第18話:MISFORTUNES NEVER COME SINGLY
彼方の死後、マリアは壊れかけた。
二度も、失った。
二度も、同じ痛みを味わった。
――もう、嫌だ。
マリアは、リナに言った。
「CIPを受けたい」
「……本気?」
「本気よ」
マリアは、リナの目を見た。
「全部、忘れたい。透も、彼方も」
リナは、溜息をついた。
「……マリア、本当にいいの?」
「いい」
マリアは、頷いた。
でも、手続きを進める中で、マリアは気づいた。
――忘れたくない。
透の笑顔。彼方の絵。二人の優しさ。
全部、忘れたくない。
マリアは、CIPを拒否した。
「……やっぱり、やめる」
「マリア……」
「ごめん、リナ。やっぱり、無理」
マリアは、泣いた。
「忘れたくない……でも、また会いたくない……!」
リナは、マリアを抱きしめた。
「……馬鹿ね、あなた」
「……分かってる」
マリアは、リナの肩で泣き続けた。
――そして、決めた。
三度目は、ない。
もし、また会ったら――
もし、また「スバル」という名前を持つ人と会ったら――
その時は、自分の手で殺す。
繋がりを、断ち切る。
再会の可能性を、自分で消す。
それが、唯一の救いだと思った。
マリアは、軍に入った。
戦うために。
殺すために。
――そして、今。
マリアは、監視室で目を開けた。
回想が、終わった。
現実に、戻ってきた。
共通帯域に、まだあの声が残っている。
「スバル」。
三度目の、出会い。
マリアは、拳を握った。
――殺す。
自分の手で、殺す。
そうすれば、もう会わない。
もう、失わない。
もう、苦しまない。
でも、胸の奥で、小さな声が囁いた。
――本当に、それでいいの?
マリアは、その声を無視した。
決めたことだ。
揺らがない。
揺らいでは、いけない。
――不幸は、決して一つでは来ない。
マリアは、それを知っていた。
一度会えば、二度会う。
二度会えば、三度会う。
そして、三度目は――
終わりにしなければならない。
マリアは、立ち上がった。
次の任務へ向かう。
VEGAを見つける。
「スバル」を見つける。
そして――
殺す。
それが、マリアの決意だった。




