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不死の彼女は三度目に俺を殺すーPQ: Rebirth Protocolー  作者: 深蒼 理斗


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第20話:WHEN ELEPHANTS FIGHT, IT IS THE GRASS THAT SUFFERS

登場人物紹介


ルシアン・ケイド/Lucian Cade

コールサイン:REGULUSレグルス

パラス隊を率いる指揮官。中尉。EIDOLON HUBエイドロン・ハブ出身の上流貴族。静かな礼節を纏い、感情を表に出さない。搭乗機ASX-01《REGULUSレグルス》は指揮・拘束・捕縛に特化した特務機。


カイル・ロウズ/Kyle Lowes

コールサイン:CASTORカストル

ルシアン直属の双子・姉。AS-17AX《AETERNUSアエテルヌス》AEGISパッケージ搭乗。射線と退路を封鎖し、相手の選択肢を奪う制圧役。


ミレイ・ロウズ/Mirei Lowes

コールサイン:POLLUXポルックス

ルシアン直属の双子・妹。AS-17AX《AETERNUSアエテルヌス》SPEARパッケージ搭乗。姉が作った勝ち筋に決定打を叩き込む強襲役。

宇宙は、音のない地獄だった。

 昴は、VEGAのコックピットで、その光景を見つめた。爆発の光が花火のように咲き、機体が墜ち、破片が散り、救難信号が無数に明滅している。まるで星が死んでいくのを早送りで見ているようだった。

 これが、大規模会戦。

 人の命が、数字になる場所。

『スバル、集中して』

 PQの声が、昴を現実に引き戻した。いつもより硬い。緊張している。いや、それ以上だ。恐れている。

「……分かってる」

 昴の手は、もう震えていなかった。慣れた。戦場に。死に。それが、一番恐ろしかった。人は、どんなことにも慣れてしまう。地獄にさえ。

《VEGA、こちらSHIFT。俺の三時方向、距離500を維持しろ》

 亘一の声。冷静だが、油断がない。いつもの余裕が、今日はない。

「了解」

 昴は、SHIFTの斜め後方に配置した。亘一の動きは、相変わらず別格だった。敵機を避け、味方を援護し、戦場を読みながら最適なポジションを取り続ける。天才、というのはこういうことなのだろう。数学の問題を解くように、戦場の方程式を瞬時に計算している。

