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12話 はじめてのお風呂と、見えない力

『……さて』


食堂を出て、城の中を歩く。


『飯は解決した』


次に必要なものは――


『……風呂だな』


戦闘続き。

森生活。


どう考えても――


『汚れてるよな』


自分もだが。


『リリンもな』


そのとき。


「……まおーさま」


『ん?』


リリンが、服の裾をつまみながら言う。


「……ちょっと……気になってました……」


(その……よごれてるなって……)


『やっぱりか』


苦笑する。


『ちょうどいい』


スマホを開く。


【施設】


スクロール。


――あった。


【浴場】


『……あるじゃねえか』


必要魔晶石:10


『……安いな』


安いが、こう色々とやるたびに

石を要求されると辛い。


だがこれも必要な初期投資だ。


迷わず決定。


その瞬間――


城の奥で、光が走る。


『もう慣れたな』


数秒後、光が収まる。


『……行くぞ』


――そう言って、画面を閉じようとした、そのとき。


「……まおーさま」


『ん?』


リリンが、少し遠慮がちに口を開く。


「気になってたんですけど……」


もじもじしている。


「ドタバタしてて聞きづらくて……」


『どうした?』


「……さっきから、何してるんですか?」


『……』


一瞬、思考が止まる。


『何って……スマホ――』


言いかけて、気づく。


『……見えてないのか?』


「……?」


リリンは首をかしげる。


俺の前を見る。


何もない場所を。


「ずっと……その、空中を触ってるので……」


(ちょっと不思議で……)


『……マジか』


スマホを見る。


ちゃんとある。


画面も表示されてる。


だが――


『他のやつには見えない?』


試しに、スマホをリリンの目の前に近づける。


「……?」


反応はない。


完全に見えていない。


『……そういうことか』


背筋が、わずかに冷える。


このスマホ。


ただの“ゲームの延長”だと思っていた。


だが――


『これ、ただのアイテムじゃないな』


リリンには見えない。


触れない。


存在すら認識できない。


『じゃあ、これは何だ?』


考える。


この世界。


俺の能力。


そして――このスマホ。


『……もしかして』


ひとつの仮説が浮かぶ。


『これ、俺が“作ってる”のか?』


スキル。


能力。


魔王としての力。


その一部として――


『このスマホ自体が、俺の力……?』


完全に確証はない。


だが。


『……あり得るな』


そう考えると、辻褄が合う。


リリンが、不安そうにこちらを見る。


「……まおーさま?」


『ああ、悪い』


少し考えすぎた。


『これはな』


言葉を選ぶ。


『俺にしか見えない道具みたいなもんだ』


「……そうなんですか」


(すごい……)


リリンの中に、素直な尊敬が生まれる。


『まあな』


内心では、まだ半信半疑だが。


『……便利なのは確かだ』


『……行くぞ』


「……はい」


少し緊張した様子で、リリンがついてくる。


浴場。


扉を開けた瞬間――


『……広っ』


ふわっと湯気が流れ出る。


あたたかい空気が肌を包む。


石造りの床。

反響する静けさ。


そして――


でかい湯船。


『……完全に風呂だな』


「……すごい……」


リリンが、目を輝かせる。


(あったかそう……)


一歩、二歩と近づく。


湯気の向こうで、水面がゆらゆら揺れている。


『……入るか』


「……はい……」


一瞬、目が合う。


少しだけ、間。


「……いっしょに……入ります……?」


『……』


思考が止まる。


だが。


『……まあ』


『俺、猫だしな』


「……あ」


その一言で、空気が変わる。


「……そうでした……」


(まおーさま、ねこさんですもんね……)


『そういうことだ』


自分にも言い聞かせる。


『種族が違う。なら問題ない』


『何なら俺は常に全裸だしな』


「……たしかに……」


小さく笑う。


その笑いで――


緊張が、すっとほどけた。


湯船に入る。


ちゃぷん。


『……』


あったかい。


じわっと、体がゆるむ。


『……いいな、これ』


思わず目を細める。


そのとき。


ちゃぷん、と小さな音。


リリンが、そっと入ってくる。


「……あったかい……」


(きもちいい……)


肩まで浸かる。


ほっと息をつく。


その仕草が、妙に幼くて――


『……』


視線が止まる。そのまま動かない。

ガン見してしまう。


幼いがちゃんと、ふくらみがある。

小さい二つのふくらみが女性らしさを、かもしだしている。


流石サキュバス!幼くてもサキュバスである。


湯気の中。


距離が近い。


普段より、ずっと。


『……』


なんだこれ。


妙に意識する。


猫なのに。


『……いや』


『猫だから、いいのか』


うんうん。問題ないな。自分に言い聞かせる。


リリンは、安心したように湯に身を預けている。


「……まおーさま」


『ん?』


「……いっしょだと……安心します……」


(ひとりだと、ちょっとこわいので……)


『……そうか』


短く返す。


だが。


その言葉が、じわっと残る。


湯気の中で、時間がゆっくり流れる。


水音。


呼吸。


静けさ。


「……」


リリンが、ちらっとこっちを見る。


目が合う。ヤッバ…

ガン見してるのバレたか…?


ぴくっと肩が揺れる。


すぐに視線を逸らす。


頬が、ほんのり赤い。


『……』


なんだそれ。可愛すぎる!


こっちまで変な気持ちなってくる。


『……風呂のせいだな』


そういうことにする。


しばらくして。


「……そろそろ、出ます……」


『おう』


リリンが湯から上がる。


ぱしゃ、と水音。


少しして。


「……まおーさま」


『ん?』


「……あったかかったです」


(すごく……よかったです……)


『……そうか』


その一言で、十分だった。


湯から上がる。


『……』


体が軽い。


疲れが抜けている。


『これ、毎日欲しいな』


そんなことを思いながら。


リリンを見る。


髪が少し濡れている。


頬がほんのり赤い。


どこか、いつもより柔らかい表情。


「……どうですか……?」


(へんじゃないですか……?)


『……いや』


『すごくいい』


「……ほんとですか……!」


ぱあっと笑う。


(よかった……)


その笑顔を見て。


胸の奥が、少しだけざわつく。


『……』


理由は、わからない。


でも――


悪くない。


『……こんな日常生も悪くないな』


つい先日までの前世では


経験していなかったものだ。

心が満たされる。


猫の魔王。


悪魔の幼女。


風呂。


そして――


少しずつ縮まる距離。


『……いいな、これ』


静かに、そう思った。

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