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22話 危険な衣装室と魔王への覚悟! ☆

挿絵(By みてみん)

先ほど衣装室が解放されてからというもの。


城の空気が、明らかに変わった。


「これかわいー♡」


「こっちもいいですわね♪」


「……これ、ふわふわです……」


眷属たちが、完全に浮かれている。


『……まあ、気持ちは分かる』


俺は椅子の上に座りながら


衣装室の光景を眺めていた。


広い。


本当に広い。


豪華なシャンデリア。


並ぶ衣装棚。


奥まで続くクローゼット。


ドレス。


ローブ。


鎧。


アクセサリー。


帽子。


靴。


意味不明なくらい種類がある。


しかも。


『魔物用まであるのかよ……』


驚いた。


ゴブリンサイズ。


コボルト用。


スライム向けっぽいゼリー状アクセ。


骨犬用のマントまである。


どういう基準だ、この城。



「ギャギャッ!」


キャベツが


緑色の小さなマントを装備していた。


妙に得意げである。


すると。


「ギャッ!」


ピーマンが


弓兵風のロングコートを着て現れる。


しかも無駄にポーズ付き。


『なんでお前そんなキメ顔なんだよ』


「ギャッ!」


ドヤ顔だった。


キャベツは特に気にしていない。


野菜柄の袋を見つけて


そっちに夢中だった。


完全に温度差がある。


コロは犬用っぽい首巻きを


付けて走り回っていた。


『おー、似合ってるな』


「ワフッ!!」


尻尾ぶんぶん。


褒められるとテンションが爆発する。


ホネは黒いマントを装備していた。


骨なのに妙に似合う。


『お前かっこいいな……』


カタカタ。


しっぽ骨だけ高速で振れる。


嬉しいらしい。


オバッキーは、なぜか


帽子コーナーに埋まっていた。


胞子を撒きながら


ふよふよ漂っている。


「ケケッ!」


ちび助はサングラスを装備していた。


「ひゃっはー!」


ちょっと似合う。


ガウには狼用の革装備。


フランには執事服。


ブモは何故かタキシードを気に入っていた。


カルシウムは――


『お前なんで燕尾服そんな似合うんだよ』


骨なのに姿勢が良すぎる。


妙に紳士感がある。


モエが爆笑していた。


「カルちゃん執事じゃーん♡」



衣装室は完全にファッションショー会場になっていた。


『……楽しそうだな』


実際に悪くない光景だった。


この世界


多分娯楽が少ない。


戦う。


生きる。


奪う。


そんな日常の中で。


こうやって笑ってるだけでも


かなり貴重なんじゃないかと思う。


リリンなんて、さっきから鏡の前を


行ったり来たりしている。


メイド服。


ゴシック。


フリル多め。


シンプル。


何着か試しては


ちらちらこっちを見る。


『どれも似合う』


「……!」


言うたび嬉しそうにする。


かわいい。


非常にかわいい。


そして。


問題は――


ゼフィーである。


『……』


危険だ。


本当に危険。


ゼフィーは完全に遊び始めていた。


「魔王さま、こちらはどうです?」


『どれ――』


止まる。


逆バニーだった。


しかも布面積が少ない。


ニップレスで先端を隠してるだけで


おっぱいが、ほぼ丸見えだ!