 昴は、その背中を見つめた。いつか、あんな風に戦えるようになるのだろうか。

《スバル、今日は特に警戒しろ》

 亘一の声が、更に低くなった。

「……何か?」

《Aion側の特務部隊が動いてる。REGULUS、CASTOR、POLLUX。パラス隊だ》

 昴の心臓が、跳ねた。

 ルシアン・ケイドと、双子姉妹。

 前回の交戦で、CASTORの腕を砕いた。あのとき、RB-3で制御を失いかけた。戦うことの快感に飲まれかけた。

 また、会うのか。

『スバル、心拍が上がってる』

 PQの声が、心配そうだった。

「……平気」

『平気じゃない。君の身体は、嘘をつけない』

 PQの言葉に、昴は苦笑した。本当に、何も隠せない。

「……でも、今は集中するしかないだろ」

『その通り。だから、深呼吸して』

 昴は、従った。吸って、吐いて。心拍が、少しだけ落ち着く。

 ――その時。

 センサーが、複数の光点を捉えた。

 距離4000。Aion側の機体。十数機。その中に、一際大きな光点が、まるで王のように中央に鎮座している。

 ――REGULUS。

 そして、左右を固める二機。双子だ。

『来た……』

 PQの声に、緊張が走った。

《全機、戦闘態勢。REGULUS隊、接近中》

 通信が飛ぶ。戦場全体の空気が、変わった。誰もが知っている。パラス隊が来れば、戦況が変わる。

 昴は、操縦桿を握り直した。手のひらに汗が滲む。

 敵機が、近づいてくる。

 黒い機体――REGULUS。修理されている。前回のオーバーヒートの痕跡はない。冷却系統が、完全に新調されているのが見えた。

 そして、双子機。

 CASTOR。左腕が、新しい装甲で覆われている。修理跡が、まるで古傷のように残っている。

 POLLUX。無傷。でも、動きが前回より慎重だ。警戒している。学習している。

 隊形が、完璧だった。まるで一つの生き物のように、三機が呼吸を合わせている。

《Genea機、確認。VEGA……また会ったな》

 ルシアン・ケイドの声。

 冷静で、抑揚がない。でも、その奥に、何かが燻っている。復讐心ではない。もっと冷たいもの。所有欲だ。VEGAを手に入れたい、という欲望が、声の端々から滲み出ている。

