ヒュウガ(陽向)
お待たせしました。
書いてるうちに吐き気が……。
というかこの回、大丈夫だろうか。
〝何が〟かは、読めばわかると思います。
それは、俺にとって突然の出来事だった。
現在俺は、城の救護室のベッドの上にいる。
なにがあったのかと言えば……。
いつも通りミシェルを抱いた俺が城の廊下を歩いていると、訓練場に王様とガユードと村を襲っていた魔族の男、そして魔族の男の首根っこを掴むメイド姿の銀髪美少女がいた。
城で見たことのない子だ。
もしかして、〝あいつ〟のメイドなのか?
だとしたら寝取って俺のものにしたらさぞ気分がいいだろうな。
最近、ミシェルを抱くともやもやして気分を変えたかったので、ちょうどいい。
そう思った俺は、銀髪美少女に話し掛けることにした。
しかし、結果は散々だった。
話し掛けるまではよかったのに、胸に触れようとした瞬間、俺の手首から先が無くなった。
いつの間に斬られたのか、勇者であるはずの俺でさえ全くわからなかった。
到底人間の少女ができる芸当じゃない。
圧のかけ方も同じで、人間の少女に出せるような圧じゃなかった。
今は、完全回復薬っていう薬を飲んで元通り使えるまでに回復しているから、問題はない。
つか、あんな子をメイドにしているあいつは、いったい何者なんだ?
あの子が圧を放っているとき、向けられていないはずなのに、王様と魔族の男は明らかに怯えた様子だった。
なのにあいつは平気な顔して立っていた。
只者じゃない。
なんせ、魔族の男を任せて逃げた俺の尻拭いをやってのけた上に、その功績を俺がしたことにするくらいの余裕があるくらいだからな。
もう、俺じゃなくて、あいつが勇者でいいんじゃないか?
「ヒュウガ様、どうされたのですか? 思い詰めた顔をされていますよ?」
いつの間にかミシェルが傍まで来ていた。
「いや、ちょっと自分に自信が無くなっただけだ。ガユードの奴と比べたら、俺って魔族と戦うこともできないただの淫乱男なんだなって思ってさ……」
「なにを仰るんですか! そんなことはありません!」
「えっ?」
俺の手を両手で包み込むように握りながら否定してくるミシェルに、単純に驚いた。
「ヒュウガ様はあの時、私も一緒に連れて逃げ出してくださいました。ヒュウガ様のテクニックならばあらゆる女性が虜になる、私はそのうちの一人にすぎない、と常々思っていました。故に、逃げると仰られたとき、〝あぁ、私はこれで捨てられるのだな〟と思いました。しかし、ヒュウガ様は私の手を握り締め〝逃げるぞ〟と仰ってくださいました」
ミシェルの言葉一つ一つが俺の胸に響く。
「ヒュウガ様、私は最初はヒュウガ様を拒みました。正直に申しましてタイプではなかったですし、神官の身でありながら純潔を捨てるのはご法度でしたから」
今度はミシェルの言葉一つ一つが俺の胸に突き刺さる。
「しかし、ヒュウガ様のテクニックの虜になり、いつしかヒュウガ様自身の虜にもなっていました。なぜだかわかりますか?」
そんなこと、俺から言えるわけがない。
答えられないでいると、ミシェルが微笑みながら答えを言った。
「それは、ヒュウガ様の根の優しさに触れたからです。私を抱くとき、体だけの関係ならば乱暴に、自分だけ気持ちよくなるようになさればいいのに、ヒュウガ様はいつもちゃんと私が気持ちよくなるように抱いてくださいました。もちろん、それだけでは本当に優しいのかわかりません。決定的だったのが、魔族との戦いから逃げ出すときでした。ああいった場合、咄嗟に私の手を握るなど、無意識のうちにできるものではありません。ヒュウガ様はご自身が思っているよりも優しい方だと、私は確信しています」
そう言われると、そうなのかもしれない。
いや、違う。今までの俺なら、どんなに可愛い女だろうと体だけの関係で終わらせていた。
でもあの時、確かにミシェルを連れて逃げないとと思ってミシェルの手を握った。
今までの女なら、絶対あそこで捨てていたはずなのに。
「ヒュウガ様、私は、ヒュウガ様が逃げると仰られたとき、こうも思いました。〝嫌だ、捨てられたくない、ヒュウガ様と離れたくない〟と。そこで自分の想いに気づいたのです。私は、ヒュウガ様のことを〝好き〟なのだと。ヒュウガ様の優しさに惹かれたからこそ、自分が気づかないうちに好きになっていたのです」
頬を赤らめながら告白してくるミシェル。
そうか、だからあの時俺はミシェルの手を握ったんだな。
「……俺も同じだ」
「ヒュウガ様?」
「他の女だったら、絶対に捨ててた。でも、なぜかミシェルを捨てるなんてそんなこと絶対できないって思った。それはつまりそういうこと、なんだろうな。……好きだ、ミシェル。俺と、結婚を前提に付き合ってくれ」
告白したことで、ここ最近あった胸のもやもや感が無くなった。
つまり、俺の気持ちは間違ってないってことだ。
ミシェルは、少しの間があった後、涙を流し始めた。
えっ、そんなに俺と一緒になるのが嫌なのか!? さっき好きになったって言ってたのは、嘘だったのか!?
俺が困惑していると、ミシェルは涙を流しながら微笑んだ。
「ヒュウガ様、安心してください。これは嬉し涙です。ヒュウガ様のことを好きなのだと実感できることが、なによりも嬉しいんです。不束者ですが、よろしくお願いいたします」
えっ、ミシェルって、こんなに可愛かったっけ?
いや、常に可愛いんだけど、今はいつも以上に可愛く見える。
可愛すぎて無意識にミシェルを抱き締めるくらい可愛い。
「ひゃっ! ひ、ヒュウガしゃま!? 今抱きつかれると、我慢できなくなります!」
「じゃあ、恋人になった記念に、気絶するまで抱いてやるよ」
こうして、俺とミシェルは恋人同士になり、ここが救護室だということも忘れ、ミシェルが気絶するまで抱いたのだった。
いやこれ、何を見せつけられているんだ……?




