真相
こういう場面を書くのは難しいですね。
さて、どうしたものか……。
悩んでる場合ではないけど、良い策が思いつかない。
どうしたらコープスに一人一人を確認させられるだろうか。
いっそコープスの姿が見えなければ……。
見えな、ければ……?
「……! その手があったか!」
つい口に出てしまい、注目を浴びてしまう。
「確か、ベリアル様のお弟子殿、でしたな。話には聞いております。それで、その手とはどういったものでしょうか?」
「この魔族に師匠が隠蔽魔法をかければ、騎士達が騒ぐことなく誰が宰相様の使者を装ったのかがわかるのではないかと思いまして」
俺じゃないのは、ここらで師匠(偽)のベリアルを立てておくべきじゃないかと思ったからだ。
と思ったのに、ベリアルが割って入ってきた。
「いやいや、隠蔽魔法なら私よりもガユードの方が得意じゃないか。あんたがやっておくれ」
なんでだ……!?
確かに俺がやった方が確実だけど、師匠(偽)のベリアルの面子を気にして言ってあげたのに。
まさか、俺の意図を汲んだ上で俺にやらせる腹なのか?
「そうだな。ガユード殿に任せることにしよう。任せたぞ、ガユード殿」
そう言って満面の笑みでぽんぽんと俺の肩を叩いてくるドゥーダ。
ドゥーダ、お前もか。
「ガユード殿、よろしく頼む」
とどめとばかりにリオンがそう言った。
こうなったら仕方ない。
俺がやるか……。
「しかし、その魔族を隠蔽したとして我々には見えなくなります。その間に逃げられでもしたら、大問題ですぞ?」
宰相の尤もな指摘を受ける。
まぁ、そこは〝竜眼〟があるから問題ないんだけど、宰相は俺の正体知らないから当然の指摘だ。
どうやって説明しよう?
そう思った矢先、コープスが身を乗り出して怒鳴った。
「我が逃げるだと!? 馬鹿を言うな、人間の宰相! そんなこと、できるはずがないだろうが!」
逆ギレだ。
いや、八つ当たりか?
どっちにしろ、宰相がキレられるような場面ではない。
キレるなら俺に向けてすれば良いのに……。
コープスがこうなった原因は俺なんだから。
どうせ、それができないから宰相に向かってキレたんだろうけど、宰相が可哀想だ。
だって、宰相が謂れのないガチギレに困惑してるから。
これ絶対に〝え、なんでキレられてんの?〟って思ってる顔だぞ。
そう思った俺は、コープスを一睨みする。
すると、コープスはビクッと体を強ばらせながら押し黙った。
「コホン。じゃあ、ガユードに隠蔽魔法をかけてもらって、その状態で騎士団の連中に会わせるってことでいいかい?」
ベリアルの言葉に、その場にいた全員が首を縦に振った。
◆
その後、俺がコープスに隠蔽魔法の一つである《透明化/インビジブル》をかけ、リオンの名のもとに召集された騎士団一同と対面させた。
その間、俺は〝竜眼〟を発動させ、逃げ出さないと言ってはいたけど、万が一にもコープスが逃げ出さないように見張る。
と思ってたんだけど、〝竜眼〟を使うと目が人間の目から竜の眼に見た目が変化るんだったというのを先程思い出したので、自分にもコープス同様に《透明化/インビジブル》をかけている。
こうすれば、〝竜眼〟を使わずとも互いを見ることができる。
リオンが今回召集した理由を話し始めた。
「今日集まってもらったのは、他でもない。昨日村を襲ってきた魔族が、勇者殿の顔を知っていたとの報告があった。つまり、勇者殿の情報を流した者がいるということだ」
リオンから述べられた事実に、騎士達がざわつく。
「静粛に。それでだ。騎士団の中に裏切り者がいるかもしれない。その確認のために集まってもらった」
リオンが説明している間に、俺はコープスに訊ねる。
「どうだ、お前が会った騎士はいたか?」
「……あいつだ」
そう言ってコープスが指を指した先にいたのは、すべての騎士団をまとめあげている総・騎士団長のヘグレドだった。
一見、平常心でいるように見えて、冷や汗をかいているのが見え見えだ。
そういえば、ヘグレドは宰相と仲が悪いっていう設定だったな。
それが原因か。
《伝達/メッセージ》を使ってリオンにヘグレドだったことを伝える。
ただ、ガユードの記憶ではヘグレドと面識もない上に名前も知らないので、リオンから見て右斜め前にいる一際重装備の騎士だと伝えた。
『ヘグレドが……』
宰相の時と同じような反応をするリオン。
そんな反応をするのも無理はない。
ヘグレドは、リオンが騎士団の中で最も信頼を置く人物なのだから。
リオンは、決意した様子で口を開いた。
「たった今、裏切り者がわかったとの報告が入った。ヘグレド以外は持ち場に戻れ」
その命に従って、ヘグレド以外の騎士達が持ち場へと戻っていく。
ヘグレドは平常心を装いながらリオンのもとまでやってきた。
「陛下、私を残した理由を伺っても?」
「ヘグレド、そなたには勇者殿の情報を魔族に流した疑いがある。正直に申せ。そなたが流したのか?」
リオンの問いにヘグレドは答えられず、黙り込む。
アホなんだろうか。
何か言った方が疑われにくくなるのに黙ったら、何か疚しいことがあると思われるに決まってる。
「黙るということは、そうなのだな?」
「……いいえ、陛下。私はそのようなことはしておりません」
「そうか? 直接会った者がそう言っているのだがな」
「は……?」
合図と受け取った俺は、《透明化/インビジブル》を解く。
急に現れた俺とコープス――特にコープスを見て、ヘグレドは顔を青ざめた。
「陛下、誤解でございます! 私はそのようなことは決してしておりません!」
そのやり取りの間にヘグレドに《記憶閲覧/メモリーリーディング》を使い、ヘグレドの記憶を見る。
そこには、コープスと話している記憶がちゃんとあった。
ただ、これだけでは証拠にならない。
なので、リオンにヘグレドの記憶を投影すると伝え、《記憶投影/メモリープロジェクション》を使い空中にヘグレドの記憶を投影した。
ヘグレドの制止を聞かずに投影されたヘグレドの記憶を見て、リオンは覚悟を決めたように言った。
「ヘグレド。残念だ。そなたのことは信頼していたというのに……」
「陛下! ご再考を、今のはその者が捏造したものでございます! どうか!」
懇願するヘグレドに対し、リオンは首を横に振って……
「ヘグレド、そなたを国家反逆を謀った者として、地下牢獄に幽閉する」
そう宣言した。




