第15話:WORDS ONCE SPOKEN ARE PAST RECALLING
終わりは、突然だった。
爆撃。
中立地帯の病院が、誤爆された。
マリアは、瓦礫の下から這い出た。
身体は無事だ。クローン更新で維持された、頑丈な身体。
でも、周りは地獄だった。
建物が崩れ、炎が上がり、人が叫んでいる。
「透……!」
マリアは、叫んだ。
瓦礫を掻き分けて、探した。
――見つけた。
透が、倒れていた。
胸から血が流れている。呼吸が浅い。
「透!」
マリアは、駆け寄った。
透の身体を抱き上げる。軽い。こんなに軽かったのか。
「……マリア?」
透が、目を開けた。
「大丈夫……私が、ここに――」
「……良かった。君が、無事で」
透が、微笑んだ。
血が、唇から零れた。
「透、喋らないで! 今、助けを――」
「……間に合わない」
透が、マリアの手を握った。
「分かってる。これは、駄目だ」
「嘘! あなたは医師でしょ! 自分で分かるはずない!」
マリアの声が、震えた。
「透、お願い……死なないで……」
「……マリア」
透が、マリアの頬に手を当てた。
「泣いてる?」
「泣いてない……!」
でも、涙が止まらなかった。
透が、優しく微笑んだ。
「……君、温かいよ」
「透……」
「マリア、約束する」
透の声が、掠れた。
「必ず、生まれ変わって、君を見つける」
マリアは、首を振った。
「そんなこと、できない……! 生まれ変わりなんて――」
「できる」
透が、断言した。
「俺は、必ず君を見つける。何度でも」
透の手が、マリアの顔をなぞった。
上から下へ。ゆっくりと。
「これが、俺の癖だ。覚えておいて」
「……透」
「次に会ったとき、また同じことをする」
透が、最後の力で笑った。
「それが、俺の証明だ」
そして、透の手が落ちた。
呼吸が、止まった。
マリアは、叫んだ。
声にならない叫び。
世界が、色を失った。
――一度口にした言葉は、取り消せない。
透の約束は、マリアの心に刻まれた。
消えない。
忘れられない。
そして、それがマリアを、次の地獄へ導いた。




