表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/56

41話 移動手段

スーパーストア。


そこは危険な場所だった。


財布の紐が緩むとか、そういうレベルではない。


そもそも財布が存在しないのに、無限に欲しい物が増えていく。


『やばいなこの店……』


俺はカートを見つめる。


既にかなり積まれていた。


転移標識。


高速滑走板。


魔導炭酸。


黒蜜ドーナツ。


キラキラ苺ケーキ。


いつの間にか生活用品まで増えている。


誰だ。


観葉植物を入れたの。


「モエ〜♡」


モエだった。


『なんでだよ』


「だってオシャレじゃん?」


『まあ分かるけど』


リリンはスイーツを抱えて幸せそうだった。


ゼフィーは何故か高級そうな紅茶セットを見ている。


完全に買い物モードである。



だが。


今の俺達には金がない。


なので。


まずは素材換金である。


『よし』


『売るぞ』


スマホを開く。


素材一覧。


周回で集めまくった素材が並んでいた。


魔狼の牙。


黒鉄鉱石。


魔石。


巨大昆虫の甲殻。


謎肉。


用途不明の骨。


その他いろいろ。


大量。


『……めちゃくちゃ溜め込んでたな』


今までは。


とりあえず拾う。


とりあえず保管。


そんな感じだった。


だが。


よく考えると。


現状では、ほとんど使っていない。


施設建築に使う訳でもなく。


装備クラフトも未解放。


ただ溜め込んでいるだけだった。


『なら』


『一回現金化した方がいいな』


素材を抱え込むより。


今は生活環境を整えた方が絶対重要だ。


移動手段。


家具。


便利アイテム。


そういう物の方が今後の効率へ直結する。


『売れるもんは全部売る!』


「おぉ〜♡」


モエがテンションを上げる。


「爆買いタイムだぁ♡」


『言い方が危険なんよ』



セルフレジ前。


俺は次々と素材を取り出していく。


スマホ操作。


光。


素材出現。


ピッ。


【魔狼の牙 150マカ】


ピッ。


【黒鉄鉱石 300マカ】


ピッ。


【変異甲殻 420マカ】


ピッ。


ピッ。


ピッ。


次々スキャンされていく。


レジ画面の数字がどんどん増えていった。


『おぉぉ……』


気持ちいい。


めちゃくちゃ売れていく。


完全に換金タイムである。


チャリン。


チャリン。


チャリン。


マカが大量に出てきた。


金貨っぽいもの。


銀貨っぽいもの。


『すげぇ……』


異世界のATMみたいだった。


ゼフィーが感心する。


「素材経済が成立しておりますのね」


『ゲームだと売値安かったのに……』


現実になると普通に金になるらしい。


しかも。


周回で素材を集めまくっていた俺達は。


想像以上に資産家だった。


『うぉ……かなりあるぞこれ』


リリンが驚く。


「ま、魔王さま……お金持ちです……!」


モエはもう完全に買い物モードだった。


「スケベちゃん!」


「転移標識いっぱい買お!!」


『それな』


俺も同意する。


これは絶対必要だ。


領地が広すぎる。


徒歩移動とかやってられない。


『転移標識は在庫全部だ』


「「おぉ〜!!」」


モエとリリンが盛り上がる。


店員もいないのにテンションだけは高かった。



その後。


大量購入が始まった。


転移標識。


高速滑走板。


魔導炭酸。


ベッド。


ソファー。


照明。


観葉植物。


魔導マッサージチェアー。


『これいる?』


「いる♡」


モエが即答する。


『ですよねー』


リリンはスイーツ山盛り。


ゼフィーは生活用品をバランスよく選んでいた。


完全に買い物センスが大人だった。



そして。


買い物を楽しんだあと。


俺達は、ようやく本来の目的へ戻る。


移動手段の確認である。


まず。


■転移標識 ☆3


これ。


めちゃくちゃ便利そう。


だが。


説明を読んで気づいた。


『登録必要なのか』


登録地点。


設置。


座標固定。


つまり。


今すぐ自由移動できる訳ではない。


『領内回って設置しないと駄目だな』


城。


スーパー銭湯。


レストラン。


採掘場。


今後増える施設。


全部に置きたい。


『これ後々めちゃくちゃ重要になるな……』


『……待てよ』


俺は転移標識を見る。


黒い石柱。


表面には魔法陣。


そして説明文。


【登録地点へ短距離転移可能】


『つまり』


『先に登録しとけばいいんだよな?』


ゼフィーが頷く。


「おそらくそうですわね」


『じゃあ』


『今やっとこう』


せっかく来たのだ。


後回しにする理由がない。


俺はスーパーストア入口付近へ転移標識を設置した。


ドン。


黒い石柱が地面へ突き刺さる。


次の瞬間。


