3話 10連ガチャと最初の眷属達
ふう……
なってしまったものは仕方ない。気を取り直して現状確認だ。
おっ!大事な命綱となる魔晶石が100個ある。
ゲームどおりだな。
0からスタートじゃなくて良かったぜぇ。
これならガチャが引ける!
魔王ストリートは召喚をして仲間を増やし、戦わせて仲間と共に成長していくゲームだ。
ソシャゲといえばプレイヤーは提督や指揮官、先生、プロデューサーなど様々な呼称と設定があるものだが、魔王ストリートの場合は総じて魔王様だ。
猫の姿ではあるが、魔王として魔晶石を消費して最初の召喚ができる!
召喚は魔晶石5個で引けるが、ここは言うまでもなく50個使って10連ガチャだ。
なぜなら10連ガチャなら☆3以上のキャラが必ず出るからな!
まあ魔王ストリートは長期運営でインフレが進んでいたから☆3のSRといっても☆1~7まであるうちの☆3だ。大したことはない。
☆は下記のように
☆1 ノーマル(N)
☆2 レア(R)
☆3 スーパーレア(SR)
☆4 スーパースペシャルレア(SSR)
☆5 ウルトラレア(UR)
☆6 スーパーウルトラレア(SUR)
☆7 スーパーウルトラミラクルレア(SUMR)
となっている。
だが序盤ではSRは十分に強キャラだ。
魔晶石はガチャだけでなく1個消費してスタミナ回復などもできるが
最初の仲間は重要だ。
10連をしてSR以上を引いて、あとは温存だな。
よし、緊張するがガチャをしよう。
来い!強キャラ!!
俺は肉球でスマホの画面を押し込んだ。
――10連召喚。
キィィィン……
軽い電子音とともに、スマホの画面がまばゆく発光する。
だが、それは画面の中だけじゃなかった。
「にゃっ!?」
目の前の空間が歪む。
空気がねじれ、黒い裂け目が生まれ――
そこからとんでもないエネルギーが噴き出した。
この異世界…魔界風にいうなら魔素ってやつか。
『おいおいおい……ガチャってこういうもんだっけ……?』
完全に“現実で召喚”が起きている。次の瞬間。
――パァンッ!!
裂け目が弾け、光が弾け飛ぶ。
そして――
ドサドサドサッ!!
何かが一気に吐き出された。
『……え?』
目の前に転がるモンスターたち。
緑色の小柄な人型――ゴブリン。
ぷるぷる震える半透明の塊――スライム。
腐った体のゾンビ。
弓を持ったゴブリンアーチャー。
低く唸るウルフ。
巨大な体躯のオーク。
骨だけの剣士――スケルトンソルジャー。
そして足元には、指輪とボロ布のローブが転がっていた。
『……マジで出た……』
目の前にゲームがあり、半ば現実逃避のようにスマホ画面をいじっていたが……
完全にガチャ結果がそのまま現実に出てきている。
スマホと、この魔界が連動しているようだ。
スマホを確認する。
【召喚結果】
ゴブリン(☆1)
スライム(☆1)
ゾンビ(☆1)
ゴブリンアーチャー(☆2)
ウルフ(☆2)
オーク(☆2)
スケルトンソルジャー(☆2)
魔力の指輪(☆2)
ボロ布のローブ(☆1)
「にゃーん……」
正直な感想が漏れる。
『まあ……こんなもんか』
神引きではない。だが、悪くもない。
むしろ序盤としてはかなりバランスがいい。
前衛、後衛、タンク、機動。全部揃ってる。
(問題は……)
俺は周囲を見渡す。
召喚されたモンスターたちが、じっとこちらを見ていた。
……怖い。めちゃくちゃ怖い。
だが次の瞬間――
【眷属登録完了】
その文字と同時に、頭の奥に感覚が流れ込む。
(……あ、わかる)
こいつら、俺の配下だ。命令すれば動く。
なんとなくだが、意思も伝わる。
「……にゃ」
試しに鳴いてみる。するとゴブリンがビクッとし、姿勢を正した。
(マジかよ……)
完全に俺の眷属だな。そのとき――
スマホの画面がもう一度光った。
「……ん?」
まだ終わっていない。10連の“最後の一体”。
画面には――SR確定の演出。
「……来た」
空間が、さっきよりも強く歪む。ビリビリと空気が震える。
他のモンスターたちが、一斉に後ずさった。
明らかに“格が違う”。
「頼む……!」
今度こそ本命。美少女来い!!
――パァンッ!!
光が弾ける。そして、そこに現れたのは――
小さな少女だった。いや、幼女と言ってもいいくらいだ。
「……ここは……どこ、ですか……?」
ピンクのツインテールの幼女が、不安そうに周囲を見渡す。
その幼女は幼いながらに、とても美しかった。
整った顔立ちで、まるで人形のようだ。
頭には小さな角が生え、背中にはコウモリのような羽。
可愛らしいお尻からは、いかにも悪魔です、というような尻尾がある。
人間に近い姿だが一目で人間ではないと分かる姿だ。
いや、ここが地球ならコスプレだと思ったかもしれないが……
コスプレだと思ったかもしれない理由は姿形だけでなく着ている服が
とてもエロいのだ。いかにもサキュバスが着ているような……
そして――俺と目が合った。幼女が呟く。
「……ねこ……さん……?」
「にゃ」
とりあえず俺は鳴いた。その瞬間、スマホに表示が浮かぶ。
【SR】
【サキュバス】
【個体名 リリン】
【召喚完了】
【眷属登録されました】
同時に、頭の奥に妙な感覚が流れ込む。
『……なんだこれ』
言葉じゃない。でも――伝わる。
ぼんやりとした感情みたいなものが、リリンの方から流れてきた。
「……あれ?」
リリンが小さく首をかしげる。
「なんだか……安心します……」
……おお。
(これが“眷属”ってやつか)
会話はできない。でも“なんとなくわかる”。
逆に俺の意志も、ぼんやり伝わってるっぽい。
試しに、意識を向けてみる。
『大丈夫だ、落ち着け』
すると――
「……はい」
リリンが小さくうなずいた。
(おお、通じた)
完全じゃない。細かい指示は無理だ。
でも、感情レベルならいける。
(これは……使い方が重要だな)
そのとき。ガサッ……と、森の奥で音がした。
リリンの体がびくっと震える。
「ひっ……」
恐怖。それがそのまま流れ込んでくる。
『敵か』
現れたのは、牙を剥いた魔物。リリンが一歩下がる。
(怖い。でも……)
リリンの中に、もう一つの感情が混ざる。
(……がんばらなきゃ)
その想いが、はっきりと伝わってきた。
『いいね』
俺はスマホを構える。
『いけるか?』
言葉じゃない。だが、意思を送る。
するとリリンは、小さく息を吸って――
「……っ」
こくり、と頷いた。
『よし』
『戦え』なんて言えない。でも――伝わった。
俺は戦闘開始をタップする。
次の瞬間。
リリンが地面を蹴った。
「はぁっ!」
小さな悪魔が、魔物に向かって駆け出す。
そして――
俺たちの最初の戦いが、始まった。




