尋問
少し遅くなりました。すみません。
今回の場面、ちょっと書くのてこずりました。
あれからずっとヘリナの顔が赤いのが収まらないため、これ以上一緒にいたらまずいかなと思った俺は、落ち着かせるためにも、二人に挨拶を済ませ、城へと戻ってきた。
まさかあんなに顔を真っ赤にするとは思わなかったから、内心ではものすごくドキドキしていた。
ヘリナ、可愛すぎ。
それはさておき、城に戻ってきた俺は、リオンに用意してもらったとある部屋に向かう。
部屋に入ると、縄で縛られたコープスの死体が床に置かれており、リオン、ベリアル、ドゥーダが待っていた。
「待たせたな」
「いえ、先程集まったばかりですので、それほど待ってはおりません」
お約束なやり取りを済ませ、俺はコープスの死体の前まで行く。
そして、《復活/リザレクション》をかける。
今までピクリとも動かなかったコープスの体が動き始めた。
「こ、ここは……」
縄で縛られながらも起き上がってそう呟くコープス。
俺と目が合うと、一瞬にして状況を理解したのか、怯えた様子で体を震わせ始めた。
「な、なぜだ、なぜ蘇らせた!」
「なんだ、せっかく蘇ったのにまた死にたいとは……自殺願望でもあるのか?」
「そ、そんなわけないだろうが!? 2度も死にたいわけがあるか!」
「では素直に情報を吐け。まず、なぜあの村を襲った?」
俺が訊くと、コープスは諦めたように話し始めた。
「人間共の戦力を削ぐためだ。村を襲えば戦力を割かねばなるまい。そうすれば、やってきた人間の戦力を根こそぎ殲滅できるからな」
「勇者の顔を知っている口振りだったが、どこで知った?」
「この国の宰相から聞いた。〝村一つ滅ぼされれば、王への不満を抱く者が出る。その上勇者が向かわされ倒されたなら、尚更不満を抱く。王を失墜させるには十分だ。そして私が次代の王になった暁には、魔族への降伏を宣言しよう。まぁ、私にそのままこの国の王を任せてくれるのならだが〟とも言っていた」
よりによって宰相が裏切り者かよ。
ありがちなパターンだな。
というか、コープスはいいように使われただけじゃないか。
どうやって連絡を取り合ったのかは知らないけど、宰相が悪い奴だということは確定だな。
「まさか、フーゲル宰相が……」
リオンが、まさかの事実に驚愕している。
自分の一番の忠臣であるべき人物が裏切り者だったという事実を信じたくないのだろう。
当たり前の反応だ。
ベリアルとドゥーダは少し目を見開いて驚いている様子だ。
二人はべつに宰相と親しいわけじゃないから、そういう微妙な反応になるよな。
この中で、俺が一番平然としてる自信がある(ドヤッ)。
いや、キメ顔してる場合じゃない。
ここは、宰相を呼ぶべきだろう。
「リオン、宰相を呼べるか?」
「はい。少し驚きましたが、これも国の安寧のだめです。それに、宰相を止められなかったのは、宰相の真意に気づけなかった私に責任がありますから、この失態の尻拭いは自分でします」
キリッとした顔つきでリオンがそう言って宰相を呼びに行った。
真面目というかなんというか……まぁ、上に立つ者としては相応しい……のか?
政治に詳しいわけじゃないからわからないけど。
一応、これも、小説の方でベリアルを見送る流れにした理由の一つだ。
内政のことなんて難しくて書けないから。
◆
少しすると、リオンだけ先に戻ってきた。
恐らく、兵士に命令して連れてこさせているんだろう。
そして数分後、兵士が宰相を連れてやってきた。
「!? 陛下! これはいったいどういうことですか! 魔族をこのような場所に置くなど、危険極まりますぞ! せめて地下牢にお入れください! そして、魔族の監視役はこのフーゲルにお任せください」
ものすごく怪しい言い回しだな。
「フーゲル宰相、先程この魔族の男から聞いたのだが……」
「なんでございましょう?」
「そなたがこの魔族の男を手引きし、あわよくばこの国の王になろうとしていると聞いたのだが、真か?」
「は? わたくしが、で、ございますか……? なにを馬鹿な。わたくしがそのようなことを思っているはずがございません。陛下、卑劣な魔族の戯れ言を信じるのですか?」
一応、筋の通った返しだな。
ただこれ、大体の〝言い逃れする奴〟が言う台詞でもあるんだよな。
さて、リオン、どうする?
「だが、勇者殿の情報が魔族側に流れていることは事実なのだ。フーゲル宰相、本当にそなたではないのか?」
「もちろんでございます。そのような魔族など一度として会ったこともございませんし、勇者様の情報を教えてもおりません」
中々鉄壁な口の固さだな。
ボロが全く出てこない。
腐っても貴族というわけか。
「そんな馬鹿な! 確かに聞いたぞ、宰相の使者と名乗る人間から……!」
コイツ今なんて言った?
聞いたのは宰相からではなく宰相の使者と名乗った人物って言ったか?
すかさずベリアルが訊ねる。
「待ちな。宰相さんから直接聞いたわけじゃないのかい?」
「コイツとは初めて会った。その時会ったのは、騎士の格好をした人間の男だ。そいつからこの国の宰相からの伝言だと言って、〝村一つ滅ぼされれば、王への不満を抱く者が出る。その上勇者が向かわされ倒されたなら、尚更不満を抱く。王を失墜させるには十分だ。そして私が次代の王になった暁には、魔族への降伏を宣言しよう。まぁ、私にそのままこの国の王を任せてくれるのならだが〟と言ったのだ」
これを聞いて、先程コープスから同じ内容の話を聞いていた俺達は、多分同じことを思っただろう。
――紛らわしい言い方してんじゃねぇよ!
と。
少なくとも俺は思った。
「騎士団の誰がそのようなことを吹聴したのかは存じませぬが、わたくしは決してそのようなことを思ってはおりません。そもそも、現時点で陛下に仇なす理由がございません。国は安定し、民達は皆、陛下へ厚い信頼を向けております。これらはすべて、陛下がもたらしたものです。このような素晴らしい陛下を排せば、民達の怒りを買うのは必然。そもそも、村一つ滅んだところで陛下への信頼が損なわれるとは思えませんが」
宰相が、そう述べた。
宰相の言う通りだ。
リオンの信頼は村一つ滅んだところで揺らぐものではない。
今までの功績が功績なだけに、恐らく、村一つでは〝魔族がそれだけ強いのだろう〟としか思わないだろう。
滅ぼすなら直接城を落として降伏させるくらいでないと、リオンへの不満を抱かない。
いや、それでも不満を抱くか怪しい。
いっそ、リオン自身が悪政を行わない限りは不満を抱くことはないかもしれない。
それほど、父の悪政を改善したリオンへの評価・信頼が高いってことだ。
それはさておき、騎士団の人と言っても、人数が多すぎて見つけられないぞ?
いや、コープスに一人一人見てもらえば誰だかわかるんだろうけど、この部屋に一人一人連れてくるのも、況してやコープスを外に連れ出すのも憚られる。
前者は時間がかかるから、後者は十中八九騒ぎになるからだ。
さて、どうしたものか……。