魔法陣が展開。


淡い光が周囲へ広がった。


【登録完了】


【転移地点:スーパーストア】


『おぉ』


思わず声が出る。


モエも目を輝かせた。


「もう登録できたの!?」


『らしい』


『便利すぎるだろこれ』


リリンも石柱を見上げている。


「ま、魔法みたいです……!」


『いや魔法だろ』


「そうでしたっ」


少し天然だった。


すると。


スマホ画面が変化する。


【登録地点】


・魔王城


・スーパーストア


『おぉぉ!?』


もう一覧が増えていた。


分かりやすい。


『完全にファストトラベルだなこれ……』


ゲームで見たやつだった。


今後。


スーパー銭湯。


レストラン。


採掘場。


農園。


図書館。


全部登録していけば。


この広すぎる領地も快適になる。


『よし』


『まず一個目完了』


妙な達成感があった。



次。


■魔導キックボード ☆1


試してみる。


『……』


『無理だこれ』


猫である。


短足である。


そもそも蹴れない。


バランスも悪い。


めちゃくちゃ危ない。


ヨタヨタ。


フラッ。


ガコンッ。


『にゃあっ!?』


前輪に引っかかって、そのまま盛大に転がった。


「ぷっ」


モエが吹き出す。


「スケベちゃんヨチヨチでかわい〜♡」


『うるせぇ!!』


普通に難しかった。


というか、猫に乗らせる前提で作られていない。


そんな俺を見ていたリリンが、小さく手を挙げる。


「まおーさま。わたしが乗せる?」


『乗せる?』


次の瞬間。


リリンは俺をひょいっと抱き上げ、そのままキックボードへ乗った。


『お、おぉ?』


「えへへ♪」


リリンが前に立ち、俺は腕の中。


その状態でキックボードがスーッと進み始める。


『おおおお!?』


思ったより速い。


そして妙に快適。


風が毛を揺らす。


「どうですか魔王様?」


『……悪くない』


むしろ。


ちょっと楽しい。


「ふふっ♪」


『だがこれ、完全に俺が運ばれてるだけじゃねぇか……』


「かわいいので問題ありません!」


『問題大アリだわ!! 魔王の威厳が消し飛ぶ!!』



さらに。


気になっていた商品を試してみる。


■自走式荷車 ☆2

荷物運搬用


『これも便利そうだな』


見た目は木製の荷車。


だが。


車輪部分へ魔法陣が刻まれている。


『自走式って事は……』


試しに押してみる。


すると。


ウィィン――。


荷車が勝手に動き出した。


『おぉ!?』


しかも。


めちゃくちゃ静か。


荷物を積むと、自動で後ろをついてくる。


『賢っ!?』


モエが飛び乗る。


「わーい♡」


『乗るな』


だが。


荷車は普通に動いていた。


『意外とパワーあるな……』


フランが興味深そうに見つめている。


無言。


だが。


明らかに“便利そう”と思っていた。


『お前これ絶対気に入るだろ』


「……」


コクッ。


頷いた。


珍しく分かりやすい反応だった。


さらに。


■騎乗用ハーネス ☆2

大型眷属へ騎乗可能


『おぉ』


完全にモンスターライド用装備だった。


革製。


だが。


金属部分へ魔法陣が刻まれている。


説明には。


【騎乗時の安定性向上】


【眷属との連携補助】


などと書かれていた。


『これガウ用じゃん』


「ガウ♪」


名前を呼ばれたガウが尻尾を振る。


試しに装着してみる。


カチッ。


魔法陣が淡く光った。


すると。


『おぉ!?』


めちゃくちゃ安定した。


乗りやすい。


普通に座れる。


落ちる気がしない。


『すげぇ……』


しかも。


ガウ側の動きも分かりやすい。


身体の重心移動が自然に伝わってくる。


「ガウッ!」


そのままガウが走り出す。


ダッ!!


速い。


『うぉぉぉぉ!?』


風が吹き抜ける。


しかも。


めちゃくちゃ快適だった。


『乗り心地いいなこれ!?』


モエが羨ましそうに叫ぶ。


「もえも乗りたーい♡」


モエが目を輝かせる。


『ん?』


『じゃあ乗るか?』


「いいのっ!?」


『ガウが嫌じゃなければな』


すると。


「ガウ♪」


ガウが嬉しそうに尻尾を振った。


完全にOKらしい。


「やったぁ♡」


モエが勢いよく飛び乗る。


だが。


「わぷっ!?」


バランスを崩した。


『危なっ!?』


落ちそうになる。


だが。


騎乗用ハーネスが淡く光った。


モエの身体が自然と安定する。


「おぉ〜♡」


「すごっ♡」


普通に座れた。


しかも。


めちゃくちゃ乗り心地がいい。


ガウの毛並みもふもふ。


「これやばぁ♡」


「ずっと乗ってたい〜♡」


『お前それ絶対ダメになるやつ』


モエは完全に気に入ったらしい。


ガウも嬉しそうだった。


「ガウッ♪」


そのまま。


ダッ!!