『待て』


「まあ?」


『それ服って言えるか?』


「きちんと着ていますわ?」


そういう問題じゃない。


しかも。


おっぱいが。


すごい。


色々すごい。


視線が吸われる。


『……』


ダメだ。


目が離せない。


「ふふ♪」


絶対わざとだ。


次。


紐ビキニ。


『待て』


「うふふ♪」


次。


チャイナドレス。


スリットが危険。


『待て』


「まあまあ♪」


次。


露出多めドレス。


『待てって』


「魔王さま、お顔が赤いですわ?」


『気のせいだ』


黒猫なんだから分かる訳ないだろ。


だが、気のせいではない。


完全に限界だった。


モエも負けていない。


ギャルらしく


派手な衣装を次々着こなしていた。


ハロウィン衣装。


小悪魔風。


パンク系。


へそ出し。


網タイツ。


『……』


強い。


ギャルつよい。


「スケベちゃん、どれ好き〜?♡」


『全部』


即答だった。


「うわ、オープンスケベになった♡」


『もう隠しても無理だろこれ』


衣装室が悪い。


絶対に悪い。


リリンも少しずつ大胆になってきていた。


「……こ、これとか……どうですか……?」


小さくスカートを摘まむ。


『似合ってる』


「……!」


ぱあっと笑う。


その笑顔が破壊力高い。


3人とも元が良すぎるのだ。


何を着ても似合う。


『……』


おかしくなるなという方が無理だ。


……うん。


仕方ない。


俺は悪くない。


おっぱいには勝てなかったよ。



気づけば、かなり時間が経っていた。


俺はスマホを見る。


【SP:43/55】


『……結構回復してるな』


放置はもったいない。


『探索組回すか』


すると。


「わたくしも参りますわ」


ゼフィーが言う。


だが。


『ダメだ』


「まあ?」


『お前は残れ』


ゼフィーが首を傾げる。


『こんな物騒な世界なんだからな』


『華が必要だ』


「……華?」


『目の保養がしたい』


「……」


一瞬。


静寂。


そして。


モエが吹き出した。


「言ったー!!」


「ついに言ったー!!♡」


『もう隠さねぇ』


開き直った。


リリンが真っ赤になる。


ゼフィーは――


くすりと笑った。


「ふふ♪」


『それにだ』


俺は真面目な顔を作る。


『俺は魔王』


『つまり王様だ』


『王様には護衛が必要』


『最強戦力のお前が離れるなんて言語道断』


「まあ……♪」


ゼフィーが嬉しそうに目を細める。


だが。


本音は違う。


『……』


ゼフィーのおっぱいを見ていたい。


いや違う。


護衛だ。


護衛。


『……』


思考がおかしくなってきたな?


