』
俺は画面を開く。
運営への意見送信機能。
まるでゲームのお問い合わせフォームである。
使ってみるか。
駄目元だ。
本当に駄目元。
俺は入力欄へ文字を書く。
【魔王を何とかしてください】
送信。
ポチッ。
『よし!』
やれる事はやった。
満足である。
たぶん返事は来ない。
だが言うだけはタダだ。
それに。
正直。
俺はまだ運営をよく分かっていない。
混沌神。
調停者気取りのバケモノ。
色々言われていた。
だが。
俺からすると。
ゲームの運営みたいなものだ。
もちろん怖い。
めちゃくちゃ怖い。
俺の能力を弄れる。
俺をこの世界へ呼んだ。
常に観察している。
完全に上位存在である。
だが。
だからこそ逆らう気もない。
勝てる気がしない。
『それなら』
『上手く付き合った方がいい』
俺はそう判断した。
魔界の不具合。
世界の異常。
それを直すために俺を呼んだ。
そう言っていた。
なら。
本当に世界を守ろうとしている可能性もある。
もちろん。
全部嘘かもしれない。
黒幕かもしれない。
諸悪の根源かもしれない。
正直。
判断材料が足りなかった。
『分からん』
本当に分からない。
だから今は保留だ。
敵か。
味方か。
それはこれから見極めればいい。
『まあ』
俺はスマホを閉じる。
『俺にできる事をやるだけか』
城。
仲間。
領民。
やる事は山ほどある。
魔王の事は考えたくない。
本当に考えたくない。
だが。
眷属一覧の一番下には。
しっかりと表示されていた。
【断角王ガルンディアス Lv33】
『……』
『やっぱ返品できないかなぁ』
切実だった……




