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黒音と白奈  作者: nakada
第9章
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73.閑話.スクリーンカーテン


今日は白奈との夜勤だ。

交番の前に一台の軽自動車が止まった。

運転席から三十代くらいの女性が降りてくる。

助手席には、小学生くらいの男の子が不思議そうな顔で座っていた。

「どうされました?」

「郵便局の斜め向かいのお宅なんですけど……。」

女性は少し言いづらそうに声を潜めた。

「窓いっぱいに、プロジェクターで、その……大人向けの映像が映ってるんです。」

「子どもの塾の帰り道なので、何とかしていただけませんか。」

「わかりました。確認します。」



現場へ向かうと、住宅街の一角だけ妙に明るい。

「……あれか。」

リビングの窓いっぱいに、プロジェクターの映像が映し出されていた。

「うわぁ……。」

白奈が思わず目をそらす。

「スクリーンカーテンを本当のスクリーン代わりにしてる……。」


通常、映写機用のスクリーンは2重構造になっていて、裏映りなんかしないのだが――

「家具屋にあるスクリーンカーテンは、ただの白い布がスクリーンの様に垂れ下がってるだけだから、当然裏映りする……」

「本人、気付いてないんだろうね。」

「だな」

私は、インターホンのボタンを押した。

「あっ、動画が停止した、えっ、このタイミング……」


『はい、何でしょう』


「富山西交番の渡辺と言いますが、ちょっとよろしいですか?」

『えっ、警察?、何でしょう、今開けますね』


しばらくドタバタと音が聞こえ、そしてドアから、30代くらいの男性が出てくる。

今履きました感がすごいズボン、

シャツが斜めにズボンに突っ込まれてる。

「とある方から苦情がきましてね、まぁ、見てもらった方が早いかな」

私は外の窓の場所に男性を連れ出した。


「うっ、うわあぁぁぁ!!」

男性が窓を見た途端、慌てて、玄関に舞い戻った。

そして、

「あっ、切れた」

部屋が真っ暗になり、男が再び、とぼとぼと玄関から現れた。

「すみませんでした。まさか、裏映りしてるとは、思ってもみませんでした。」

「でしょうね」

私は、ため息を一つ。

「以後、気を付けてください。」

「えっ、逮捕」

「されたいんですか?、できますけど、故意ではなさそうですので、次回からは捕まえます」

「あっ、ありがとうございます」

「浜巡査、帰るよ」

「はーい」

車の中では、白奈が興奮気味に話していた。

「……すんごいの見ちゃった。」

「馬鹿馬鹿しい。」



警察官たちが去ったあと、男は暗くなった部屋で一人、熱い息を吐き出していた。

「富山西交番の……渡辺さん……ハァハァ……凛々しかったなぁ……」

男のパソコン画面には、

新たに『警察官 制服』

の検索結果が並んでいた。

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