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不死の彼女は三度目に俺を殺すーPQ: Rebirth Protocolー  作者: 深蒼 理斗


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第34話:FOR WANT OF A NAIL

Aion側の兵士が、格納区画に流れ込んできた。

 ヤヒロは、トーチを振り回した。

 炎が、兵士を遠ざける。

 でも――

 弾が、ヤヒロの肩を掠めた。

「ぐっ――!」

 ヤヒロが、よろめいた。

 血が、流れる。

 痛い。

 でも――

 まだ、動ける。

 ヤヒロは、トーチを捨てた。

 そして――

 近くにあった金属パイプを掴んだ。

 兵士が、近づいてくる。

 ヤヒロは、パイプを振り下ろした。

 ガキン、という音。

 兵士が、倒れた。

 でも――

 次が来る。

 また次が来る。

 終わりがない。

 ヤヒロは、息を切らしていた。

 視界が、ぼやけてきた。

 ――くそ。

 もう、限界だ。

 でも――

 まだ、VEGAは帰ってきていない。

 もう少し。

 もう少しだけ。

 ヤヒロは、パイプを振り回し続けた。

 整備班の連中も、まだ戦っていた。

 でも――

 一人、また一人と、倒れていく。

 ヤヒロの視界に、仲間が倒れる姿が映った。

「……くそ!」

 ヤヒロが、叫んだ。

 でも――

 もう、声が出ない。

 喉が、渇いている。

 身体が、重い。

 ヤヒロは、壁に背中をつけた。

 息が、浅い。

 ――もう、駄目か。

 その時。

 空から、轟音が聞こえた。

 VEGAだ。

 スバルが、帰ってきた。

 ヤヒロは、笑った。

「……よし」

 でも――

 Aion側の兵士が、ヤヒロに銃を向けた。

 ヤヒロは、その銃口を見た。

 ――ああ、これで終わりか。

 ヤヒロは、目を閉じた。

 でも――

 その時。

 整備班の一人が、ヤヒロの前に飛び出した。

「ヤヒロさん!」

 銃声。

 整備班の男が、倒れた。

 ヤヒロは、目を見開いた。

「……おい!」

 ヤヒロが、男に駆け寄った。

 でも――

 もう、遅かった。

 男は、動かなかった。

 ヤヒロは、歯を食いしばった。

 ――くそ。

 くそ。

 くそ!

 ヤヒロは、パイプを握り直した。

 そして――

 兵士に向かって、突進した。

「くそがよーーー!」

 ヤヒロの叫びが、格納区画に響いた。

 ――その時。

 VEGAが、格納区画の上空に到達した。

 昴は、下を見た。

 炎が、上がっている。

 格納区画が、戦場になっていた。

「PQ、降りる!」

『了解!』

 VEGAが、急降下した。

 昴は、通信を開いた。

「ヤヒロ! 聞こえるか!」

 返事はなかった。

「ヤヒロ!」

 昴が、叫んだ。

 でも――

 返事はなかった。

 昴の心臓が、凍りついた。

 ――まさか。

 VEGAが、着地した。

 昴は、コックピットから飛び出した。

 格納区画へ走った。

 煙が、立ち込めている。

 昴は、咳き込みながら進んだ。

「ヤヒロ! どこだ!」

 その時。

 昴は、見つけた。

 ヤヒロが、倒れていた。

 血まみれで。

 動かない。

 昴は、駆け寄った。

「ヤヒロ!」

 ヤヒロの身体を揺さぶった。

 でも――

 反応がない。

 昴は、ヤヒロの手首を掴んだ。

 脈を探した。

 ――ない。

 昴の手が、震えた。

「……嘘だろ」

 昴の声が、震えた。

「ヤヒロ……起きろよ」

 でも――

 ヤヒロは、動かなかった。

 昴は、ヤヒロの身体を抱きしめた。

 涙が、零れた。

「……ヤヒロ」

 昴の声が、嗚咽に変わった。

「なんで……なんで……」

 亘一が、駆けつけてきた。

「スバル!」

 亘一が、昴の肩を掴んだ。

 そして――

 ヤヒロを見た。

 亘一の顔が、歪んだ。

「……ヤヒロ」

 亘一も、膝をついた。

 二人は、ヤヒロの身体を囲んだ。

 ――その時。

 Aion側の機体が、撤退していくのが見えた。

 彼らは、マリアを連れて行こうとしていた。

 でも――

 失敗した。

 マリアは、まだGenea側にいる。

 奪還作戦は、失敗した。

 でも――

 その代償は、重すぎた。

 ヤヒロが、死んだ。

 整備班の何人かも、死んだ。

 昴は、空を見上げた。

 Aion側の機体が、遠ざかっていく。

 昴は、拳を握りしめた。

ヤヒロの笑顔が、まぶたの裏に焼きついて離れない。

――許さない。

その一言だけが、昴の胸を支配していた。

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