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19話 検証と暴走 ☆

命名を終えた。


リリンと共にSPスタミナポイントを消費して城へ戻ってから、小一時間ほどが経過している。


スマホを見る。


【SP:16/55】


『……少し回復したな』


これなら、三、四回くらいは戦えるだろう。


『よし』


俺は、大広間に集まる眷属たちを見る。


キャベツ。


コロ。


ホネ。


ピーマン。


オバッキー。


ちび助。


ガウ。


グミ。


フラン。


ブモ。


カルシウム。


そして――


リリン。


モエ。


ゼフィー。


『人数増えたなぁ……』


人じゃない奴の方が多いけど。


だが、賑やかになった。


悪くない。


『せっかくだし、軽く森を探索するか』


それに。


『ゼフィーとモエの実力も見ておきたい』


SSR 上位悪魔ハイデーモン


SR 小悪魔こあくま


レアリティだけ見れば、現状うちの最高戦力だ。


どれくらい強いのか気になる。


そして――


もう一つ。


『検証したいことがある』


経験値だ。


眷属が離れて戦っていても、俺に経験値は入るのか。


もし入るなら。


『……これ、後々は城で寝ながらレベル上げできるんじゃね?』


最高では?


さらに。


戦闘していない眷属にも経験値が共有されるのか。


もし共有されるなら――


生産。


拠点作業。


見張り。


索敵。


そういう役割の奴らも安全に育成できる。


かなり重要な検証だ。


『という訳で、3グループに分ける』


「グループ〜?」


モエが首を傾げる。


『探索組』


『待機組』


『俺と行動する組だ』


魔物寄りの眷属たちは、探索組と待機組に分ける。


そして――


『リリン、モエ、ゼフィーは俺と来い』


「はい……!」


「りょーかい♡」


「承知いたしましたわ」


探索組には、二、三回ほど戦ったら城へ戻るよう指示しておく。


『よし。じゃあ行くか』



森。


相変わらず薄暗い。


だが、前より恐怖は少ない。


戦力が増えたからだ。


特に隣。


ゼフィー。


歩いているだけなのに、妙な圧がある。


強者感がすごい。


モエは逆に落ち着きがない。


「ねーねー、スケベちゃん」


「この森ってどこまで続いてんの?」


『知らん』


「適当w」


そりゃ昨日。目覚めたら放置されてたんだ。知る訳がない。


その横で、リリンが周囲を警戒している。


『……よし』


ある程度進んだところでスマホを開く。


戦闘開始ボタン。


タップ。


空間が、揺れる。


近くに魔物がいる時は自然に寄ってくる。


いない場合は――


空間そのものが裂け、別空間から敵が現れる。


未だに意味わからんシステムだ。


そして。


現れた瞬間。


「消えなさい」


ゼフィーが微笑んだ。


次の瞬間。


紫黒い魔法陣が展開。


轟音。


爆炎。


敵が――消し飛んだ。


『……は?』


一瞬だった。


跡形もない。


その瞬間。


「……あら?」


ゼフィーが、自分の手をじっと見る。


指先に、紫色の魔力が淡く集まっていた。


「魔力の流れが……少し変わりましたわね」


「出力も上がっていますわ……」


『わかるのか?』


「わたくし、魔力操作は得意ですの」


「ほんの僅かですが、身体の内側の変化が感じ取れますわ」


そう言って、ゼフィーは楽しそうに微笑む。


完全にテンション上がってる。


一方。


「んー?」


モエは首を傾げていた。


「うち、別に変わった感じしないんだけど?」


『個人差あるのか……?』


SSRとSRの差か。


それとも、魔力感知能力の違いか。


リリンも不思議そうにゼフィーを見ている。


『……次だ』


二回目。


『ゼフィーは見てろ』


「……まあ」


露骨に不満そう。


怖い。


代わりに、モエが前に出る。


「よーし♡」


「うちの出番ね〜」


敵が現れる。


モエが、にやりと笑った。


「ほらほら〜」


紫色の魔力が広がる。


敵の動きが鈍る。


さらに。


「遅〜い♡」


蹴る。


避ける。


笑う。


完全に遊んでいる。


しかも地味に性格が悪い。


『……デバフ系か』


モエは敵を弱体化させながら、からかうように戦うタイプらしい。


二人とも癖が強いな……。


三回目。


『今度は全員でやれ』


「はぁい♡」


「承知いたしましたわ」


戦闘開始。


だが――


「邪魔ですわ」


結局、ゼフィーが一瞬で終わらせた。


『おい!!』


「まあまあ♪」


絶対楽しんでるだろこいつ。


スマホを見る。


【SP:3/55】


『……中途半端に残ったな』


必要SPは5。足りない。


戦闘開始ボタンも灰色になっている。


【必要SPが不足しています】


『よし、戻るか』


だが。


「……もう終わりですの?」


ゼフィーが、不満そうにこちらを見る。


金色の瞳。


戦い足りない――そんな顔だ。


「せっかくレベルアップというものができるのに……」


「もっと敵を探しましょう?」


『いやSPがない』


