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35話 領地経営シミュレーション ☆       

今日、明日は12時,24時の2話投稿となっております。読み飛ばしのないようご注意ください。



挿絵(By みてみん)

【イベントクエスト】


【領内の侵入者に対処せよ】


獲得した領内に、魔族・魔物などの敵対反応を確認。


敵対対象を、


・退治

・追放

・説得

・懐柔

・勧誘


などの方法で排除、または領民化せよ。


領内から敵対反応が消失するとクエスト達成。


【報酬】

魔晶石×1000


『…………』


俺はしばらく画面を見つめていた。


『なんか急に始まったんだけど』


イベントクエスト。


しかも内容が。


領地。


勧誘。


領民化。


『完全に領地経営シミュレーションゲームじゃねぇか……』


もはや俺の知っている魔王ストリートではない。


確かに元々、拠点要素はあった。


施設強化。


眷属管理。


資源回収。


だが。


ここまで本格的ではなかった。


少なくとも、


「森を囲って国みたいな領地を作るゲーム」


ではなかったはずだ。


『ゲーム知識は参考程度にした方が良さそうだな……』


むしろ危険かもしれない。


ゲーム感覚でいると、普通に死にそうだ。


俺は改めて、眼下の森を見下ろした。


つい先程まで黒樹海だった場所。


だが。


今は違う。


深い緑。


生い茂る木々。


濃密な魔素。


巨大城壁の内側だけ、別世界のように生命力が濃い。


外側は、黒ずみ枯れた森。


だが内側だけは、異様なほど豊かな自然に包まれていた。


『……黒樹海って感じじゃないな』


イメージに合ってない名前だと、不便じゃないか?


黒いどころか、むしろ神秘的ですらある。


魔力に満ちた森。


生命が循環する森。


『うーん……』


名前、大事。


雰囲気って大事。


だが――。


『とりあえず森でいいか』


適当にそう呟いた。


俺にネーミングセンスなんてないのだ。


――後に。


その森は、外部から神聖視される事になる。


しかし。


今の俺は、そんな未来など知る由もなかった。


『それより』


『現状確認だ』


今の領地がどうなっているのか把握したい。


広すぎる。


本当に広すぎる。


正直、どこまでが自分の領地なのかすら分からない。


『なんか便利機能増えてないか?』


俺はスマホを操作する。


エリアマップを開く。


すると。


『……ん?』


画面の端に、新しいアイコンが増えていた。


紫色の城マーク。


タップする。


次の瞬間。


画面が切り替わった。


【スケベ大魔王領 詳細】


『…………』


俺は無言になった。


『名前ひどくない?』


なんだその領地名。


勢いで付けたプレイヤーネームが、そのまま領地名になってるじゃねぇか。


『いや待て』


『これ後から絶対黒歴史になるやつだろ』


変えられないかな。


設定欄を探す。


ない。


見当たらない。


『くそっ……』


もう遅かった。


どうやら俺の領地は、正式に


“スケベ大魔王領”


らしい。


終わった。


しかも。


その下には、更に情報が表示されていた。


【生命反応:12874】


【敵対反応:217】


『敵多くね!?』


思わず叫んだ。


二百超えてるんだけど。


いや。


待て。


落ち着け。


『生命反応……ってことは』


森に元々生息していた生物の数か。


魔物。


動物。


虫。


小型生物。


そういうの全部込みなのだろう。


問題は。


敵対反応。


『217か……』


多い。


普通に多い。


だが。


一万超えじゃないだけマシかもしれない。


俺はエリアマップを拡大した。


すると。


赤い点が表示される。


『おぉ』


位置まで分かるのか。


便利だな。


かなりゲームっぽい。


しかも。


敵対反応の強さによって色が違うらしい。


薄赤。


赤。


濃赤。


中には紫色の反応まである。


『嫌な予感しかしねぇ……』


絶対強いだろ。


だが。


今すぐ全部どうこう出来る数ではない。


二百超え。


しかも森全域に散っている。


『後回しだな』


まずは足場を固めるべきだ。


とはいえ――。


報酬の魔晶石1000個は、かなり魅力的だった。


『ぐっ……』


『ぐっ……』


1000個。


『10連20回分!?』


ヤバい。


冷静に考えてヤバい。


本物のソシャゲなら、天井へ一気に近づく量だ。


SSR。


UR。


夢が広がる。


『いや待て俺』


『落ち着け』


今は施設優先だ。


そう。


生活第一。


『後回し後回し』


自分に言い聞かせる。


そして俺は、再び施設画面を開いた。


『とりあえず続きだ』


『施設を全部解放しよう』


確か。


施設解放は一つにつき魔晶石10個だったはず。


安い。


かなり安い。


『大丈夫大丈夫』


『まだ2329個もある』


心に余裕がある。


やはり石が多いと精神が安定する。


俺は未解放施設を確認する。


訓練場。


遊技場。


図書室。


農場。


売店。


工房。


合計六施設。


『60個か』


安い。


めちゃくちゃ安い。


むしろ不安になるレベル。


『これ全部解放得だろ』


訓練場は戦力強化。


図書室は情報収集。


農場は食糧問題の解決。


工房も売店も生活必須。


そして。


遊技場。


『……遊技場気になるな』


魔導カード。


ダーツ。


スロット。


闘技ゲーム。


完全にゲーセンである。


いや魔界ゲーセンか?


気になりすぎる。


だが。


その時だった。


『ん?』


ふと。


既存施設の欄に違和感を覚えた。


大浴場。


食堂。


衣装室。


その横に――。


【拡張】


という新しい項目が追加されている。


『……増築じゃない?』


昨日までは“増築”だったはずだ。


俺は恐る恐るタップした。


【拡張】


建物の外部に新たに建築します。


必要魔晶石:100


『ぐぬぬ……』


思わず唸る。


また石を要求してきた。


絶対これ、味を占めてるだろ。


たった今1100個払った後だぞ。


しかも。


説明文が気になる。


“建物の外部に新たに建築します”


つまり。


城内部施設ではなく。


外部施設化。


城下町の一部として独立するという事だ。


『……』


俺の脳内に、一気にイメージが広がった。


城下町。


湯気の立つ大浴場。


賑わう食堂。


衣装店。


農場。


工房。


市場。


『……めちゃくちゃ良くないか?』


ワクワクしてきた。


完全に街づくりだ。


しかも。


この巨大領地なら、それができる。


『いや待て』


『落ち着け俺』


『石は大事だ』


だが。


心のどこかで、もう決まっていた。


絶対これ楽しいやつだ。

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