疑心暗鬼
西側の蝗害による飢饉、南側の疫病、疫病から始まった国中の内乱。
市民も貴族も、国に不審の目を向けていた。
また、国を信用できなくなった貴族たちは、独立を宣言し始めた。
始めは王妃が国政を握ることで安定していた状況であったが、1年もしない間に、より大きな問題に発展したことで、家臣たちからの支持も自然と下がってしまった。
「なぜ。なぜだ。寵姫にうつつを抜かす陛下から実権を握ったというのに、なんなのだこれは!?」
もはや表情も見かけの行動も取り繕えなくなった王妃は、執務室内の道具や書類を手で払った。
音を立てて落ちるそれらを、家臣たちは冷めた目で見ている。
やはり女に政は無理だったのだと、その目は物語っていた。
「やはり、焼き討ちはやり過ぎだったのでは?」
「お前たちだって、反対していなかったであろう!?」
「反対はしておりませんが、賛成もしておりませんなぁ。」
家臣たちは、国中の混乱を、王妃一人に責任を押し付けようとしているかのよう。
「それをいうなら、お前たちこそどうなのだ!?焼き討ちは完璧に情報統制していたはず!誰かが内密に漏らしたのではあるまいな!?」
「そのようなこと、するはずがありません!」
「そうです!国の決定を漏らすなど!」
「ならば、誰が漏らしたというのだ!?」
「現状はまだ……」
「仕事が遅いのではないか!?」
「な!?」
王妃と家臣たちの言い争いは、今や日常茶飯事。
解決するはずのないことばかり言い合って、早急に対策が必要なことに時間を割いていない。
そして、頭に血が上った者たちは、それにすら気がつかない。
問題は国の上層部だけではない。
彼らの争いは、使用人たちがよく見ていた。
使用人は、置き物だとしか思っていないものは多い。
平常時であれば、常に人に見られていると考えると日常を過ごしづらい。
だが彼らは、何も言わずとも見ているのだ。
特に上層部に使える使用人たちは、国が崩壊へと向かっているのを刻々と感じ取っていた。
使用人の情報網は、非常に広い。
国の正確な情報を、上から下へ使用人の間で流れていた。
国の上層部が把握する前に、王城から徐々に使用人の数が減っていった。
掃除や日々の細かな作業が滞ることになって、ようやく気づいた時にはすでに手遅れだった。