《前回は、不覚を取った。今日は、そうはいかない》

 昴は、答えなかった。答えたくなかった。

 でも、PQが囁いた。

『スバル、挑発に乗らないで』

「……分かってる」

 ――その時。

 戦場の配置が、動いた。

 REGULUSが、ゆっくりと前線から離れていく。

《……何?》

 亘一の声が、困惑した。

《REGULUSが離脱? どこへ――》

 昴もセンサーを追った。

 REGULUSが向かう先。そこに、AETERNUS《VEIL仕様》が一機、単独で戦闘している。

 マリアの機体。

 ――ルシアン・ケイドは、REGULUSのコックピットで、マリアの機体を見つめた。

「……マリア」

 彼の声に、初めて感情が滲んだ。心配。焦燥。そして、独占欲。

『確認。AETERNUS《VEIL-09》。マリア・シンクレア搭乗。被弾率、上昇中』

 VEEの声が、淡々と告げる。

「彼女を、守る」

 ルシアンは、躊躇なく前線を離れた。部下を、戦場に残して。それが正しい判断なのかどうか、考えもしなかった。マリアを守る。それだけが、今の彼の行動原理だった。

 ――それが、全ての歯車を狂わせた。

 双子機が、取り残された。

《ルシアン様……?》

 CASTORの声が、通信に響いた。困惑と不安が、声に滲んでいる。

《なぜ、離脱を――》

《CASTOR、POLLUX。前線を維持しろ》

 ルシアンの声が、冷徹だった。命令。絶対の命令。

《私は、VEIL-09の援護に向かう》

《でも――》

《命令だ》

 通信が切れた。

 双子は、顔を見合わせた――物理的には不可能だが、ツインリンクで互いの動揺を感じ取った。姉の不安。妹の焦り。それが、リンク越しに混ざり合う。

《……姉さん、どうする?》

 POLLUXの声が、不安そうだった。

《……前線を維持する。ルシアン様の命令だから》

 CASTORの声が、震えていた。でも、従う。彼女たちには、それしかない。

 でも、その目の前に――

 SHIFTが現れた。

《悪いけど、通してもらう》

 亘一の声。いつもの余裕が戻っている。

 SHIFTが、二機の間を抜けようとした。

 CASTORとPOLLUXは、反射的に挟撃態勢を取った。ツインリンクで、互いの動きを完璧に同期させる。

《させない……!》

 CASTORが、SHIFTの進路を塞ぐ。

《姉さん、私が右から!》

 POLLUXが、側面を取る。

 二機の連携。完璧なタイミング。

 でも――

 SHIFTが、消えた。

 いや、消えたわけじゃない。加速した。二機の攻撃の隙間を、紙一重で抜けた。

《え……!》

 POLLUXの声が、驚いた。

《速い……!》

 CASTORが、振り返る。

 でも、SHIFTはもう二機の背後にいた。

 亘一の声が、冷静に響いた。

《ツインリンク、確かに強い。でも、欠点がある》

《欠点……?》

《同期のタイミングに、0.2秒の遅延がある》

 CASTORの背筋が、凍った。

《そこを突けば――》

 SHIFTが、動いた。

 光が走り、CASTORの肩部装甲が削れた。

《きゃっ……!》

《姉さん!》

 POLLUXが、叫んだ。姉への援護に向かう。

 でも、SHIFTは既に次の位置に移動していた。

 今度は、POLLUXの側面を取る。

《くっ……!》

 POLLUXが、回避する。間に合った。でも、ギリギリだった。

 亘一の声が、まるで教師のように響いた。

《君たちは強い。でも、俺一人を止めるには、まだ足りない》

《くっ……何よ、この人……!》

 POLLUXの声が、苛立った。

《姉さん、どうするの!》

《……分からない》

 CASTORの声が、初めて弱気になった。

 亘一は、二機を翻弄し続けた。攻撃パターンを読み、ツインリンクの遅延を利用し、隙を突き続ける。まるで、二機を手のひらで転がすように。

 そして――

 SHIFTの一撃が、POLLUXの武装を砕いた。

《きゃあっ!》

《妹!》

 CASTORが、妹を庇おうとした。

 でも、SHIFTの次の攻撃が、CASTORの推進器を削った。

《くっ……!》

 二機とも、後退せざるを得なくなった。

 亘一の声が、静かに響いた。

《……撤退しろ。これ以上やっても、君たちは勝てない》

《――!》

 CASTORの声が、悔しさで震えた。

《覚えてなさい……! 次は、絶対に……!》

 二機が、離脱した。

 亘一は、追わなかった。ただ、その背中を見送った。

 ――一方、昴は、別の地獄にいた。

 REGULUSとVEIL-09が、左右から挟み込むように配置される。

 二対一。

 昴は、息を呑んだ。

「……マジかよ」

『スバル……』

 PQの声が、沈んだ。

『ルシアン・ケイドと、マリア・シンクレア。Aion側の最高クラスが二人』

「……勝てるのか?」

『分からない。でも、やるしかない』

 昴は、覚悟を決めた。操縦桿を握る。手のひらが、汗で滑る。

 ――その時。

 マリアの機体が、わずかに動きを止めた。

 一瞬だけ。0.5秒にも満たない。

 でも、確かに止まった。

 ――マリア・シンクレアは、VEGAを見つめていた。

 あの機体。

 あの中に、「スバル」がいる。

 やっと、会える。

 三度目の、出会い。

 声は、何度も聞いた。帯域の指紋を、何度も追った。確信している。間違いない。

 でも――

 手が震える。引き金に指がかかっているのに、力が入らない。

《マリア》

 ルシアンの声が、マリアを呼んだ。

《聞こえているか》

「……聞こえてる」

 マリアは、小さく答えた。声が震えそうになるのを、必死に抑える。

《挟撃する。君が左、私が右。VEGAの退路を塞げ》

「……了解」

 マリアの機体が、動いた。

 でも、心は、動かなかった。

 ――本当に、殺せるのか。

 ――本当に、これでいいのか。

 答えが、出ない。胸の奥で、何かが叫んでいる。やめろ、と。でも、もう一つの声が囁く。これしかない、と。

 でも、今は戦うしかない。

 ルシアンの前で、弱みは見せられない。

 マリアは、歯を食いしばった。VEGAへ向かって、加速した。

 ――昴は、二機の動きを見た。

 REGULUSが右から。

 VEIL-09が左から。

 逃げ場がない。まるで、罠にかかった獣のように。

『スバル、どうする?』

 PQの声が、緊張した。

「……戦うしかない」

 昴は、ライフルを構えた。心臓が、ドラムのように打ち鳴らす。

 まず、どちらを狙う?

 ルシアンか、マリアか。

 ――マリアだ。

 前回の交戦で、マリアのほうが動きに癖がある。読める。隙がある。

 昴は、マリアの機体に照準を合わせた。

 引き金を引く。

 光が走った。白い閃光が、宇宙を裂く。

 でも、マリアは避けた。ギリギリで。

 そして――

 反撃が来なかった。

 マリアの機体が、射程に入ったのに、撃ってこない。ただ、VEGAを見つめているだけ。

 昴は、眉を寄せた。

「……何だ?」

『スバル、隙だ。もう一度!』

 昴は、再び撃った。

 光が走る。

 マリアは、またギリギリで避けた。

 でも、反撃しない。

 ――おかしい。

 昴の胸に、疑問が浮かんだ。なぜ、撃ってこない? 何を、ためらっている?

