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始祖竜になりました  作者: ユウギリ
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ヘリナ

本日2度目の更新。


 ガユード様に頼まれて魔族の男――コープスの面倒を見ることになった。


 屋敷に戻ってくると、サリーシャさんが驚いた。


「お帰りなさい……って、魔族!?」

「ただいま戻りました。この魔族はガユード様に面倒を見るように頼まれて連れてきました。一緒に面倒見ましょうね」

「あ、そうなのね。始祖竜様の頼みなら仕方ないわ。一緒に面倒見てあげる」


 サリーシャさんは相変わらずツンデレ気質だ。


 それにしても、さっきのガユード様は、明らかに私の前世の名前を口にしていた。


 誤魔化されたけど、確りと私の耳に残っている。


 本当に、お兄ちゃんがガユード様になったのかな?


 私がこの体に転生したのは、女神様にお兄ちゃんが書いた小説の世界を基に造った世界があると言われたからだ。


 しかも、この体は前世の私をモデルにしていて、ガユード様の人間の姿はお兄ちゃんがモデルで、その上、お兄ちゃんがその小説を書いた理由が、小説の中でだけでも私と暮らせるようにだとも言われた。


 そんなこと言われたら、転生しない理由がない。


 だって、私はお兄ちゃんのことが大好きだから。もちろん、異性として。


 私がモデルのヘリナは、吸血鬼だけど吸血鬼の持つ弱点すべてに絶対的な耐性を持った特殊個体で、吸血鬼の一族から追い出される。


 路頭に迷うヘリナを助けてくれるのが、お兄ちゃんがモデルの始祖竜であるガユード様。


 でも、よく考えたら、私が転生したところでガユード様はお兄ちゃんじゃない。似ていたところで本人ではないから一緒にいても楽しくない。


 お兄ちゃんがいない世界で生きるなんて耐えられない。


 それならと女神様がこんなことを提案した。


 始祖歴5700年7月6日にお兄ちゃんの魂をガユード様の体に植え付ける、と。


 ただ、ヘリナが産まれるのは始祖歴4918年6月20日と、782年はお兄ちゃんに会えない期間があった。


 782年……人間の私には想像もつかない年月。そんな長い間、お兄ちゃんを待ち続けるなんて、私にできるだろうか?


 転生する前の私はそう思っていた。


 これが案外あっという間で、最初は苦痛だった一年が50年を過ぎた辺りから早く感じるようになった。


 私とであったばかりの頃のガユード様は、お兄ちゃんの魂が植え付けられることを知っていた。


 女神様に造られた時から、お兄ちゃんの魂が植え付けられた時のために造られたと言われ、この世界で見たことを記憶するように言われているらしかった。


 この世界を実際に造ったのは女神様だけど、大元はお兄ちゃんだからこの世界の本当の創造者に使われるなら本望だと言っていた。


 記憶がお兄ちゃんに継承されるなら、私とお兄ちゃんのためにいっぱい記憶してもらわないとと思った。


 私と過ごす時間が多ければ、それだけ私と過ごした記憶が多くなるってことで、私と過ごした実感が出るからだ。


 そのこともあって、782年はあっという間に過ぎた。


 で、朝、起床したガユード様の様子は明らかにおかしかった。


 お兄ちゃんの魂が植え付けられたのは確実のはず。なのに、私のことをヘリナとしか呼んでくれない。


 なんで? 記憶が継承されるなら、あの時のやり取りも継承されて、私がお兄ちゃんの妹だってわかるはずなのに。


 もしかして、私のこともう好きじゃないの?


 ううん、そんなことない。たぶん思い出してないだけで、私のことは好きなはず……。好きだよね?


 あ、もしかして、さっき私がガユード様一筋って言ったのがいけなかったのかな?


 それで誤解してるのかも。


 うん、そうに違いない。


 だから誤魔化したんだよね?


 でも、もし、私のことを好きでなくなっていたら……?


 いやだ! そんなこと考えたくない!


 そうだ、私が一番だって言ってくれたんだもん、そんなはずない。


 けど、私だってことに気づいてなかったなら、ヘリナのことを一番って言ったんじゃ……?


 ううん、そんなわけない。だって、ガユード様と違って、ヘリナは最初から私なんだもん。だから一番って言ってくれたんだよね?


 そうだといいな……。


「ヘリナ? どうしたの?」


 浮かない顔をしているであろう私に、サリーシャさんが心配そうに訊ねてきた。


「実は……」


 私は、さっきの出来事を打ち明けた。


 因みに、サリーシャさんには、首を撥ね飛ばしたお詫びとして、私のことを包み隠さず話してある。


 その方が変な気を起こさせなくて済むから。


「気づいてはくれたのね?」

「どうしたらいいでしょうか?」

「それはもう、ズバッと言うべきよ!」

「……はい?」


 いや、言いたいことはわかるんだけど、それで私のことを好きでなくなっていたら、私はこれからどうしたら……。


「ハァ……あのね、渋るのはわかるけれど、それはたぶん貴女のお兄さんも同じよ? だって、貴女がお兄さんではなく始祖竜様のことを好きだったらって思ってるはずだから」


 そっか、そうだよね。


 もとはと言えば、私が紛らわしいことを言ったのがいけないんだもんね。


 それで私のことを好きでなくなっていたとしても、私はガユード様――ううん、お兄ちゃんの傍にいる。


 せっかく782年も待ったんだから、少し我が儘でもいいよね。


「そうですね。そうします」


 サリーシャさんにお礼を言った私は、《伝言/メッセージ》を使った。



辻褄(つじつま)が合っていればいいのですが……。

合っていなければ、それとなく言ってくださると嬉しいです。

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