帰還
本日2度目の更新。
※令和元年6月26日
転移の魔法の読み方を〝トランジッション〟から〝テレポート〟に変更しました。
その方がわかりやすいですよね。
宴は夜更けまで続き、そんな時間まで小さい子どもですら起きていた。
そして、飲んで騒いでの大騒ぎだった宴は、いつの間にか俺を除いた全員が寝落ちするという珍事で幕を引いた。
で、現在そんな光景を目の当たりにしているわけなんだけど、どうするべきなんだろう。
毛布の在処なんて知らないからこのままだと寝ている全員揃って風邪を引いてしまう。
そうだ。火の精霊王イフリートに頼めばなんとかなるのでは?
そうと決まれば早速。
【火の精霊王よ、我が声に答えよ】
精霊語で呼び掛けると、目の前に赤髪ツインテールの少女が現れた。
ウンディーネが20代くらいの容姿だとすると、イフリートは10代というか10歳の容姿だ。
「呼ばれて出てきてジャジャジャジャーン☆ イフリートだよっ。おひさーだよ、ガユードさん!」
元気いっぱい満面の笑顔で挨拶をしてくるイフリート。
なんだろう。
自分で設定しておいて難だけど、超可愛い。
あ、いや、ヘリナが一番だからな!?
銀髪美少女吸血鬼メイドのヘリナは俺の理想の女の子で、イフリートは娘のような感じだから誤解のないように。
「あぁ、久しぶりだな。イフリート。早速だが一つ頼まれてくれないか」
「ドンと来るんだよ!」
「ここで寝ている者達の暖をとりたいのだが、任せてもいいか?」
ここでどうにかならないかと訊ねるのは、どんな魔法も使える始祖竜としてできない。
けど、この言い方なら、良策が思い浮かばないのを隠しつつイフリートに押し付けることができる。
「それなら任せてほしいんだよ。でも、ガユードさんならあたしに頼まなくてもできるんじゃないの?」
「確かに、儂にもできる。それでも呼び出したのは、イフリート、お前に会いたかったからだ」
「ほ、本当なんだよ?」
「あぁ、めっきり呼ばなくて寂しい思いをさせていたからな」
「嬉しいんだよ! ガユードさん、だぁ~い好き!」
そう言って抱きついてくるイフリート。
可愛いイフリートに大好きと言われながら抱きつかれるのは嬉しい。とても、嬉しい。
でも、取り繕うためについた嘘だったため、抱きついて大喜びしているイフリートを見て良心が傷つく。
いや、寂しい思いをさせたのはガユードの記憶からして本当だし、個人的に会ってみたかったのもあるから、嘘じゃないと言えなくもない。
「じゃあ、始めるんだよ!」
そう言って俺から離れ、寝ている人達の真ん中に立つイフリート。
そして、右手を掲げて何かを放った。
右手から放たれたそれは、寝ている人達を囲うように結界のようなものへと変貌した。
結界のようなものの中へ入ってみる。
暖かい。ちょうどいい暖かさだ。
なるほど、結界魔法に暖房効果を付けて張ったのか。
この中にいれば、風邪を引くこともないだろう。
「感謝する、イフリート。さすが火の精霊王だな」
「ほ、褒めても何も出ないんだよ……! でも……えへへ、ガユードさんに褒められるのは嬉しいんだよ」
そう言って照れくさそうに微笑むイフリート。
なにこれ、直視できないレベルで可愛いんですけど……!
それはもう、思わず頭を撫でてしまうくらいだった。
◆
夜が明け、俺は起床したベリアルとドゥーダと共に城に戻ることにした。
因みに、俺は結局徹夜だった。
なぜかと言えば、頭を撫でてしまった後、イフリートが異様にテンションが上がって落ちつきなくなったからだ。
しかも、俺が相手にするのも面倒だからとそのまま寝ようとすると、「今日は寝かせないんだよ!」と言って寝かせてくれなかった。
べつに意味深なわけではなく、普通に寝かせてくれなかった。
夜通しかくれんぼやら鬼ごっこといった遊びに付き合わされていたんだけど、それはまた別の機会に。
そのイフリートは朝になると「また遊ぶんだよ!」と言って帰っていった。
もう勘弁してほしい、と真摯に思った。
話を戻して、帰ることにした俺達は、村人達や騎士の人達の、歓声を上げながらの見送りを受けながら帰路についた。
◆
道中何事もなく城にたどり着くと、リオン自ら出迎えてくれていた。
「お疲れ様でした」
「勇者は?」
「昨日の夕方に戻ってきて、今は自分が挙げたわけでもない功績に酔いしれております」
アイツ、ほんとに勇者向いてないな。
「ところで、その大きな荷物が、例の?」
「そうだ。これで何かわかるといいのだが」
そう、俺は今、大きな荷物を一つ持っている。
何かと言えば、コープスの死体だ。
蘇らせて、勇者の情報をどこで手に入れたのかを吐かせるために持ち帰ってきたというわけだ。
ずっとそこが気になってたから、スッキリさせたい。
それから俺は、一旦自分の屋敷へ帰ることにした。
《伝達/メッセージ》だけだと安心できないかもしれないと思ったからだ。
転移魔法で自宅前に転移する。
それと同時に玄関のドアが開き、ヘリナとサリーシャが一緒に出てきた。
「お帰りなさいませ、ガユード様。随分と楽しそうでしたね。私というものがありながら」
あれ? ヘリナさん、怒ってらっしゃる?
ウンディーネにしてもイフリートにしても、べつに楽しんでたつもりはなかったんだけど……。
「そうよ。反省しなさい!」
サリーシャに追い討ちをかけられる。
「すまなかった。儂にとっての一番は、ヘリナ、お前だ」
そう言いながらヘリナを抱き締める。
うわ、自分で言ってて難だけど、ものすごくキザっぽい。
でも、嘘ではない。
だって、ヘリナは俺の理想の女の子なんだから。
種族的に行為ができないのが悔やまれるけど、ヘリナ以外に恋慕を抱くことはない(キリッ)。
「……」
「ヘリナ……?」
「……」
俺の胸に顔を埋めたまま黙り込んでいるヘリナ。
呼んでも返事がない。
いや、よく見れば耳が赤くなっている。
もしかして、恥ずかしがってる?
「…………嬉しい、です」
ようやく、か細い声でそんなことを呟く。
可愛すぎか。
やっぱり俺の一番はヘリナだ。間違いない。
そこへ――
「いやこれ、私は何を見せつけられてるのよ……」
と、ヘリナの味方だったはずのサリーシャの独り言のようなツッコミが入ったのだった。