 でも、考えている暇はなかった。

 REGULUSが、背後から攻撃してきた。

『後ろ!』

 昴は、急回避した。

 ルシアンの砲撃が、VEGAの装甲を掠める。熱が、コックピットまで伝わってくる。

《……マリア、何をしている》

 ルシアンの声が、冷たくなった。氷のように。

《攻撃しろ》

「……分かってる」

 マリアの声が、震えていた。

 マリアの機体が、ようやく攻撃してきた。

 でも、照準が甘い。まるで、わざと外しているかのように。

 昴は、簡単に避けられた。

『スバル、相手、何かおかしい』

 PQの声が、困惑した。

『マリア、本気で戦ってない』

「……なんで?」

『分からない』

 昴は、混乱した。敵なのに、本気で戦ってこない。理由が、分からない。

 でも、今はそれを利用するしかない。

 昴は、マリアの隙を突いて、ルシアンに集中した。

 REGULUSとの一対一。

 ルシアンは、強かった。

 動きに無駄がない。攻撃が正確。回避が完璧。まるで、機械のように。いや、機械以上に。計算された美しさがあった。

 昴は、必死に対応した。

 でも、押されている。じわじわと、追い詰められている。

『スバル、このままじゃ……』

「分かってる……!」

 昴の呼吸が、荒くなった。心拍が限界に近づく。

 ――その時。

 ルシアンの声が、低く響いた。まるで、氷の刃のように。

《……マリア、君は命令に従えないのか》

 マリアの機体が、ビクリと震えた。

《本気で戦え。でなければ、私が君を――》

「分かった……!」

 マリアの声が、叫びに近かった。悲鳴のように。

「分かったから……!」

 マリアの機体が、本気で動き始めた。

 速度が上がる。攻撃が鋭くなる。まるで、別人のように。

 昴は、両方から攻められた。

 ルシアンとマリア。

 二人の攻撃が、息を合わせて襲ってくる。右から、左から、上から、下から。逃げ場がない。

「くそっ……!」

 昴は、回避に専念した。

 でも、間に合わない。

 砲撃が、VEGAの装甲を削る。警告音が、耳を劈く。

『スバル、装甲が持たない……!』

「PQ、RB――」

『まだ早い! もう少し粘って!』

 昴は、歯を食いしばった。

 でも、限界が近かった。視界が、汗で霞む。

 ――そして、決定的な瞬間が来た。

 ルシアンとマリアの攻撃が、完全に同期した。

 左右から、同時に。まるで、一つの意思で動いているかのように。

 逃げ場がない。

『スバル、RB-3!』

「やれ!」

 PQの声が、システムトーンに変わった。

『Reverse Boost Level 3:Limiter Break。起動!』

 世界が、変わった。

 VEGAの出力が跳ね上がり、昴の視界が鮮明になる。まるで、世界が一段階クリアになったかのように。

 敵の動きが、全て見える。ルシアンの次の一手。マリアの呼吸。全部。

 昴は、二機の攻撃の隙間を、紙一重で抜けた。

《……何!》

 ルシアンの声が、初めて動揺した。

 昴は、反撃に転じた。

 VEGAが、ルシアンの機体に肉薄する。まるで、光のように。

 ライフルを撃つ。

 光が走り、REGULUSの装甲が削れた。

《くっ……!》

 ルシアンが、後退する。

 昴は、追った。高揚感が、身体を満たす。勝てる。倒せる。

 でも――

『スバル、マリアが来る!』

 昴は、振り返った。

 マリアの機体が、昴とルシアンの間に割り込もうとしている。

 昴は、マリアに向き直った。

 そして、攻撃した。

 VEGAの速度が、マリアの反応を上回る。

 光が走り、マリアの機体の武装が砕けた。

《きゃっ……!》

 マリアの悲鳴。女性の、悲鳴。

 マリアの機体が、制御を失いかけた。

