第12話 新たな監査
翌朝。
真人は再び王城を訪れていた。
昨日の一件から一夜明け、王都は少しずつ落ち着きを取り戻している。
王城へ向かう人々の表情も、どこか明るかった。
「榊真人殿。」
入口で待っていた兵士が一礼する。
「陛下がお待ちです。」
真人は小さくうなずき、そのまま執務室へ向かった。
扉を叩く。
「失礼します。」
「入ってくれ。」
部屋へ入ると、エリオス王は机の上に数枚の報告書を広げていた。
「朝早くから呼び立ててすまない。」
「いえ。」
真人が近づくと、王は報告書へ視線を落としたまま口を開く。
「昨日の件があってから、城に届いていた報告書をすべて見直してみた。」
そう言って、一枚の報告書を真人へ差し出す。
「すると、気になることがあってな。」
真人は静かに報告書を受け取った。
真人は報告書へ目を通した。
そこには王都のものではない地名が並んでいる。
港町レヴィナ。
鉱山都市グランベル。
大森林エルメア。
どれも、王都から離れた地域だった。
エリオス王は新たに1枚の書状を手に取る。
「これは港町レヴィナの領主から届いたものだ。」
続けて、別の書状を広げる。
「こちらは鉱山都市。」
「そして、これは大森林の管理を任されている者からだ。」
真人は静かに目を通す。
どの書状にも共通していることがあった。
魚が獲れない。
鉱石が採れない。
森の木々に元気がない。
原因は分からない。
ただ、それぞれの土地で少しずつ異変が広がっているということだけは伝わってきた。
エリオス王は椅子から立ち上がり、真人へ向き直る。
「昨日の件で、一つ考えを改めた。」
「異変は、王都だけの話ではないようだ。」
「各地でも、似たような問題が起きている。」
「だが、私には何が原因なのか分からん。」
王は静かに頭を下げた。
「だから、お前の目で見てきてくれないか。」
真人は迷うことなくうなずく。
「承知しました。」
「まずは、どちらへ向かえばよろしいでしょうか。」
エリオス王は港町レヴィナの書状を差し出した。
「まずはここだ。」
「王都から馬車で二日。」
「昔は王国一の漁獲量を誇る港町だった。」
「今では漁に出ても、ほとんど魚が獲れないらしい。」
真人は書状を受け取り、小さく一礼する。
「行ってまいります。」
エリオス王は穏やかに微笑んだ。
「頼んだぞ、榊真人。」
真人は執務室を後にした。
王城を出ると、人目のない場所で足を止める。
「【世界帳簿閲覧】」
淡い光が目の前に広がる。
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監査対象地域
港町レヴィナ
世界循環異常 確認
推定未納魔力 高
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真人は静かに表示を見つめた。
「……やはり。」
王が受け取った書状は、人々が感じている異変だった。
世界帳簿が示したのは、その異変の裏で世界そのものに歪みが生じているという事実。
真人は表示を閉じる。
「まずは、港町だ。」
そうつぶやき、旅支度を整えるため歩き出した。
翌朝。
真人は最低限の荷物だけを背負い、王都を出発した。
着替えが数枚。
保存食。
水筒。
そして、エリオス王から預かった通行証。
王都を離れるのは初めてだった。
街道には商人の馬車や旅人たちが行き交い、それぞれの目的地を目指して進んでいる。
真人もその流れに加わった。
一日目は街道沿いの宿場町で夜を明かし、翌朝、再び港町を目指して歩き始める。
二日目の昼過ぎ。
風に、かすかに潮の香りが混じり始めた。
やがて街道の先に、白い灯台が姿を現す。
その麓には、大きな港町が広がっていた。
「……港町レヴィナ。」
王都を出て二日。
真人は、新たな監査の地へ足を踏み入れた。
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監査記録 No.0012
案件名:港町レヴィナ
状況:現地到着
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次回『港町の異変』