いや逆バニーとか紐ビキニなんて見てたら


おかしくなって当然だ!俺は正常。


思考を戻そう。SPの消費だ。


【SP:43/55】


まだ満タンではない。


だが、放置するのはもったいない。


俺は城に居ながら、眷属を交代で探索に行かせてSPだけ消費する。


つまり――


放っておくだけでレベル上げ、ができる。


『やっぱこのシステム、効率考え始めると止まらんな……』


俺は探索組を見る。


キャベツ。


ピーマン。


ガウ。


グミ。


フラン。


ブモ。


カルシウム。


リリンと一緒に召喚された連中だ。


最初の頃に比べれば、かなり変わった。


動き。


空気。


視線。


それぞれに“個性”が出てきている。


命名の影響なのか。


レベルアップの影響なのか。


あるいは、その両方か。


『……』


スマホを操作し、ステータスを確認する。


そして、気づく。


『ん?』


全員――


俺と同じレベル15だった。


『……なるほどな』


偶然じゃない。


多分。


『俺のレベルが、眷属の上限か』


つまり。


俺以上には成長できない。


少なくとも、現状は。


『……完全にプレイヤーレベルだな』


俺自身は前線で戦わない。


だが。


眷属が強くなるほど、俺も強くなる。


そして。


俺のレベルが上がるほど、眷属も育つ。


『魔王っていうか、マスターだなこれ』


あるいは。


ソシャゲのアカウントそのもの。


しかも。


キャベツたちには“+”が付いている。


【ゴブリン+1】


【コボルト+1】


召喚ガチャダブりによる強化。


限界突破。


ソシャゲ感がすごい。


『……+付きなら、そう簡単にはやられないだろ』


多少危険でも、探索には出てもらう必要がある。


なにせ。


レベルが重要すぎる。


『いいか』


俺は眷属たちを見る。


『戦闘後の自動回復が切れたら、すぐ戻れ』


ガウが低く吠える。


キャベツが元気よく胸を叩く。


ピーマンはまたキメ顔だった。


『お前なんで毎回その顔なんだ』


「ギャッ!」


ちょっと傷ついてる。


めんどくさい奴だな。


フランは無言。


ブモは腕を組みながら頷く。


カルシウムは、無駄に姿勢が良かった。


『よし。行ってこい』


探索組が動き出す。


ガウを先頭に。


キャベツとピーマンが小競り合いしながら続き。


フランがのそのそ歩き。


ブモが最後尾を守る。


カルシウムは妙に統率された歩き方をしていた。


『……なんか軍団っぽくなってきたな』


最初はただの雑魚モンスターだった。


だが今は違う。


ちゃんと“勢力”になり始めている。



探索組を送り出した後は――


休養だ。


『よし。飯にするか』


その一言で、モエの顔が明るくなる。


「やったー♡」


「お腹ぺこぺこだったんだよね〜」


リリンも小さく頷く。


「……リリンも、すいてます……」


ゼフィーは優雅に微笑んでいた。


「ふふ。楽しみですわ」


食堂へ向かう。


扉を開いた瞬間。


ふわり、と温かな香りが流れてきた。


肉の焼ける匂い。


スープの香り。


焼きたてのパン。


甘い果実の香りまで混ざっている。


長いテーブルには、大量の料理が並んでいた。


湯気。


照明。


暖かな空気。


完全に豪華レストランである。


「……え?」


モエが止まった。


「うそ」


「なにこれ……」


ゼフィーも、静かに目を見開いている。


リリンはもう慣れたのか、少し得意げだった。


「……すごいですよね……!」


(まおーさまのおしろです……!)


『まあ、俺も毎回ビビってるけどな』


本当に意味がわからない。


誰が作ってるのかも分からない。


だが。


料理は毎回完璧だった。


しかも――


美味い。


「……これほどの食事を、毎日ですの?」


ゼフィーが静かに尋ねる。


『多分な』


「……」


ゼフィーが料理を見る。


その表情が、ほんの少し曇った。


『どうした?』


「……今の魔界では、考えられませんわ」


『そんなにか?』


「ええ」


ゼフィーが静かに言う。


「現在、魔界グルンボーンは魔王不在ですもの」


『……』


「玉座が空位になってから、徐々に土地が痩せ始めています」


「魔素が薄れれば、作物は育ちにくくなる」


「魔物も荒れます」


「治安も悪くなる」


「略奪も増える」


「皆、自分勝手になりますわ」


つまり。


世界そのものが弱っている。


魔王とはただ強いだけの存在ではない。


土地を支える柱。


秩序そのもの。


そういうことなのだろう。


『……』


俺は食卓を見る。


肉料理。


温かなスープ。


柔らかなパン。


満足できる量。


笑える空気。


『腹減るのって、嫌だからな』


前世でもそうだった。


金がない時。


疲れてる時。


余裕がない時。


ちゃんと食えないだけで、人間かなり荒む。


だから。


『好きなだけ食え』


俺がそう言うと。


空気が変わった。


「いただきまーす♡」


モエが即飛びつく。


早い。


ギャルは行動力が高い。


リリンも、嬉しそうにスープを飲んでいた。


「……おいしい……」


(あったかい……)


ほわっとした顔になる。


ゼフィーは静かにスープを口に運び――


目を見開いた。


「……っ」


その反応だけで分かった。


美味かったらしい。


「……本当に、美味ですわ」


小さく呟く。


その声は、少しだけ震えていた。


『そんな驚くほどか?』


「ええ」


ゼフィーが微笑む。


だが、その笑みは少しだけ寂しそうだった。


「ここまで満たされた食事は……久しぶりですもの」


『……』


魔界。


思った以上に


終わってるのかもしれない。


モエも肉を頬張りながら叫んでいた。


「うまっ!」


「なにこれ!?」


「柔らかっ!!」


完全に夢中である。


『いっぱいあるから落ち着いて食え』


「はーい♡」


返事だけだった。全然落ち着いてない。


リリンはパンをちぎりながら


嬉しそうに笑っている。


その姿を見て。


俺は、小さく息を吐いた。


『……よかった』


食事は、心の余裕だ。


ちゃんと食える。


安心して眠れる。


笑える。


それだけで、人はかなり救われる。


だから。


不自由な思いはさせたくない。


ここは俺の城だ。


なら。


せめて、この中だけは――


安心して過ごせる場所にしたい。


まだ、この楽園は――


俺と眷属たちだけのものだ。


だが。


『……そのうち』


小さく呟く。


『魔界を何とかしねぇとな』


魔王ストリートは


そういうゲームだった。


勢力を広げ。


領地を増やし。


魔界を統一する。


だったら俺が、やってやる。


猫の魔王。


スケベ大魔王。


この城から始まる――


新しい魔界の王として。

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