 昴は、更に攻撃しようとした。引き金に、指がかかる。

 でも――

 手が、止まった。

 なぜだ。

 なぜ、撃てない。

 敵なのに。

 倒すべきなのに。

『スバル、今! 追い討ちを――』

「……できない」

 昴の声が、震えた。

「なんで、俺……」

『スバル! 後ろ!』

 ルシアンの攻撃が、背後から来た。

 昴は、慌てて回避した。

 でも、間に合わなかった。

 砲撃が、VEGAの推進器に直撃した。

 爆発。世界が、揺れた。

 警告音が鳴り響く。

『推進器、損傷! 出力低下!』

「くそっ……!」

 昴の視界が、揺れた。

 RB-3の負荷が、限界に達している。機体が、悲鳴を上げている。

『スバル、RB-3解除する! これ以上は――』

「待って! まだ戦える!」

『無理! 君の身体が持たない!』

 でも、昴は止まらなかった。

 まだ、戦える。

 まだ、負けたくない。

「PQ、他にRBは?」

 PQが、少しだけ沈黙した。

 そして――

『……ある。RB-1』

「それ、使える?」

『使えるけど……スバル、聞いて』

 PQの声が、真剣になった。今までで、一番真剣な声だった。

『RB-1:Over-Syncオーバーシンク。これは、RB-3とは違う』

「……どう違う?」

『RB-3は機体のリミッターを解除する。でも、RB-1は――』

 PQの声が、震えた。

『君の脳を、オーバーライドする』

 昴は、息を呑んだ。

「……どういうことだ?」

『君と僕の同期率を極限まで上げる。君の思考速度が上がり、反応速度が上がり、判断能力が跳ね上がる』

 PQが、続けた。

『でも、代償がある』

「代償……?」

『最長で7分から8分しか持たない。それを過ぎると、君の脳が過負荷で行動不能になる可能性がある』

 昴の手が、震えた。

『それに、副作用がある。視界ノイズ。一時的な記憶障害。最悪の場合――』

「……最悪の場合?」

『君が、壊れる』

 PQの声が、悲しそうだった。

『だから、RB-1は切り札中の切り札。本当に、使うべきじゃない』

「……でも、今使わなかったら?」

『君は、死ぬ』

 PQが、断言した。

『ルシアンとマリア、二人相手じゃ、RB-3だけじゃ勝てない』

 昴は、考えた。

 死ぬか、壊れるか。

 選択肢は、それだけ。

「……PQ、RB-1、使おう」

『スバル……』

「大丈夫」

 昴は、笑った。震える声で。

「お前が、いるだろ」

『……』

 PQは、少しだけ沈黙した。

 そして――

『……分かった。でも、条件がある』

「条件?」

『君の同意が、必要。RB-1は、君の意思でしか起動できない』

 PQの声が、温かくなった。

『スバル、本当にいい? 君が壊れるかもしれない』

「……いいよ」

 昴は、頷いた。

「俺、まだ死にたくない。日和が、待ってる」

『……そうだね』

 PQの声が、優しかった。

『じゃあ、行こう。一緒に』

 システム音が、二重に響いた。

『RB-3:Limiter Break、継続』

『RB-1:Over-Sync、起動準備』

 PQの声が、昴の中で響いた。

『スバル、君の同意を、もう一度確認する』

「……ああ」

『RB-1を起動すると、君と僕は、完全に同期する。君の思考が、僕の思考になる。僕の判断が、君の判断になる』

 PQの声が、震えた。

『それでも、いい?』

「……ああ」

 昴は、目を閉じた。

「お前を、信じてる」

『……ありがとう』

 PQの声が、温かかった。

『じゃあ、行くよ。スバル』

『RB-1:Over-Sync、起動!』

 ――世界が、爆発した。

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