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10話 魔王の城と、リリンの部屋

GW中なので、今日は少し更新多めです。


15時 / 18時 / 21時 / 24時 に投稿予定。


まとめて読むもよし、追いかけるもよし。

お時間あるときに楽しんでもらえたら嬉しいです。

『……行くか』


目の前にそびえ立つ城を見上げる。


さっきまで森だった場所に、突然現れた“魔王の拠点”。


その異様さにも、もう驚くのはやめた。


『どうせ全部、俺の力だ』


そう割り切った方が早い。


「……あの」


リリンが、おずおずと声をかけてくる。


「はいって……いいんですか……?」


『は?』


思わず聞き返す。


『……俺の城だぞ?』


「あ……」


少しだけ、目を丸くして。


それから――


ぱあっ、と顔が明るくなる。


「じゃあ……はいっていいんですね……!」


(おうち……!)


『ああ』


軽く頷く。


巨大な扉の前に立つ。


石造りの扉。


明らかに重そうだが――


ギィィィ……


ひとりでに開いた。


『……自動かよ』


中に入る。


広い。


とにかく広い。


高い天井。


長い廊下。


無駄にでかい空間。


『……いや広すぎだろ』


完全に、王の城。


それも――


かなり格上のやつだ。


(すごい……すごいです……!)


リリンが、きょろきょろと周りを見回す。


「まおーさま……これ……」


「全部、使っていいんですか……?」


『……まあな』


実感はないが。


間違いなく、ここは“俺の拠点”だ。


『……ってことは』


少し考える。


『……部屋、分けるか』


「えっ」


『この広さだぞ?どうせ使いきれない』


リリンが、きょろきょろと辺りを見回す。


「……でも、どこがいいのか……」


『……ああ』


確かに。


広すぎるせいで、逆に分かりづらい。


そのとき――


城の奥で、ふわりと光が灯った。


『……ん?』


ひとつの扉が、ゆっくりと開く。


まるで――導かれるように。


「……あれ……」


リリンが、そっと近づく。


扉の中を覗いて――


「……ここ……」


ぽつりと呟く。


『……』


中を見る。


そこは――


ベッドや家具が整えられた、ひとつの部屋だった。


しかも――


妙に、リリンに合っている。


サイズも、空気も、雰囲気も。


『……自動で用意されたのか』


魔王の城。


主と眷属に合わせて、最適な環境を作る。


そういう仕組みらしい。


「……ここ、いいですか……?」


『ああ』


リリンは、安心したように中へ入る。


ベッドに触れる。


「……やわらかい……」


そのまま、ぽすんと座る。


「……あったかい……」


(すごい……おうち……)


『……』


その顔を見て、少しだけ肩の力が抜ける。


『……使え』


「……はい」


小さく頷いて――


そのまま、ベッドに倒れ込む。


「……もう……むりです……」


(ねます……)


『おう』


数秒後。


すぅ……


『……はや』


完全に寝た。


無防備な寝顔。


静かな寝息。


『……』


リリンが眠りについたあと。


ふと、気配に気づく。


『……来てたのか』


振り向くと――


眷属たちが、少し離れた場所に集まっていた。


ゴブリン。

スライム。

ゾンビ。

ゴブリンアーチャー。

ウルフ。

オーク。

スケルトンソルジャー。


全員が、城の中をじっと見ている。


『……入らないのか?』


声をかける。


すると――


最初に動いたのは、スライムだった。


ぷるん、と跳ねて。

ぺたぺたと床を這いながら、部屋の奥へ進んでいく。


『……自由だな』


ゴブリンは、きょろきょろと周囲を警戒しながら入る。

壁を叩いたり、床を踏んだりして――安全を確認しているらしい。


『お前は慎重派か』


ゾンビは――


……とくに何も考えていなさそうな顔で、

ふらふらと中に入っていった。


『いや、なんも考えてねぇなこれ』


ゴブリンアーチャーは、入口付近で止まり、

外と中の様子を交互に見ている。


『見張り役か。いい判断だ』


ウルフは、俺の足元にすり寄ってきてから――

静かに奥へ歩いていく。


縄張りの確認、って感じか。


オークは――


「……グォ」


低くうなりながら、柱や壁を叩いている。


『……強度チェック?』


スケルトンソルジャーは、黙って立っていた。


城の中心付近で、ぴたりと動かない。


『……守る位置、決めてるな』


それぞれが、それぞれのやり方で――


この場所を、“自分たちの拠点”として認識していく。


『……』


少しだけ、笑う。


『ちゃんと、機能してるな』


バラバラだった連中が――


ひとつの場所に集まり、

役割を持ち始めている。


『……俺のための城、ってわけか』


小さく呟く。


猫の魔王。


スケベ大魔王。


その拠点で――


初めての“日常”が始まった。

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