11話 はじめての食卓、はじまる日常
『……さて』
城の中を見渡す。
静かだ。
さっきまで森の中で戦っていたとは思えないほど、
空気が落ち着いている。
『……拠点、か』
言葉にすると、少しだけ実感が湧く。
戦うだけじゃない。
休む場所がある。
戻る場所がある。
それだけで――
『だいぶ違うな』
小さく息を吐く。
そのとき。
ぐぅぅ……
『……』
音が鳴った。
『……腹?』
いや、俺じゃない。
視線を向ける。
リリン。
ベッドの上で、すやすやと眠っている。
だが――
お腹だけは、正直だった。
『……そういや』
戦闘後は回復する。
傷も、疲労も。
だが――
『腹は別か』
ゲームではなかった要素。
つまり。
『飯、必要だな』
スマホを開く。
【施設】
新しく項目が増えている。
『……お?』
スクロールする。
【居住区】はすでに作成済み。
その下に――
【食堂】
『……あるじゃねえか』
タップ。
【作成可能】
必要魔晶石:10
『安いな』
ゲームと違って日常で必要なものだ。
迷う理由はない。
タップ。
その瞬間――
城の奥で、光が走る。
『またか』
慣れてきたな、これ。
数秒後。
光が収まる。
『……行くか』
歩き出す。
後ろから――
とてとて、と足音。
「……まおーさま……」
『起きたか』
リリンが、目をこすりながらついてくる。
「……おなか……すきました……」
(ぺこぺこです……)
『だろうな』
『ちょうどいい』
『飯、作った』
「……えっ」
ぴたりと止まる。
「……ごはん……?」
(あるんですか……?)
『多分な』
自分でも“多分”なのが笑える。
だが――
『この城なら、なんとかするだろ』
そんな妙な確信があった。
食堂に入る。
『……おお』
そこには――
長いテーブル。
椅子。
そして。
料理。
『マジかよ』
湯気が立っている。
出来立てだ。
肉。
スープ。
パンのようなもの。
見たことのない料理もあるが――
『食えそうだな』
「……すごい……」
リリンが、目を輝かせる。
(おいしそう……)
『食っていいぞ』
その一言で――
「いただきます……!」
一気に距離を詰める。
ぱくっ。
もぐもぐ。
「……!」
目が見開かれる。
「……おいしい……!」
(すごい……あったかい……!)
『……そうか』
その反応だけで、十分だ。
リリンは夢中で食べている。
スープを飲んで、
パンをちぎって、
肉にかぶりつく。
『……ちゃんと“生活”になるんだな』
戦うだけじゃない。
食べて、
休んで、
戻る。
その繰り返し。
『……悪くない』
そのとき。
コツ、コツ……
別の足音。
振り向く。
眷属たちだ。
ゴブリン。
スライム。
ゾンビ。
ウルフ。
オーク。
スケルトン。
全員、入口で止まっている。
『……遠慮してんのか?』
少し考えて。
『来い』
一言、念話で送る。
――その瞬間。
ぞろぞろと入ってくる。
スライムはそのままテーブルに乗りそうになる。
『乗るな』
ぺたん、と床に落ちる。
ゴブリンは慎重に椅子に座る。
オークは普通に立ったまま食べ始めた。
『お前はそうなるよな』
ゾンビは――
無表情で食べている。
『味わってるのかそれ』
ウルフは、肉だけ持っていった。
スケルトンは……
『……食えんのか?』
骨の手でスープを持つ。
普通に飲んでる。
『飲めるんだ……』
カオスだが――
不思議と、まとまっている。
『……』
少しだけ、笑う。
『ちゃんと軍団になってきたな』
バラバラだった連中が。
同じ場所で、
同じ時間を過ごしている。
『……いいな、これ』
猫の魔王。
見えないスマホ。
そして――
拠点。
『……ここからだな』
静かに、そう呟いた。
面白いと思ってもらえたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです!
めちゃくちゃ励みになります!