「なら普通に探せばよろしいのでは?」


『……あ』


確かに。


システム戦闘はできない。


だが、森には普通に魔物もいる。


『……試してみるか』


少し進む。


そして。


本当に魔物が現れた。


「ふふっ」


ゼフィーが笑う。


次の瞬間。


また敵が消し飛ぶ。


怖い。


戦闘終了。


だが――


「……あれ?」


リリンが、きょとんとする。


「……ひかって、ない……?」


『……!』


見る。


確かに、戦闘後に起きていた光が発生していない。


今までは戦闘が終わるたび、淡い光が身体を包み込み――


傷も疲労も回復していた。


だが、今回は違う。


ゼフィーのおかげで楽勝だった。


目立った傷もない。


だが。


身体に残る疲労感。


戦闘の重さ。


そして何より――


回復の光が、出ていない。


『……スマホ』


急いで確認する。


表示されていたのは――


【SP不足により戦闘後回復は発生しません】


『……なるほどな』


SPを消費したシステム戦闘。


あれには、自動回復機能も含まれていたらしい。


俺がリリンを連戦させていたのは、戦闘後に回復していたからだ。


だが――


今は違う。


負傷したまま。


疲労したまま。


『撤退だ』


これ以上は危険だ。


だが。


「もう少し……」


ゼフィーが前へ出る。


魔力が漏れている。


紫色の魔力が、空気を歪ませるように揺らめいていた。


まずい。


レベルアップでテンションが上がりすぎている。


「もっと……戦えますわ……!」


ゼフィーが、森の奥へ駆ける。


直後。


茂みの向こうから飛び出してきた魔物へ、片手を向けた。


魔法陣展開。


轟音。


紫黒い閃光が森を染める。


爆発。


木々が揺れ、土が吹き飛ぶ。


魔物が悲鳴すら上げられず消し飛んだ。


『ゼフィー!!』


だが止まらない。


「次ですわ……!」


また別の気配を見つける。


魔力がさらに膨れ上がる。


リリンが顔を青くする。


「ま、魔王さま……!」


モエですら引いていた。


「え、ちょ、ゼフィー姉さん、やばくない!?」


このままじゃまずい。


仕方ない。駄目元で試してみよう。


俺は、昔やった某エロゲーをイメージしながら叫ぶ。


『我が名はスケベ大魔王!!』


『魔王の名によって命ずる!!』


『城へ帰還せよ!!』


――ピタリ。


ゼフィーの動きが止まる。


森が静まり返る。


数秒後。


ゼフィーが、ゆっくり頭を下げた。


「……失礼いたしましたわ、魔王さま」


さっきまでの熱が、少し落ち着いている。


「そうですわね……」


ゼフィーは胸に手を当て、小さく深呼吸する。


長い睫毛を伏せながら、どこか恥ずかしそうに微笑んだ。


「少々……取り乱してしまいましたわ」


『効いた……のか?』


まさか。


本当に効くとは思わなかった。


というか。


俺の脳内エロゲー知識で悪魔を制御できるの、どうなんだ。


「ですが――」


ゼフィーが、ふわりと距離を詰める。


「スケベ大魔王……」


「なかなか、素敵なお名前ですわね?」


『やめろ。冷静になると恥ずかしい』


「うふふ♪」


完全には落ち着いていない。


むしろ楽しんでる。


リリンがむーっと頬を膨らませた。


「……ゼフィー、まおーさま困ってる」


「あらあら」


ゼフィーは悪びれもせず微笑む。


「だって、可愛らしいんですもの」


『可愛いとか言うな。威厳が消える』


「ですが実際、可愛らしいですわ?」


『ぐっ……』


反論できない。


今の俺、完全に猫だし。


ゼフィーが、しゃがみ込む。


そして――


そっと俺の頭を撫でた。


「ですが、ご安心くださいませ」


「わたくしは、ちゃんと魔王さまのお役に立ってみせますわ」


その声音は。


さっきまでの甘ったるい空気とは違う。


少しだけ真面目だった。


『……ゼフィー』


「はい♪」


『頼りにしてる』


「……っ」


一瞬。


ゼフィーの表情が固まる。


それから――


「〜〜〜っ!!」


顔を真っ赤にした。


「り、リリンっ!!」


「はい?」


「魔王さま、思った以上に破壊力がありますわ!!」


「?」


リリンが首を傾げる。


まぁ命令をきいて戦闘は終わりにしてくれるようで良かった。


「初めてのレベルアップというもので、わたくしも熱くなりすぎていたようですわ」


そして。


ゼフィーが、静かに微笑む。


「ですが――」


「魔王さまといれば、またレベルアップできるのでしょう?」


「でしたら、わたくしは魔王さまに従いますわ」


『……』


ふう。


どうなるかと思った。


だが、ちゃんと命令は効くらしい。


『……SP不足は危険だな』


ゼフィーがいるから勝てているだけだ。


システムの補助がない戦闘は、思った以上に危険かもしれない。


『さっさと戻るぞ』


「はい……!」


「りょーかーい♡」


「承知しましたわ」


俺たちは、急いで城への帰路についた。

挿絵(By みてみん)


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