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不死の彼女は三度目に俺を殺すーPQ: Rebirth Protocolー  作者: 深蒼 理斗


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第17話:A PICTURE IS WORTH A THOUSAND WORDS

彼方との日々は、穏やかだった。

 透のときとは違う。

 戦争の影がない。日常がある。

 マリアは、彼方のギャラリーに通った。

 絵を見て、話をして、一緒に過ごした。

 彼方は、マリアを受け入れてくれた。

 不思議そうな顔をしながらも、優しく。

「マリアさん、また来てくれたんですね」

「……ええ」

「嬉しいです。最近、お客さん少なくて」

 彼方が、苦笑した。

「絵だけじゃ、食べていけないんですよ」

「……それでも、描き続けるんですか」

「ええ」

 彼方が、頷いた。

「描かずにはいられないんです」

 その言葉が、透と重なった。

 透も、同じことを言っていた。

 「助けずにはいられない」と。

 マリアは、彼方に聞いた。

「……彼方さん、不死には興味ありますか」

「不死?」

 彼方が、首を傾げた。

「クローン更新のことですか?」

「ええ」

「興味ないですね」

 彼方が、即答した。

「僕は、有限でいいです」

 ――同じ答えだった。

 透と、全く同じ。

「……彼方さん」

「はい?」

「私と、一緒にいてくれませんか」

 マリアの声が、震えた。

 彼方は、少しだけ驚いた顔をした。

「……マリアさん、僕のこと、好きなんですか?」

「……分かりません」

 マリアは、正直に答えた。

「でも、あなたといると、懐かしい気持ちになります」

「懐かしい……」

 彼方が、マリアの目を見た。

「僕も、同じです」

 彼方が、マリアの手を取った。

「初めて会ったのに、ずっと知ってたような気がします」

 マリアの目から、涙が零れた。

 彼方が、優しく拭った。

「泣かないでください」

「……ごめんなさい」

「謝らないで」

 彼方が、微笑んだ。

「マリアさんの涙、綺麗ですよ」

 ――二人は、恋人になった。

 でも、マリアは不安だった。

 また、失うかもしれない。

 透のときのように。

 その不安を、彼方に打ち明けた。

「彼方さん、私……怖いんです」

「何が?」

「あなたを、失うのが」

 マリアの声が、震えた。

「私は、不死です。でも、あなたは有限です」

「……そうですね」

 彼方が、頷いた。

「でも、それでいいんじゃないですか」

「……どうして?」

「僕が有限だから、今を大事にできます」

 彼方が、マリアの手を握った。

「マリアさん、僕は長生きしますよ。約束します」

「……約束、できないでしょ」

「できます」

 彼方が、笑った。

「だって、マリアさんと一緒にいたいから」

 その言葉が、マリアを救った。

 ――でも、約束は守られなかった。

 時間は、容赦なく流れた。

 彼方は、年を取った。

 髪が白くなり、背中が曲がり、歩くのが遅くなった。

 でも、マリアは変わらなかった。

 クローン更新で、若いまま。

 二人の見た目の差が、広がっていった。

 彼方は、それを笑った。

「マリアさん、僕の娘に見えますね」

「……笑い事じゃありません」

「でも、面白いでしょ?」

 彼方が、マリアの頬に手を当てた。

 上から下へ。ゆっくりと。

 透と同じ癖。

「いつからか、無意識にやってるんです。マリアさんの顔を触るとき」

 マリアは、涙が零れそうになった。

 魂が、覚えている。

 前世の癖を、今世でも繰り返している。

 ――でも、時間は止まらない。

 彼方は、八十歳で死んだ。

 寿命。

 穏やかな死。

 マリアは、彼方の手を握っていた。

「……マリアさん」

 彼方が、弱々しく言った。

「僕、幸せでした」

「……私も」

「また、会えるかな」

「……会えます」

 マリアは、泣きながら答えた。

「必ず、また会えます」

「そうですか……」

 彼方が、微笑んだ。

「じゃあ、また」

 そして、彼方の手が、力を失った。

 ――二度目の、別れ。

 マリアは、彼方の遺体を抱きしめた。

 一枚の絵が、千の言葉より雄弁に語る。

 彼方が残した絵には、マリアが描かれていた。

 笑顔のマリア。

 泣いているマリア。

 怒っているマリア。

 全てのマリアが、そこにあった。

 ――でも、本物のマリアは、もう笑えなかった。

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