走り出す。


「きゃぁぁぁ♡」


モエが楽しそうに笑う。


速い。


だが。


安定感が凄い。


モエの髪が風で揺れる。


「たのしぃぃぃ♡」


『おぉ……』


なんか普通に絵になる。


リリンも羨ましそうだった。


「い、いいなぁ……♡」


ゼフィーは少し呆れたように微笑む。


「完全に遊び始めましたわね……」


『まあ気持ちは分かる』


実際。


かなり楽しい。


しかも。


移動速度が普通に速い。


『これ、領地巡回かなり楽になるな』


モエがガウへ抱きつきながら叫ぶ。


「ガウちゃんしゅごーい♡」


「もふもふタクシーだぁ♡」


「ガウ〜♪」


ガウも満更ではなさそうだった。


そして。


最後。


■高速滑走板 ☆2


『これだ』


黒いボード。


完全にホバーボードだ。


魔法陣みたいな紋様が刻まれている。


説明には。


【魔力消費で浮遊移動可能】


と書かれていた。


『……乗るか』


ホバーボードへ前足を乗せる。


すると。


ブゥン――。


足元が光った。


次の瞬間。


ふわっ。


『おぉ!?』


浮いた。


地面から数十センチ。


ボードが浮遊している。


『すげぇ!!』


しかも。


速い。


スゥゥゥゥ――ッ!!


滑るように進む。


『うぉぉぉぉ!?』


めちゃくちゃ楽しい。


風が気持ちいい。


浮いている。


完全にホバーボードだった。


モエが叫ぶ。


「かっこいぃぃ♡」


リリンも目を輝かせる。


「ま、魔王さま飛んでますっ!」


『いやこれ最高だわ!!』


しかも。


魔力消費がほとんど気にならない。


『……あれ?』


全然疲れない。


もっと魔力が減ると思っていた。


だが。


全く問題ない。


『俺、魔力かなり多いのか?』


戦闘能力は低い。


でも。


魔力だけは別らしい。


高速滑走板がスイスイ動く。


曲がる。


加速する。


浮く。


『おぉぉぉ!!』


『慣れたら自由自在に飛べそうだなこれ!!』


楽しい。


めちゃくちゃ楽しい。


その時。


ゼフィーが静かに滑走板へ視線を向けた。


「……少し、お借りしても?」


『ん?』


『ああ、いいぞ』


俺が降りると。


ゼフィーは自然な動作で滑走板へ乗った。


次の瞬間。


――スゥゥゥン。


『えっ』


速い。


いや。


滑らかすぎる。


まるで最初から乗り慣れていたみたいだった。


ゼフィーの身体が、音もなく宙を滑る。


旋回。


加速。


減速。


浮上。


全部が綺麗だった。


『うまっ!?』


モエも驚く。


「ゼフィー姉さんすごぉぉ!?♡」


リリンがぽかんとしていた。


「ぜ、ゼフィーさん……飛んでます……」


いや飛んでる。


めちゃくちゃ飛んでる。


しかも。


姿勢が優雅すぎた。


長い髪が風で揺れる。


片手を軽く添えるだけで、滑走板が思い通りに動いている。


『なんでそんな上手いんだよ!?』


すると。


ゼフィーが軽く微笑んだ。


「魔力操作系統は得意ですので」


『なるほど分からん』


だが。


理屈はともかく。


上手いのは分かる。


ゼフィーは、そのまま店内上空を滑るように移動する。


棚の間を抜け。


くるりと回転。


さらに。


天井近くまで浮上した。


『自由度高っ!?』


モエが目を輝かせる。


「えっ、なにそれズルくない!?」


「もえもやるぅぅ♡」


『絶対ぶつけるからやめろ』


「えーっ」


その直後。


ゼフィーが静かに着地する。


コツン。


ほぼ無音だった。


『プロかよ……』


「慣れれば便利そうですわね」


『いや、お前もう慣れてるだろ』


高速滑走板。


自走式荷車。


騎乗用ハーネス。


転移標識。


『移動問題、一気に解決してきたな……』


スケベ大魔王領。


広すぎ問題。


どうやら。


なんとかなりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